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1話 召喚されたし濡れ衣

初投稿です。よろしくお願いします。

 ……ここはどこだ? 何も見えない。どうしたっていうんだ? 確か俺は、就活の帰りの途中だったはず……



『……!…!』


 なんだろう? 遠くから、声が聞こえた。声のした方を見ると、どこかから漏れているような、光が見えた。俺は何故か、吸い込まれるように、そこへと歩みを進めていった。


『……て!だれ…から…て!』


 段々と、声がハッキリと聞こえてきた。俺はその声がなぜか気がかりで、いつの間にか俺は、その声に向かって駆けていた。

 その瞬間、あたりはまばゆい光に包まれ、俺を包み込んだ。



 光に包まれた後、俺が見たものは、物置のような部屋と、俺を囲むように書かれている魔法陣のようなもの、そして……



 目の前にいる、儚げな美少女だった



「……よく、来てくれた」


「……なんだ? どうなって……」


「時間がない、行こう」


 そういってその子は、俺の腕をつかみ、どこかに向かって駆けだした。

 ……これは夢か、それとも就活に疲れた俺が見た幻か?

 ……何でもいい……

 これが夢なら……どうか夢なら……












「勇者のみなさーん、コイツです! コイツが魔王です! 私はコイツに脅されてただけなんでええーす! 殺すならコイツだけにしてくださぁあああーい!!」













 夢なら早く覚めてくれ……





 ◇





 遡ること数十分前……

 

 ここは魔界、生きとし生けるものもれなく魔物であり、例によって人類の敵と呼ばれる者たちの巣窟、その最深部だ。


「……マジ人類死なねえかな……」


 薄暗い部屋、乱雑した本と無数のお菓子。そんな中で、毛布にくるまり寝そべっている、見るからに不健康そうな少女は、人間界が映し出された水晶を見ながら、そんな呪詛を吐いた。

 光の反射を一切許さない真っ黒な髪、鋭い牙に鋭利な尻尾、頭の両サイドについた小さい角。これらの特徴は、彼女がホモ・サピエンスの類ではないことを物語っていた。

 そう、彼女は悪魔……それも最高位の存在……





 魔王である……





「人間どもめ……やれ生誕祭だの仮装イベントだので春夏秋冬いちゃつきやがって……大体、最近編成された勇者パーティってなんだよ。男女混合でリア充オーラぷんぷん出しやがって……どうせあのパーティで道中いやらしいパーティでもしてるんだろ死ね」





 ……もう一度言おう、魔王である





「くそ人類め……征服した暁には各国のイケメンを集めて、私だけのオス奴隷逆ハーレム帝国を建国してやるッ……ウェヘッ…ウェへへへへ……」


 かねて言うが魔王である。


 聡明な読者諸氏の中にはお気づきの方もいるかもしれないが、彼女の住む魔界と人間界は、戦争状態に陥っていた。各国は魔物に対抗するべく武装を強化し、兵をそろえ、着々と準備を進めていた。そんな中で、特に目立つのが、神の加護を受けしもの達、勇者だ。

 世界各国から選ばれた選りすぐりのエリートである彼らは、それぞれが4人編成のパーティで旅に出て、魔王を倒すため、魔界を目指し日々奮闘していた。

 が、当の魔王はというと……


「あーあ……なんか楽に人類滅ぼせる方法ないかなー。こう、イケメンだけ残してあとは滅ぼす魔法みたいなのないかなー」


 この体たらくである。

 なぜ勇者が迫ってきているにもかかわらず、ここまで魔王は余裕をぶっこいていられるのか。それには理由がある。


 1つは、魔界全体に張られている魔法障壁。彼女の父……つまりは今は亡き前魔王が作った障壁が、幾層にもわたって魔界を多い、ここに入れた人間は今のところ皆無であること。

 1つは、ひとえに彼女の性格ゆえ。父に甘やかされて育ってきた彼女は世間知らずの引きこもりであり、まあ大丈夫だろうと根拠のない自信を持っていた。

 そして1つは、単純に彼女の情報不足。実際彼女は政治や軍事には興味がなく、先程見た勇者パーティも偶然見えただけであり、あの1組しかいないと思っている。


 では、ここまで魔界は人間にとって前人未到の地と化しているならば、彼女の余裕は、正当と言えるだろうか?

 答えは……


「勇者ぶっ潰しとかないとなー……まあパパの残したマジックアイテムがあればよゆーよゆ……」







 否である






 ガシャンッと、部屋の窓が割れる音と共に、彼女の頭を何かがかすった。


「…………え?」


 さすがの彼女もそこに気づかぬほど鈍感ではない。恐る恐る頭上を見てみると、何やら神々しい矢のようなものが、部屋の壁に突き刺さり、壁を溶かしていた。


「……え? ん、そ、ん……え?」


 突然の矢に思考が追い付いていない魔王。しかしそんな彼女をあざ笑うかのように、部屋の外から怒号が聞こえた。


「ついに追い詰めたぞ、魔王!」


「父さんと母さんの仇……ここで討たせてもらうわ!」


「出てこい魔王! 我が村を滅ぼしたその罪、自らの死をもって償ってもらう!」




 ……マジで?




 窓の外に見える勇者パーティを見た、魔王の率直な感想であった。魔王は混乱の極みにあった。絶対に来ないと高をくくっていたものが、今眼前にいるのだから。


「ウ、ウワ、ヒ、ヒエェーー!? ヒ、ヒイヒヒエエェーーーー!!??」


 混乱の(以下略)


「ど、どどどうす、どうするどうしよそうしよ……う、おえぇええぇぇ……」


 混(略)


「ハアハア……は、吐いてる場合じゃあない。落ち着け私、素数を数えるんだ。いや数えてどうする……そう、そうだ、こんな時こそパパのマジックアイテムが……!」


 自分の部屋を出て、彼女は大急ぎで魔王城の地下倉庫に向かう。何年も掃除していないからか、彼女が地を蹴るたびにホコリを放ち、彼女の視界を邪魔した。


「ちくしょうもうなんなんだよ! なんで私がこんな目に合わなきゃいけないんだホコリやばいしもう!」


 彼女は走りながらそんな愚痴を呟いていた。ちなみに彼女は魔王であるが、何か強力な魔法が使えたりとか特殊な能力があったりとかは一切ない。スライムと1対1(サシ)でやり合ってぎり倒せるか倒せないかレベルのクソ雑魚である。


「大体、村とか仇とかってなに!? 知らねーし私!」


 実際彼女はそのことについて心当たりはなかった。前魔王が亡くなってからというもの、ずっと引きこもってたし、大体父からもそんな話は聞いていない。

 途中で何回も転びそうになりながらも、彼女は倉庫にたどりつき、その戸を開けた。中には、禍々しい、いかにも強力そうななりをしたマジックアイテムがいくつもあった


「ようし、見てろ人間風情がぁ……これでお前らもジ・エンドだ……使用期限切れてるしこれ!」


 ジ・エンドなのはマジックアイテムの方であった


「くそこれも、これもこれも! 全部使用期限切れてるじゃねえか! OLの冷蔵庫かよ!」


 彼女は混乱のあまり意味の分からないことを言い始めた。しかしそんなことを言っている暇はない。


「どこだ魔王! 出てこい!」


「ヒィエッ! もう入って来てるし……ええと何かないか、何か、何か……ん?」


 自棄になり倉庫をひっかきまわしていると、魔王はある本を見つけた。本の表紙には『悪魔の召喚方法』と書いてあった。


「あ、悪魔って……魔物と違うの? ……いや悩んでる暇はない!」


 藁にも縋る気持ちで、魔王は本に書いてある術式を用意。魔法陣を書き、その本に書かれている最高クラスの悪魔の召喚を試みた。

 地面が揺れ、魔法陣が光りだす。その大層な予兆に、魔王は興奮を隠せないでいた。


「お、おお……これなら……クククッ人間どもめ、そうやっていい気でいられるのも今のうちだ……この城にむざむざ入ったこと、後悔するがいい!」


 魔法陣の光が、より一層強くなる。それにつられるように、魔王は声高々にこう唱えた。


「いでよ最強の悪魔……憤怒を司りしもの、ルシファーよ!!」








404(お探しの悪魔は)not found(見つかりませんでした)


「待って」


 しかしそう上手くいくものではない。現実とは非情なものである。


「ちょっと!? え、どういうこと!? ……クッソなら別の悪魔を……」





『召喚式は動作を停止しました』


「ファ!? クソ次!」


『ネットワークが切断されました』


「嘘でしょ」


『ご入会ありがとうございます! 今すぐ入会費として5万ゴールドを……』


「え、何、こわ……」





「ハーッハーッ……ろくなのがねえ……」


「ここか魔王!」


「ヒイッ来た! もうなんでもいい、なんでもいいからなんか出てよお!」


 もはや彼女は涙を浮かべ、懇願するようにページをめくる。あとは最後のひとつ、最下級以下の悪魔のみ……これにかけるしかなかった。


「これで最後……お願い、来てッ」


 彼女は最後の術式を作動した。しかし先程とは違い、魔法陣は鈍くしか光らない。神々しい音も何もない。まったくの脈ナシのように見えた

 アア、オワッタ……彼女はそう思い、もはや諦観に満ちた顔をした。

 ……しかし




「……ふぇ?」


 魔王は魔法陣の変化に気づいた。何かがうごめいている。まるで人の形のような何かが……


「!……助けて。誰でもいいから……」







「助けて!」







 そして、それは這い出てきた。





 ◇





「!……出てきたぞ、魔王だ!」


 勇者たちが倉庫の前で待ち伏せをしていると、ガチャリと、扉が開いた。

 出てきたのは角と漆黒の髪の魔族然とした少女……勇者はこの少女が魔王だと直感で分かった……それと、




 ……見慣れない、黒い服を着た男だった




「……貴様何者だ?」


「魔王の従者か何かだろうか?」


「人間のように見えるが……」




「……コイツです」


「は?」






「コイツです! 勇者のみなさーん、コイツです! コイツが魔王です! 私はコイツに脅されてただけなんでええーす! 殺すならコイツだけにしてくださぁあああーい!!」







「嘘をつけ貴様ぁ!!」


「ヒェ……スイマセンッ」




 ダメだった

テレビ代わりになってくれる異世界の水晶くんすき

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