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初めての脳内再生



朝のホームルーム前、皆がソワソワ落ち着かない時間帯に俺はトモヤに相談していた。


「プレジャーパークのおススメアトラクションを教えてくれって?誰が行くの?」

トモヤは首を傾げて返答に困っている。


「俺だよ、俺」

俺は親指で自分を指差した。



「伊織、あそこは一人で行くところじゃないって知ってるのかな?やっぱり知らない?」

トモヤは小学生に諭すように、丁寧にそう確認してきた。


「いや、もちろん今度の日曜日2人で行くんだよ。なんで1人が前提になってんだ?」

俺はすかさず反論する。



「ごめん、伊織。俺は今週の土曜日は予定があるんだ。それに、あそこはカップルばかりで行くと惨めな気持ちになるからやめといたほうがいいと思うぜ。」

いや、別にトモヤを誘ってねぇけどな。



しかし、弁解する暇もなく朝のホームルームが始まったのでこの話はこれまでとなってしまった。






小葉視点


1時間目終了後

私は息を切らせて廊下を走っていた。


向かう先は【わたしの大親友】神崎さんのいるF組。


右手にギュッと紙切れを握りしめる。



『私に友達が出来たお祝い。』


そう言って師匠に渡されたのは二枚の紙切れでした。もちろん、諭吉さんの姿も一葉さんの姿も描かれてはいない。



よく見てみると紙切れには【プレジャーパーク】と書かれている。それの存在を知らなかった私は師匠に【親友同士が通う遊び場】と教えられて、早速神崎さんを誘うことにした。




回想している間にF組の教室まで辿り着いてしまう。


しかし、入り口前には大きな体の男の子が門番のように立っていた。



【ここを通りたければ、俺を倒してみろ】

なんて言われたらどうしよう。



伊織も連れてくれば良かった。

きっと伊織なら『ここは俺に任せてお前は先に行け。』なんて言ってくれるのに。



しばらくモジモジしていると門番クンが私の顔を覗き込む。


パーソナルエリアに入り込まれた私は思わず身がすくみ、ビクッとなってしまう。

そして、足が微かに震えてきた。



帰りたい‥‥けど‥‥

まだ目的を果たしていない。



「もしかして、水瀬小葉さんですか?」


「えっ?そうだけど。」


「やっぱり。同じ学校だったんですね?俺、、水瀬さんのファンなんですよ。俺もピアノやってて。あっ、握手して下さい。」

そう言って門番くんが右手を差し出す。



「‥ごめんなさい。握手はダメって師匠に言われてるの。」

私は慌てて頭を下げました。


「えっ、あっ、そうですよね。指が命なのに知らない奴と気軽に握手出来ないですよね?あっ、そう言えばうちのクラスに何か用ですか?」


結局、門番クンが神崎さんを呼んでくれて、無事神崎さんをプレジャーパークに誘うことが出来た。日曜日が楽しみっ。






結衣視点


「結衣〜っ。日曜日休み取れたの。一緒にプレジャーパーク行こっ。」

お母さんが疲れた顔を無理矢理笑顔にして両手を広げる。



「行かない。」



「なんでよぉ〜。伊織くんとは遊ぶのにお母さんとは遊んでくれないの?」

お母さんが泣き真似をしている。

ワザとらしいです。



「伊織さんとだって最近ぜんぜん遊んでないもん。それに、お母さん、家族サービスなんてしなくていいんだよ。せっかくの休みだし、日曜日はゆっくりしたら?」



「イヤイヤイヤイヤッ、日曜日は結衣と遊ぶの。優しい娘に育ったのはお母さん素直に嬉しいけど、親離れには早すぎるぞぉ〜」

そう言って私の頬をツンツンする。

なんだかものすごく子供っぽいです。



「‥わかった。じゃあ、お母さん絶対無理しないでよ。約束できる?」

私が小指をフック状に曲げて差し出すと、お母さんが小指を絡めてくる。そして上下に何度もシェイクする。




「うん、出来る出来る。イッパイ遊ぼうね。」


「もぅっ、お母さん、子供なんだから。」

そんなことを言いながらも、久しぶりにお母さんと遊園地にいけると思うと心が弾んだ。





日曜日


今日は抜けるような青空が頭上に広がっていて、絶好のデート日和だ。


もちろん、相原が『デートと思ってない』なんてことは別にしてだけど。


何しろ相原は好きな人が居るらしい。


だからこそ、俺の気持ちもこの前みたいに迂闊に明かす訳にはいかないんだよな。



ちなみにその好きな人だが、


『先輩よりカッコよくて、先輩より子供っぽくなくて、先輩より気がきく人』

とのことだが、【先輩より】って枕詞、わざわざつける必要あったのか?



まぁ、相原はあんなに可愛いのに意外とモテないんだよな。

何故なら‥‥って言うまでもないか?



中学当時の話だが、宮下麗華(俺と同学年の当時の女子陸上部のキャプテン)の談、

『芽愛ちゃんは、懐にはいったらとても可愛い娘だけど、殆どの人は門前払いだからね。部活でも普通に話せるの私含めても2人だけだし』



その2人って、、、俺と宮下麗華だけなんだけどな。ちなみに誰かが相原の懐に入ろうとしたらほぼ確実にカウンターパンチを喰らうので要注意だ。


とにかく、彼女とは普通に仲良くなるのがそもそも難しいし、現時点で相原が男の子と仲良く話しているのですら見た事ないからな。



ということで、相原に別に彼氏がいる風でもないだろうし、今日は楽しもう。




約束の待ち合わせの、蛍が丘駅に30分前にはついていたけど、回想シーンの間に約束の9時をまわっていた。



あれ?

こない?

嘘だろ?

電話するか?



いや、5分過ぎたくらいで電話するなんて、小さな男のすることだよな。


俺は余裕のある大人の男だ。

ゆったり待つとしよう。






三十分経過‥‥


あれ?

こない?

嘘だ〜〜、嘘に決まってる〜っ



プレジャーパークへは相原から誘われた気がするんだけど、、、あれって相原特有の『芽愛ジョーク』だったの?



もしかして、、、

だ、ま、さ、れ、た?




いや、『ごめーん。服を選ぶのに時間がかかって、遅れちゃった。どう?似合うかな?』

かもしれない。


俺はそういうシチュエーションを脳内で再生して、ニンマリと笑みを浮かべる。



しかし、それから暫くしても相原は来ない。

もう、電話していい頃か?

まぁ、俺は余裕のある大人の男だ。

落ち着いて電話をかけることにした。



ゆっくりとスマホを操作してスマホに耳を当てる。すると、間髪入れずにスマホから聞き慣れた声が聞こえた。










「お客様のおかけになった電話は電波の届かない場所にいるか、電源が入っていないため、かかりません。」



‥‥どうやら、電源を切っているようだった。


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