第四章その4
一方、涼は葵、睦美と三人で待っていたが降りてこない。どうしたんだろう? 大丈夫かな? 涼は心配しながら見上げた。
「みんな、お待たせ!」
ウルトラフォールを滑ったらしく、美紀は清々しい顔で大地と手を繋いで歩み寄ってきた。大地はというと、少し照れ臭そうに温かく微笑んでるようにも見える。
「なぁみんな、聞いてくれ! 俺たちはたった今付き合うことになった!」
大地は恥じる様子もなく、堂々と言い放ち涼は安堵したが、葵と睦美は声を揃えて叫んだ。
「「ええええええーっ!?」」
涼は大地と目を合わせ、笑みを交わした。
それからも営業時間ぎりぎりまで遊び倒して、遊園地を後にする。
帰りの電車の中でしばらくは葵やみんなと話していたが、いつしか睡魔に襲われて眠りこけてしまった。
涼は葵と寄り添い合い、反対に葵の隣には友達を渡すまいと睦美も寄り添って無垢な寝顔を見せて眠っている。美紀も大地に寄り添って眠っている、幼馴染から恋人になった美紀は可愛らしい寝顔で思わず口元が緩みそうだった。
起きてるのは俺だけか、そう思ってるとLINEでメッセージが来ていた。取ってみると岡本からで、こう書かれていた。
『楽しい旅行になったか?』
大地は微笑みながらメッセージを打って送信する。
『ああ、泳げるようになったし美紀と付き合うことになった』
『ヒューヒュー! 熱いね! この分だと楽しめたようだな!』
『ああ、みんな俺のこと笑わずに泳ぎを教えてくれた。涼、草原、花崎、そして美紀たちと遊びながら楽しく泳げるようになった』
『いいなぁ俺も仲間に入りてぇ……男二人に女三人だろ? 俺が入れば丁度いいんじゃない?』
『言っておくが草原は涼と、俺は美紀と付き合ってる。花崎の性格キツイぞ、特に男子に対しては辛辣で男嫌いな奴だ』
『可愛い? 美人?』
『お前、俺の話し聞いてなかっただろ!! 確かに背の高い黒髪美人だが、不正や風紀を乱す者は許さない奴だ、学校では鬼の風紀委員として恐れられてる奴だ』
『でもさ、それだけ真っ直ぐで曲がったことが嫌いな奴なんじゃない? 実際に会って話してみないとわからねぇよ!』
確かに岡本の言う通りだ、ぐうの音も出なかった。
『確かにお前の言うことは正しい。だが悪ぶった奴のことをとことん嫌ってる、今のお前だったら会った途端、嫌がられるか罵られるぜ』
『まあ確かに俺もワルだけどよ、口汚く罵られるの慣れてるからさ』
まあ学校でよく喧嘩してるから罵りあいが日常茶飯事だろう。大地は苦笑してメッセージを打つ。
『余計な心配だったな』
『まあな、それと涼はどうだった? だいぶ良くなったか?』
『ああ、少しずつだがな』
『やっぱり草原の愛の力かな?』
『さあな、もう少し落ち着いたらお前に会わせようと思う、今度は一人じゃない』
『ああ! 楽しみにしてるぜ! 俺もそろそろ風呂に入る、また話し聞かせてくれ!』
『何かあったらまた連絡する、それじゃあ』
メッセージを送った。振り返ると昨日と今日は掛け替えのない思い出となった。友達と思わず微笑んでしまうほど、楽しい思い出を作ったのはいつ以来だろう? それこそ涼がリーダーシップを取っていた頃以来だろう。
熊本駅までまだ時間がある、みんな寝てるし暇つぶしによく見るまとめサイトにアクセスすると、思わず目を見張った。
元天才子役の平田七海、普通の女の子になって男を知った!? 熊本市内で目撃情報あり!!
大地はその見出しに戦慄して恐る恐るアクセスすると、そこには芸能界を引退した平田七海は現在、熊本市内の私立高校に通っていて部活に入らず、放課後は友達や彼氏と遊んでいるこという情報が書かれ、半分は本当だった。
ネット上での書き込みは様々だった。
「もう引退したんだからそっとしといてやれよ」「これからだというのに俺たちを裏切って逃げ、自分は青春満喫、ふざけんなよ!」「きっと彼氏はチャらい奴に決まってるぜ、あーあナナちゃんが穢される」「引退して正解だったんじゃね? 普通の女の子になれて、貴重な青春時代をアイドルするよりはさぁ」「ナナちゃんの彼氏が紳士だと祈るよ。ナナちゃんは俺の嫁とかほざいてた奴ざまぁ!」
九割方は誹謗中傷や過激な書き込みだった。大地は向かいに座って寄り、添って眠る葵と涼の無垢な寝顔を見つめる。涼、お前はもしかしたら社会そのものが敵になるかもしれない、だが……俺たちが必ず守る! 大地はそう決意を固めて岡本にメッセージを送った。
『岡本、草原を探してる奴らのことだが、もう既に射程圏内に捉えてる。備えておいた方がいい』




