第37話 対峙
「父上、今日遂に最高の素体が見つかったんです。これで僕の最後の作品が決まりました」
男からは見えない角度の所にルイが居るらしく磔にされた全裸の男に話しかけているようだ。
内容からしてあれがダンカンなのだろう、その体は痩せ細り体から出来た肉塊を切り取った後が全身の至るところにあった。
それは頭部にも及び毛は殆ど無くなっており領主の記憶を持っている男から見ても最早別人にしか見えなかった。
辛うじで生きているのか瞼を少しだけ開け胸が上下しているのは呼吸しているのを表していた。
「森で拾った娘なんですが心が壊れててまるで僕のために舞い降りた天使のような素晴らしい素体なのです!」
ルイが言っているのは勿論、男が助けた家族の生き残りの娘の事であった。
まだ素対という扱いをしているということはまだ生きているという事!
男は内心喜んだ。
喜ぶ?男の中に疑問が浮かび上がる…
人としての心は既に壊れ生きてるだけの人形になっている娘がただ生きているのを喜ぶ?
男の中で自問自答が渦巻いた。
おかしい、まるで自分の中に自分以外の何者かの意識があるようだ。
そんな不思議な感覚に首を傾げたときに気付かれた。
「何者か?!姿を見せよ!」
老執事の殺意の籠った視線が隠れて見ていた男に向けられる。
少し前に有無を言わせず一瞬で細切れにされたあの剣をこちらに向け近づいてくる。
自分は殺されても死なない、だから娘を助けるためと考えルイ達の前に男は姿を表した。
すると予想してなかった事が起こるのであった。
「り…領主さん…なぜ…生きて?」
男の体は本人も気付かなかったが取り込んだ領主の姿になっていたのだ。
次回は明日の午前7時頃更新予定です




