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初めてのオブラート


「美味しいですよ。こんなにちっちゃいのにこんなに料理うまいんですね。」


葵さんは幸せそうな笑みでハンバーグを頬張っていた。そう、わざわざ結衣ちゃんが作ってきてくれた弁当だというのに。



なぜこんなことになったかというと、俺のロリコン疑惑が完全には晴れなかったのだ。


それで、葵さんが監視につくことになった。

正直、なんだかやりづらいことこの上ない。



「ち、ちっちゃい‥‥」


しかし、褒められた結衣ちゃんの視線は葵さんの胸と自分の胸を行ったり来たりしていた。



たぶん、葵さんはそういう意味で言ったんじゃないと思うんだけどな。


「なぁ、葵さん。さすがにここまでするのは異常だぞ。もしも、俺が葵さんが想像しているような趣味だったとしてもこんな人がいっぱいいる中で俺が何かしたりしないだろ?」


俺は必死に弁解するしかない。


「わかりました。でも一応、防犯用にドローンを飛ばしておきますので、、、あっ、小葉さん。いいところに来ました。」


葵さんの視線を追いかけると、小動物系の幼馴染、小葉がエアピアノをしながら歩いていた。



「ん?あっ、伊織と結衣ちゃん。あと、メイドさん。3人でどうしたの?もしかして、メイドさんと友達になったの?」


小葉は『シンジラレヘン』なんて言葉が聞こえてきそうなほど、衝撃を受けた様子で、口は半開きになっていた。


しかし、誤解だ。


友達が増えた小葉とは違い、俺は相原とも刹那とも友達にすらなれていなかったのだから。


「あっ、小葉さん。ちょうどよかった。この犯罪者予備軍を見張ってもらってていいですか?この女の子の未来のためにも。えっ?この手はなんでしょうか?」


小葉は葵さんの手を両手で握りしめて、少しだらしのない笑みを浮かべた。



「うん、いいよ。友達の頼みだからね。」

「あの‥‥あれ?手‥‥友達?」


葵さんは小葉の言葉に、、握られた手に、、違和感を隠せない。


そりゃあ、そうだろう。



だって、、小葉と葵さんは別に友達ではない。

お互い、只の友達の友達というやつだ。



相変わらず、、相手との距離感がわからない奴なんだよな。さすが、元ぼっち。



「あ、あの?私と小葉さんは友人ではないですよね?」

葵さんは明らかにドン引き気味で引きつった笑みを浮かべた。


「でも、お互い、せっちゃんの友達だよね?なら、友達じゃないかな?」


友達の友達が友達なら、誰もが友達100人なんてものじゃ済まないだろう。



「いいえ、本当に、全然、まったくもってそんなことはないですけど。なんで、そんなに私と友達になりたがるんですか?」


しかし、小葉の希望も虚しく、葵さんはオブラートに包むことなく一刀両断してしまう。


結構容赦のない性格だな。


「だって、メイドさんとだったら、沢山、せっちゃんの話できるでしょ?楽しくない?」


小葉は幸せに満ちた笑顔を浮かべる。

どんだけセツナのことが好きなんだよ?



「はぁ、そういう事ですか?小葉さんはそんな純真そうな目をして、随分腹黒いのですね。」


しかし、葵さんはため息をついた後、酷く残忍そうな笑みを浮かべた。


普段なら笑うと可愛いくみえるはずの八重歯が、まるで牙にすらみえる。



「ん?ん?どういうこと?」


「えっ‥‥だって‥‥?女の子が3人以上いたら派閥ができるっていいません?」

葵さんはニッコリと笑った。


「は、バツ?何それ?」


小葉の頭の上に?がでているのが見えそうなほど首を傾げている。



「あれ?‥‥その場に居ない人の陰口を叩くんじゃ‥‥?」

今度は小葉の態度に葵さんが首を傾げる番だった。



「んっ、何か言った?」

どうやら小葉は聞こえなかったようだ。


「いえっ、参考までに私とどんな話をしたかったか教えてもらえますか?」


「う〜んっ、どっちが多くせっちゃんの」


「セツナ様のなんですか?」

葵さんが急かすように問いかける。


「良いところ多く言えるか勝負とか?」

「天使ですか?」

葵さんがすかさずツッコんだ。



「うーん?よくわかんないけど友達になってくれるってこと?」

小葉がそういうが、なんかこの2人。

全く噛み合ってない気がする。


「くっ、、、わっ、わかりました。ほんと、しょうがないですね。」

葵さんは軽くため息を吐いてしまう。

完全に小葉のペースに巻き込まれているな。


「ありがと。ありがと」


一方、小葉はピョンピョン飛び跳ねて、喜びを全身で表現している。小学生‥というか幼稚園児みたいだ






結局、葵さんはどこかに行ってしまい、代わりに小葉が見張り役に残ってしまった。


「むぅ〜っ、本当に小葉さん、付いてくるんですか?」


「うん。だって友達の頼みだから」

小葉は友達が増えたことが本当に嬉しいらしく、満面の笑みを浮かべた。



まぁ、そんな顔されると、中々断りづらい。



「結衣ちゃん。今回だけ‥‥で、いいかな?」

「もうっ、相変わらず優しいんですから。でも、そういうところが‥」

俺が頭を下げると結衣ちゃんはなんとか許してくれたようだ。最後、ブツブツと何か言われているところをみると、少し呆れられてるような気もするけどな。


結局、3人でご飯を食べた後、俺がフリスビー犬になって、何度も公園を走る羽目になった。


まぁ、楽しかったと言っていいだろう。



「あれ?先輩。こんな所で何してるんですか?」

相原芽愛が現れるまでは‥‥


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