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初めての【ぶっ君を探せ】


「ぶ‥‥から始まる男が社交界にいなかったかって?」

イケメンオブイケメンの生徒会長である伊集院 蓮が怪訝そうな顔を俺に向ける。



そう。


ここは生徒会室で、俺はぶっ君の素性について先輩に聞こうと乗り込んできたのだ。金持ちのことは金持ちに聞けってやつで、先輩も神埼財閥とは顔を合わせる機会があるんだよな。



伊集院先輩とは古くからの知り合いだが、なんだか俺と持っているものが違いすぎて勝手に俺が避けていた人物でもある。



「そうなんです。こういうこと頼れるのは伊集院先輩しかいないので、教えて頂けないですか?」

俺は深々と頭を下げた。



「やけに殊勝に頭を下げるな。もしかして、神埼財閥の刹那嬢に関係しているのか?」


伊集院先輩はいきなり確信をついてくる。

やっぱり、俺と神埼さんのウワサは無駄に広がっているらしい。



「あの、、会長、この人、会長のお友達ですか?」

メガネをかけた、知的な感じの副会長が伊集院先輩に問いかける。


ちなみに胸は相当大きいので、自然と視線が吸い寄せられてしまう。



「あぁっ、古くからの友人だよ。最近つれないんだけどな。やっぱり俺なんかより神埼嬢の方に夢中なんだろう。悪い、副会長、これで缶コーヒーでも買ってきてくれないか?」

伊集院先輩は副会長に財布を投げる。



ちゃんと空気が読める副会長はもう1人の女の子の手を引いて生徒会室から出て行った。



「よしっ、邪魔者は消えたし、本題に入ろうか。長らく俺を避けていた君がわざわざ会いにきたからにはよっぽどのことなんだろうね。」

少し嫌味を混ぜるのが伊集院先輩流だ。


チャラチャラした容姿からは想像できないくらいの皮肉屋さんだからな。




「訳は言えませんが、かなり切羽詰まっています。それで、お願いなのですが、ぶ‥‥から始まる同年代の男の子を知りませんか?」

そんな名前、正直思い浮かばないんだよな。



思い浮かぶ名前は青心【ブルーハーツ】くらいなものだ。



「うーん、可愛い弟分が俺を頼ってくれたし、力になってあげたいのだが、、、知らないな。」

伊集院先輩は顎に手を当てて少し考えるフリをするが、あっさりとそう呟いた。


「そうですか?ありがとうございました。」

言いながら、踵を返し、生徒会室を出ようとすると、



「あっ、、、待て待て。ちょっと思い出したぞ。3年のサッカー部のキャプテンの宇治橋がそうだった気がする。」

伊集院先輩が呼び止めた。



「宇治橋先輩ですか?」



「そうだ。どうせなら本人に聞いてみればいい。あっ、報酬に一個質問させてくれないか。刹那嬢と付き合っているのか?」


「付き合ってる訳ないでしょ?ともかくありがとうございました。」

先輩に礼を言ってサッカー部のいるグラウンドに足早に向かった。




宇治橋先輩はすぐに見つかった。


しかし、宇治橋先輩は練習中だったのでしばらく待つことに決めたのだけど、誰かが気をきかせてくれたのか、しばらくすると宇治橋先輩が駆け寄ってきてくれた。



「あぁっ、君は、、、、見たことない奴だな。いや、、、君は今話題の神埼財閥の次女の彼氏か?ふむぅっ、それであの出来事って訳か?見かけによらず色男なんだな」



「またですか?勘違いされているようですが、俺と神埼さんはそんな関係ではありませんよ。」


「そうなのか?だが、彼女が男と2人でいるのは珍しくてな。嫌な思いをさせたならすまん。」

宇治橋先輩は素直に頭を下げた。


宇治橋先輩の謝罪は嫌味がなく、先輩が慕われているのもよくわかる気がした。



「いえ、色んな人に勘違いされていて戸惑っているだけなんですよ。なんだか気をつかわせてしまってすみません。本題なのですが、伊集院先輩に聞いたんです。宇治橋先輩が、ぶ‥‥から始まる名前を持っているって。」


話しやすい雰囲気を持った先輩ということもあり、俺はストレートに質問をぶつけてみた。


しかし、直後に激しく後悔することになった。

なぜなら、宇治橋先輩の目が鋭く細められたからだ。



警戒されている?



「伊集院めぇ〜っ?ほんっと、アイツって表の顔はソフトなクセに、相変わらず嫌がらせが大好物な奴だな。後輩まで使って俺をいじめてくるとは。」


「き、急にどうしたんですか?宇治橋先輩。」


「話したくない。」

急に頑なな態度になったけど、、、伊集院先輩、、宇治橋先輩に何したんだよ?



「ちょ、ちょっと待ってくださいよ。教えてもらわないと困るんです。俺に出来る範囲でならお礼をさせていただきますから教えてください。」


「あっ、あれ?お前、本気なのか?ちっ、しょうがないか。俺たちだけの秘密だぞ。ちょっとついてこい。」

そう言って校舎裏の人気のないところへ向けて歩き出した。


俺は無言でついていくが期待もしていた。



ここまで勿体つけるんだ。

きっと、この人がぶっ君に違いない。



校舎裏の樹の下にくると宇治橋先輩は俺とゼロ距離に限りなく近くなり、耳元で囁いた。

そんな事をするってことは相当人に聞かれたくなかったということだろう。




「俺は昔、、、鮮血の牙【ブラッディファング】と名乗っていた頃があったんだ。」



‥‥‥‥頭の中で今の言葉を処理しきれずに俺の思考がフリーズする。



‥‥‥‥えっ???




はぁ〜っ、、この先輩、、、元厨二病か?

なんだか俺まで恥ずかしくなり赤面してしまった。


顔を離した先輩の顔を見ると俺よりも更に赤面していた。余程恥ずかしかったのだろう。



「絶対、ぜえ〜ったい、2人だけの秘密だからな。」

宇治橋先輩はそう言ったかと思うと、踵を返し走り去っていった。



いや、結局、、、宇治橋先輩がぶっ君なのか聞きそびれたんだけど、、、



はぁ〜っ、明日にするか?



俺は肩を落として家路を歩くのだった。






神埼刹那視点


また、告白されてしまいました。


私は自分の意思とは無関係にモテてしまう。


羨ましいと思われたりするのかもしれませんね。


でも、他人の好意を無下にし続けるのはかなり気が重くて憂鬱な行為なんです。



それに、私の恋はあの時から止まったままで、動き出す気配はありません。



そして、新しい人を好きになろうとすると、やっぱりぶっ君が思い浮かんでしまうんです。


まるで、初恋の思い出が鎖となって私を縛っているみたい。雁字搦めの私はあの頃から一歩も踏み出せていないのでしょう。



考えに没頭してしまったらしく、校舎裏の人避けの木の近くまで来てしまっていました。



人避けの木と呼ばれるのはこの木が半分腐っていて、オマケに周りの雰囲気もなんだかおどろおろしいので、滅多に近くに人が近づかないことが由来らしいのです。


私もなんだか気味が悪くなり、踵を返そうとしましたが、どうやら先客がいるようです。



日本有数の大型SCの創業者である宇治橋家。

その長男である恭弥さんがそこに立っていました。

相変わらず大きな身体をしていますね。


しかし、冷静に観察できたのはそこまでです。


恭弥さんが誰かとイチャイチャしだしたのです。その誰かを見て私は心臓がとまりそうになってしまう。


だって、その誰かは蒼井君だったから。



恭弥さんが蒼井君の耳にキスすると、恭弥さんの顔が色づいた桃のようにピンク色に染まっていく。


そして、キスされた蒼井君も、顔は見えないものの、耳まで真っ赤になっている。その様子は、不思議と嫌悪感が湧いてきません。


むしろなんだか微笑ましいものでも見たかのように自然と笑みが浮かんでしまっていました。


きっと、恋はそれを見ている他人までこんな気持ちにさせてしまうパワーがあるのでしょう?



恋を前向きに捉える勇気が私の中から少しずつ湧き上がってくる。


それが私の身体中に満たされた時、、、



私も恋がしたい!



‥‥なんて思うのかしら。


しかし、現実はハッピーエンドばかりではありませんでした。



「絶対、ぜえ〜ったい、2人だけの秘密だからな。」

恭弥さんははそう言ったかと思うと、踵を返し走り去っていきました。



きっと人に言えない恋なのかもしれません。



蒼井君は禁断の恋に胸が締め付けられているかのように『はぁ〜っ』っと大きなため息をついた後、肩を落としてその場を去っていきました。



私はあまりの出来事に呆然としてしまい、時間も忘れてその場に立ち竦むのでした。


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