第50話 生き残り
「ここで一体何があったんだ?」
男がそう思うのも仕方ないだろう、倒れている死体の殆どが背中を斬り付けられている傷を負っているのだ。
どうみても逃げようとして背後から斬られたという感じにしか見えない。
その死体を見つめていたら声が聞こえた。
「う…ぁ……」
苦しそうな呻き声に誘われるように茂みの方へ男は歩いた。
そこには一人の少年が居た。
そして、その少年の頭を矢が貫通していた。
後頭部から前頭部へ貫いているその矢は奇跡的に即死させず少年は生きていたのだ。
だが、現在はまだ生きているというだけで脳を損傷しているのは体が痙攣していたり左目が白目を向き涎を垂らし続けているのを見れば一目瞭然だった。
少年は痙攣する左手を男の方へ上げてきた。
残った右目で男の姿を見つけたのだろう。
「こ…ころ…ふい…殺ふぃて…殺し…ふぃて…」
少年は涙を流しながら男に楽にしてほしいと願っている様だった。
この少年だけが何故生き残り逃がされたのか、血塗れで逃げてた男は最後まで追い掛けられ首を切断されていたのに…
男は理由が知りたくなった。
それはきっと生物的本能なのであろう、蝶が蛹から羽化するように、燕が唾液で巣を作るように、誰に教えられたわけでもなく自然に体が動き男は少年をその身に抱き付くように包み込み少年の全てを取り込むのだった…
次回は11月8日の午前7時頃更新予定です




