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彼と彼女と彼女  作者: 紫音
第3章
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青野紺の日常

「青野先生。この問題、どうやって解くんですか?」

授業終わりに必ず質問に来る生徒、赤川紫音はいつも通りの言葉と共に俺に問題を見せる。

「んー、これはここを微分してから……ということだ。分かったか?」

「あぁ!なるほど~」

「赤川は本当に数学が好きだなぁ」

授業後に毎回質問しに来る彼女の勉強意欲に、俺は素直に関心していた。

「数学が好きなんじゃなくて、先生が好きなんです。好きな先生の教科は必然と好きになるものですよ。数学とか、世界史とか…って、何回か同じこと言ってますよね!?」

「いやぁ、何回聞いてもぶれないから、もしかしたらいつか違う答えが返ってくるんじゃないかと…」

「もう、からかわないでください!」

そう言って彼女は呆れたように笑った。


ちょうど今は昼休みの時間だ。

春の暖かな陽射しが2人きりの教室に注ぎ込む。窓の外では桜の花びらが舞っている。

「先生、桜が綺麗ですねぇ」

「そうだな。確か、去年も赤川にそう言われた」

「あら、覚えてるんですか?」

「春は桜、秋は紅葉。冬は雪だった。この教室の窓から季節を感じる毎に赤川は俺に言ってくる。この高校に来て、今年で2年目の桜だな」

彼女はただ俺に向かって微笑み『職員室までお供します』と一言。

いつも通りのその言葉を合図に俺たちは教室を後にする。


嗚呼、どうか、彼女が卒業するまでの間でいいから、この日常が続きますように。

俺は彼女の後ろ姿を見つめながらそう願った。




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