琥珀の国 クリスタルの間
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琥珀の国。キャッスル・オブ・ザ・クリスタル。
その中枢、琥珀色の輝きを放つ巨大なクリスタルの前にカイ、アイ、ミュウの三人は集まっていた。
クリスタルの至る場所に招き猫へと繋がる特殊ケーブルが取り付けられている。
「壊してしまうのですか? このクリスタルを」
ミュウはカイに訊く。
「うん。確かにこれからの戦いにおいて召喚獣の存在は魅力的だし大きな助けにもなるだろうけど、何時ガンマさんみたいなことを考える人が再び現れるか分からないからね。ここで壊しておくべきだよ。それに、もう一つの目的でもあったミュウのお父さんにも会えたし」
「何お前等私の知らないところで話を進めてんだよ。結局今回の件について詳しく知らないの私だけじゃねえか」
アイは若干頬を膨らましながら言う。仲間外れは嫌いらしい。
「ごめんごめん、後で詳しく説明するよ」
「でも私の両親については分かりましたが、アイさんの御父君については……」
「ああ、それなら大丈夫。彼は此処には来てないよ」
「どうして分かるんだ?」
首を傾げるアイ。
「此処に入国した時点で王と謁見、つまり必然的にガンマさんの目にも触れられることになる。そして彼がアイちゃんを利用しようとしたように、もし国王が来ていたのなら同じように利用しようとしていたはずだ。でもそのような事実や痕跡は見当たらない」
「利用に成功していたならアイさんの出る幕も無く朱の国で何らかのアクションを起こしていたでしょうし、失敗していたなら国務大臣なんて大層な地位に留まり続けられるはずがありません」
ミュウがカイの説明を補足した。
「でもその国務大臣は私達が倒しちゃったぞ。これからこの国はどうしていくんだ? まさかあのちっさい王様がなんとかさせていけるわけもねえよな」
「あっ、それもそうだね……」
そもそも、あんな簡単に彼を殺してしまって良かったのだろうかと疑問が残る。
実際彼の召喚獣『細菌兵器』があれば本当に世界を掌握することだって造作無かったはずだ。そうすれば、この長く続く戦争を終わらせることだって出来た。カイ達の目的の一つが達成されるのだ。ガンマの処分はその後でも十分良かったのではないか。それどころか、『戦争を終わらせた』と言う観点に立てば彼こそが英雄、ヒーローにだって成り得たのだ。
結局、彼にとって、彼等にとっての最善とは、なんだったのだろうか。
終わってから悩んでいたって仕方が無いのに、何か取り返しのつかないことをしてしまったのではないかと不安になる。
「とりあえず、この国の先行きについては一度蒼の国に戻ってスティグマ様に訊いてみましょう。琥珀の国を蒼の国の傘下に収める、と言うことが出来れば政治についてもなんとかなるかもしれません。それにクリスタルが失われても他の地の物を食べることで別のクリスタルから恩恵を受けることが出来ると言うことも分かったんです。召喚獣を失ったとしても此処の兵士が全員味方に付けばまさに百人力でしょう」
ミュウがそんな提案をした。
「じゃあ、とりあえずは蒼の国だね」
「そうと分かればクリスタルの破壊だな。どうする?」
「僕も初めてやるから分からないけど、とにかく全員の全力を同時に浴びせれば大丈夫だと思う」
むしろ問題なのはそれで壊れなかった時のことだが、試す前から考えていても仕方が無い。
「分かりました。では、カイさん合図をお願いします」
「頼んだぜ、リーダー」
カイは深呼吸をして、気持ちを集中させる。
「よし、じゃあ行くよ。……三! 二! 一! ――――ブレイク!!」
「エクスプロージョン!!」
「はああああああああ!!」
カイの『盾』、アイの『爆破』、そしてミュウの『魔法銃』が最大の火力で一斉にクリスタルへ襲い掛かる。
そして。