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彼と彼女と彼女  作者: 紫音
第2章
7/13

黒と緑

「蒼~」

ふと誰かに名前を呼ばれ、振り返る。

そこには笑顔で教室の扉の前に立っている友達、緑谷志葵がいた。

「どうしたの、志葵?」

「現代文の教科書忘れたから貸して!!」

「またぁ?どんだけ忘れれば気が済むのよ…」

「現代文嫌いだから仕方ない!!」

すごい笑顔で言う。ある意味最強かもしれない。

私は自席に戻り、現代文の教科書を取りに行く。

「そうだ、志葵。明日の放課後空いてる?」

「何でー?」

「勉強ができない志葵のために、私が手取り足取り教えてあげようと思って」

「えー!!…まあ、蒼は現代文が得意だからいいよ!放課後空けとく」

そう言って微笑んだ彼に胸の奥がキュンとなった。

「じゃあ、また後で教科書返しに来るね」

「うん、分かった」

彼の後ろ姿を見送る。

…そうか。私が志葵と必要以上に関わるのは、彼のことが『好き』だからか。

途端に顔が熱くなる。

分かってる。彼のことを『好き』だって。

小学生の時は友達になりたくて、紫音によく相談していた。

中学生の時は、何となく彼といると胸の鼓動が早くなるのを感じた。『好き』とは認めたくなかった。認めてしまったら、3人の関係が壊れてしまう気がしたから。

今私は、ただひたすらに明日が待ち遠しいと感じている。


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


「ねえ、紫音。ちょっと聞いてくれない?」

いつもの道を紫音と喋りながら帰る。

「何、あお?」

そう言って彼女は振り返る。

「協力してくれない?拒否権はないから」

「いいよ」と笑った紫音の顔が

「志葵のことなんだけど」と言うと少し冷たくなった。


友情、愛情、どっちを大切にした方がよかった?

まだ大人とも言えず、子供とも言えない私には少し難しかった。


君の気持ちに気付くまであとXX日…。

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