第60話 溶解
転がるように隣の部屋に移動した男は我が目を疑った。
老婆が仰向けで仰け反りながら白目を向いて声にならない声を発していたのだ。
「あぁぁぉぉぅぅぉぉぁぁ…」
とても刃物で刺された人間の反応ではない。
一瞬毒が塗られていたのかと考えたが老婆に刺さった刃物を見てその考えを即座に否定した。
刃物の紋様がまるで老婆の体へ移動するかのように脈打ちながら消えていくのである。
しかし、老婆の体力が持たなかったのかそれとも拒絶反応なのか突然老婆の体が激しく痙攣したと思ったら体を限界まで仰け反らせそのままの姿勢で止まった。
臭いがした…
まるで腐った卵を割ったような臭いが突然部屋を埋め尽くした。
その臭いの元はすぐに分かった。
老婆の体が液体化して溶けだしたのだ。
皮膚も骨も眼球もまるで蝋で作られてて熱せられ溶けていくように老婆の体は床に広がっていく…
やがて「ビチャッ」と言う音と共に刃物が溶けた老婆だった物の上で倒れ蒸発するように消えていった。
その音に刺激されたのか男は臭いに吐きそうになり家から飛び出した。
地面に這いつくばり吐き気を解放するが出るのは胃液のみで不思議な事に老婆によって出された食事は出てこなかった。
そして、男は新鮮な空気を深呼吸で取り入れて我が目を再び疑うのだった。
振り返った場所には何もなくただ道が続いていたのであった…
次回は今週中に時間見て投稿したいと思います




