第61話 母と息子の過去①
男は辺りを見回しながら立ち上がり自らの服についている臭いから先程の出来事は夢ではなかったと理解する。
ただ一体何がどうなっているのかについては皆目検討がつかないのであった。
その昔、ここには仲の良い親子が住んでいたそうな。
父親は流行り病で息子が大きくなる前に亡くなってしまい母と息子の二人暮らしだったそうな。
時が流れ大きく成長した息子は町に仕事をしに出るようになった。
母を一人残すのは心苦しかったが母が父と暮らしたこの家を手放したくないと言っていたため息子は母の気持ちを大切にした。
月日が流れ鍛冶職として安定した。
息子は春に家を出て夏の終わりに実家り帰り母と冬を越す生活を数年続けていた。
ある年の事である、町で行方不明者が出て首から下だけが発見されると言う不可思議な事件が噂になった年があった。
その年の夏の終わり、毎年のように鍛冶場の人達に挨拶を済ませ実家へ向かう息子。
懐には自分が初めて母のために作った鉈包丁があった。
「これで一人前と認められたと母を安心させられる!」
息子は年々年老いて夏の終わりに帰ったときに見る母の顔を見るたびに母の老いを実感していた。
それも今年で終わりだ。
自分が介護しながら働くから町に移住をしようと切り出すつもりだった。
父の事もあるし家を出たがらないが母を心配して息子が生活できないって事をきっと母は優先してくれる。
そう考えていたのだ。
だがその帰り道、息子は山賊に襲われるのであった。
次回は明日の午前7時頃更新予定です。




