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初めてのビッチ

宇治橋先輩とイオ君が抱き合っていた。


それはまぎれもなく真実で、変えられない。

それはまぎれもなく私の望んだことのハズ。



それなのに‥‥



自分の身体の底から何かが込み上げてくる。



なぜ涙が止まらないのかな?


なぜ目の前が真っ暗になるのかな?


なぜなの?

一向に涙は止まらないし、感情が勝手に走り出して考えは全然まとまらない。





何処をどう歩いたかわからない。

何時間経ったかわからない。


気付くと知らない道を歩いていました。


財布もスマホも持たずに出てきた。

私、なにしてるの?




見慣れない道でどうやって帰ればいいのかもわからないし、自分がなぜ涙を流したのかも分からなかった。



道をしばらく歩いてみても全然人通りがなく、暗闇と沈黙ばかりが私を取り囲む。



夏とはいえ少し肌寒い風が、私の心まで不安に駆り立てた。



いけない。

後ろ向きなことばかり考えてると、どんどん動けなくなる。



『考える前に取り敢えずやってみよう。』


私はイオ君に言われた言葉を信じて、行き先を砂浜に変えることにしました。


あそこなら絶対人がいるはず。


少し早足で砂浜に着いて、人の気配があることに気づいて心を緩めました。



「君君。めっちゃ可愛いやん。ちょっと俺らといいことしようぜ。」

たぶん大学生くらいの男の人が私に気づいて声をかけてくれましたが‥‥ナンパ?ですか?



私はニッコリと笑ってそのまま通り過ぎようとしましたが、肩を強く掴まれてしまいました。


「離してください。」


「なんだよ?お高くとまりやがって。清純そうに見えるけど、夜の砂浜に一人で来るなんてどうせナンパ待ちのビッチなんだろ?」


「‥‥は、離してくだ‥さい」


「いや、いいじゃん。俺らの部屋行こうぜ。」

今度は腰に手を回してきました。

触られた所から一気に鳥肌が立ち、嫌悪感で頭がいっぱいになる。



「た、助けて〜、ぶっくん」


無意識にそう叫びましたが、もちろろんぶっ君が私を助けに来ることはないんです。



「そんなに嫌がんなくていいじゃん。俺様傷つくわぁ〜っ。ほら、酒もあるし、楽しいから行こうぜ。」

男が下卑た笑みを浮かべました。

更にもう1人が近づいてきます。



助けて〜〜っ、イオ君!



「そこのお兄さん、興味本位で人の彼女に手を出すとはいい度胸ですね。念の為、仲間には警察を呼んでもらってますけど、どうします?」


イオ君が本当に現れて一瞬夢なんじゃないかと思ってしまいました。



「チッ、彼氏持ちかよ?」

【警察】という言葉に過剰に反応した男の人は舌打ちして、そのまま去っていきました。



「ヒグッ、、あり、がとう。」


「いや、こちらこそぶっくんじゃなくて悪かったな。」


イオ君はなんだか申し訳なさそうな気まずいような声を出していました。



でも、助けに来てくれて本当に嬉しかった。



「そ、そんな事ないよ。本当に、本当にイオ君が来てくれて助かったよ。ありがとう。」


「まぁ、良いんだけど、そんなに抱きついて、汗臭くないか?」

言われてみると、イオ君は汗まみれで息もあがっていました。


「もしかして、、走って探してくれてたの?」


「危なかっしくて気の小さい女の子が迷子になってるって葵さんに聞いたからな。これで、ますます葵さんの好感度あがった?」


なんだがイオ君のダラシのない笑顔が憎らしくて、


「‥‥イタタタッ、、イタイ、痛いって。」

私は無意識にイオ君の耳を引っ張っていました。


「はっ‥、ご、ごめんなさい。」



「イテテッ、、そんなに汗臭かったんだな?やっぱり俺って三枚目ヒーローにしかなれないんだろうな」


笑ったイオ君の顔を見て、私の胸に生まれてはいけない感情が芽生える。



【信じられない。】という気持ちと【やっぱり】という気持ちがまるでオモチャ箱のように綯交ぜになったからなのでしょうか?



「宇治橋先輩。神埼さんを見つけました。今から戻ります。」


イオ君のたったそれだけの連絡で、心の中がモヤッとする。



私はこの時、気づきたくなかった自分の気持ちに気付いたけど、その気持ちにそっと蓋をしてしまった。

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