第55話 山の中に一人住む老婆
夜の山道は肌寒く男は森の中を歩いていく。
皮膚を手に入れた男の体は寒さを感じ少年の着ていた衣類では耐えきれなかったのだ。
あの後、狼たちを追い払い死体に残ってた幾らかの硬貨と短剣を持ち男は夜の山道を馬車の車輪後に沿って歩いていた。
夜の森の中というのは幻覚を見やすいと言われている。
これには諸説ありその一つに二酸化炭素が例に上げられる。
森の木々が日中光合成により酸素を排出するのだが夜は太陽の光が届かないため光合成を行えない、そのため夜の森は酸素濃度が下がり無意識下で意識が朦朧として見間違えから幻覚を見たりするのである。
人の目とは3つの目立つものがあればそれが目と口に見えて顔として認識すると言われている。
そのため壁の染みを見て悪霊が居ると勘違いしたりするのである。
きっと男の目に今見えている物もそう言った幻覚の一つなのかもしれない、先程まで森の中を歩いていた男の前に一軒の家があったのだ。
気付けば辺りは霧に覆われており進むべき道も判別がつかなくなりそうだった。
少年の体の男は自分の目が人間のそれとは違い、霧が濃くても闇に包まれても見える筈だったのだが本人が気付いておらずこの家で朝を待とうと近付き玄関をノックした。
「ごめん下さい、野暮遅くにすみません。霧の中道に迷ってしまい困っております。どうか朝まで屋根をお借りできませんか?」
少しして玄関が開いた。
そこには老婆が立っておりしわくちゃの笑顔で男に話始めた。
「おやおや、こんな夜遅くに大変だったろう坊や。この家にはババ一人しか居らんでゆっくりしていくといいだよ~」
男は老婆の招きにより一晩の寝床を確保出来そうと安心した少年の顔で家に入るのだった。
次回は明日の午前7時頃更新予定です




