第78話 収束
ひっきりなしに叩き付けられるドアの音に全員が暗い影を見せる。
誰一人としてドアの方へ向かわないのだ。
「気にしないで…」
ここへ連れてきた女の子がそう告げる。
明らかに尋常でない勢いで叩かれているがドアは頑丈なのかビクリともしない。
やがてその音も止み足を引きずる音と共にそれは離れていった。
「また一人発症したか…」
座り込んでいた一人がそう呟いた。
そして、女の人から衝撃の事実が告げられる。
「多分、宿屋の息子さんね…」
「今の叩いてたのがですか?」
女の人は頷いて今にも泣きそうになっている男を連れてきた女の子の頭を撫でる。
発症と言う言葉に何となくだが理解した。
あの宿の受け付けに居た少年もおかしくなったと言う事なのだろう。
「私達もいつああなるか分からないから…」
凄く寂しそうに呟いた女の人はしゃがみこみ女の子を抱き締める。
その光景を見て男は気になったことを聞いた。
「そう言えばこの町の医者であるイノーさんと娘さんもあんな風になってるのですか?」
「いえ、あちらはあちらで教会に立て籠っていると思います」
そうなのだ。
この町で無事なのがこの人数な訳がない、っとすれば別の場所でもこういう風に立て籠っていると直ぐに理解した。
「皆さん、少し休みましょう。お茶が入りましたよ」
一人の男性が奥の部屋から緑茶らしきお茶を用意してくれて各人に手渡され暖かいお茶に落ち着きを取り戻す。
それから約2時間程して上の階から見張りをして居たと思われる男性が顔を出し人々の様子が落ち着いたと報告があり人々は安堵した。
入り口を開け一人、また一人と出ていく。
ここへ連れてきてくれた女の子に「もう大丈夫」と言われ男が外に出ると町の人々はなぜ自分はこんなところでこんな物を持っているんだ?っとばかりに各々首をかしげていたりしていた。
男は一先ず宿に戻ろうと広い表通りを歩くのだった。
次回は年内に出来るかと思います




