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NICO & VAN 外伝集  作者: 美音 コトハ
卵(カハル編)
22/22

1話

本編の卵三部作の後日談をカハル視点で書いています。

以前、活動報告に書いたのですが、ご覧にならない方もいるかなと思いこちらに載せました。


 卵の黄身が二つになる理由が分かった次の日。


 お父さんにお野菜を採って来るから、ちょっと待っていてねと言われ、居間の座布団に座っていると、件のニワトリさんが家に尋ねて来たので、上がり框までハイハイしていく。


「コケー、コケコケコケ?(おじゃまします。ヴァンちゃんはいますか?)」

「いまはいにゃいの」

 

 残念そうに「そうですか……」と鳴いているので、要件を聞いてみる。


「ヴァーちゃにようじ?」

 

 聞くと、お腹の袋から大事そうに四葉のクローバーを手羽根で器用に取り出す。


「これぇ、ヴぁっちゃに?」

 

 コクッと頷くので大事に預かり、ボーロをあげる。


「ちゃんとぉ、ヴぁっちゃに、わたしゅね」

 

 嬉しそうに鳴いて手羽根を振って帰って行く。手を振り返して、あっと思った時には遅かった。体が傾き土間に落ちてゆく。痛さを覚悟して目をギュッとつぶる。――が、一向に痛みが襲ってこない。恐る恐る目を開くと、森の熊さんが抱き留めてくれていた。


「ガウガウガウ?(どこも痛くない?)」

「うんっ、あんがと、くましゃん」

 

 その後、泣かずに偉かったと高い高いされる。これは非常に楽しい。きゃっきゃと笑っていると、お父さんが帰って来た。状況が把握できずに目をパチパチとさせている。


「くましゃん、たしゅけてくれたよ」

「カハル、落ちそうになったの⁉」

 

 目を離さなければ良かったと深く後悔している姿に、非常に申し訳なくなる。


「ごめんにゃしゃい……」

「ううん、目を離した僕が悪い。熊さん、ありがとう。少しだけど、このクッキー食べてね」

 

 頷き、熊さんが心配そうに振り返りながら帰って行く。バイバイと手を振るとやっと安心したのか走って行く。


「はぁーーー……」

 

 お父さんの深々とした溜息に胸が痛む。抱き付いて頭をグリグリと押し付けると、やっと少し笑ってくれた。


「生きた心地がしなかったよ。全身から一気に血の気がひいた」


 冷たくなってしまっている大きな手を擦って温める。大きい姿だったら抱きしめられたけど、今はこれが精一杯だ。


「僕も気を付けるけど、カハルも気を付けるんだよ。いいね?」


 優しく頭を撫でられて頷く。お父さんには可哀想な事をしてしまった。自分の思い通りにいかないこの体と、うまく付き合っていかなければ。


「「ただいま戻りました」」

「お帰り」

「おきゃえり」


 元気良く二人が帰って来た。なんだかホッとする。


「ヴぁっちゃ、あにょね、きんのはにぇのにわちょりしゃんが、これ、くれたよ」


 四葉のクローバーを差し出すと目を丸くする。


「金の羽根のニワトリさん?」

「うんっ。ばっじのおれいかにゃ?」


 破顔したヴァンちゃんをニコちゃんが優しい顔で見ている。ニワトリさんにどれだけ喜んでいたか後で教えてあげよう。


「それ、押し花にするといいよ。しおりとかにする?」

「する!」

「ヴァンちゃん、早速やろう」

「うむ。その前にお礼を言いにいく」

「うん。行こう!」


 二人で仲良く駆けていく。私も早く一緒に走れるようになりたい。そして、お父さんを一日でも早く安心させてあげたい。手をキュッと握ると、私の思いに気付いたのか抱き締めてくれる。


「すぐ大きくなるよ。ヒョウキから魔力を搾り取っちゃえ」


 その言葉に二人でクスクスと笑う。


「おとうしゃん、これからもぉ、よろしくにぇ」

「うん。僕こそ末永く、よろしくね。離してあげないよ?」


 くっついて笑い合っていると、ニコちゃんとヴァンちゃんが戻って来た。


「「とうっ!」」


 二人で飛び上り、お父さんにべったりとくっつくと、私の顔を覗き込みながら笑ってくれる。この二人の笑顔も守れるようにもっと強くなろう。今の私で悲しい歴史を終わらせられるように。


森の熊さん、大活躍です。

シンはダメージが大き過ぎて溜息しか出て来ません。自分に腹が立つやら、無事で良かったと安心するやらで心が大忙しです。

大変だ、ヒョウキの魔力が搾り取られる! 逃げて~(笑)。軽口が叩けるようになったらもう大丈夫ですね。

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