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NICO & VAN 外伝集  作者: 美音 コトハ
ホワイト・レクイエム
13/22

1話

「ふんふーん、ふへー、ほげー、ほー、みゅほー、へへーへ♪」

「ぶほっ!」

 

 思わず吹き出してしまった。


「ニコ……なんだよ、その歌……」


「ううん? トウマ、よくぞ聞いてくれました! これはね、カハルちゃんがこうやって歌ってて、あまりの自由さに衝撃を受けて僕も試したら、凄く気持ちいいんだよ!」


「へ、へぇ……(俺だったら絶対に真似しねぇ)。カハルちゃんってお前の主様だろう」

「そう! ものすごーく可愛いんだよ。今日は村の手伝いであんまり一緒に居られないから、朝いっぱい頬擦りしてきたよ!」

「そうか……。良かったな」

 

 どんだけ好きなんだよと思いながら適当に返事をすると、ニコは嬉しそうに頷き、しっぽを振り振り先程の変な歌を歌って歩いて行く。


「ぶはっ⁉」

「ぐっ!」

 

 ああ、被害が広がっているぜ……。あの歌詞でさえなきゃ、ニコはとても歌が上手いから聞き惚れる所なのに。あの歌詞じゃなぁ……。

 

 俺が頭を一つ振り歩き出すと、周りの奴等が寄ってきた。


「おい、トウマ。お前、ニコと仲良いだろ。あの歌を止めてくれよ」

「なんで、俺が。自分で言って来いよ」

「あんな楽しそうにしてるのに言えるかよ」

「押し付けんな。聞かなきゃいいだろ。ほら、さっさと秋祭りの準備しろよ」

「無理無理、無視できるレベルじゃないって!」

 

 そこへ今日の助っ人の二人目が来た。


「あっ、ヴァン! いい所に来てくれた。ニコのあの変な歌を止めてくれ」

「うん? あぁ、あれか」

 

 そう言うと、スタスタとニコに近付いていく。


「やったな。これで作業に集中できるな」

「だなっ、やっぱりヴァンは頼りになるわ」

 

 だが、そんな奴等を尻目に俺は嫌な予感がしていた。ヴァンが話し掛けるとニコが嬉しそうに振り返る。そうして、暫く二人で話していると――。


「「ふふーん、ふほっへほほー、ひへー、ぽげー♪」」

「ぶほっ!」

 

 またしても吹いてしまった。周りも同じ反応をしている。

 

 まさかの二重唱かよ……。ニコもヴァンも天然だ、天然だとは思っていたが、ここまでとは。

 

 ああ、綺麗にハモっているなぁ。なのに、この残念感……。あの歌詞が全てを台無しにしている。


「マジかよ、増えたぞ……。勘弁してくれー」

「あの二人が揃ったら、誰が止められるんだよっ」

「知るか! ヴァンって、普段が凄いしっかりしているから忘れがちだけど、ニコより天然だった……」

 

 皆で天を仰いでいると、ミルンさんが広場にやって来た。


「皆さん、進み具合はどうですか?」

「あー、色々とありまして……」

「進んでいませんね。――おや、ニコとヴァンが来てくれていますね」

 

 俺達の言い訳をバッサリ切ると、ミルンさんが歌をものともせず二人に近付いていく。


「勇者だ! すげぇ、ニコニコしながら近づいて行ってるぜ」

「救世主か⁉」

 

 皆の期待を一身に背負いミルンさんが進んでいく。


「お疲れ様です。手伝いに来て頂きありがとうございます。二人共、変わった歌ですね」

「あっ、ミルンさん! こんにちはー。カハルちゃんに教えて貰ったんです」

「どうも」

 

 相変わらずヴァンは言葉数が少なくてクールな奴だ。だけど、さっきみたいな歌も普通に歌うし、よく分からん奴だ。

 

 まぁ、いいか。ほっとこう……。

 

 ミルンさんが話し掛けて歌が止まった事だし、俺も屋台を作らないと。材料を運んでいると三人の会話が耳に飛び込んで来る。


「ミルンさんも歌いませんか?」

「私はニコ達のように歌が上手くありませんから、遠慮しておきます」

「歌うとスッキリする。ミルンさんもストレス発散した方がいい。眉間に皺が寄っている」

「おや、本当だ。伸ばしておかないと。よいしょ――よいしょ――。直っていますか、ヴァン?」

「ん。直った」


「知らぬ間にストレスというのは溜まっているものですね……。やはり私も久し振りに歌ってみようかと思います」

「それがいいですよ! 何を歌いますか?」

「そうですね……。では、『どんぐり拾いの歌』にします」

「いいですね! 僕もあの歌好きです」

「俺も」

 

 そういえば、ミルンさんの歌は初めて聞くな。声量もあるし、ほんわかした優しい声だし期待大だ。


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