第98話 イノー死す
「アン・・・ディ・・・?」
動く白骨・・・ルナはそれに近付き頬に手を沿えた。
白骨は何も言わずただ一つ頷く・・・
男の中からはアンディは既に飛散して抜けていた。
だが記憶は男の中に在ったのでそれを理解した。
「どんな姿でもあなたはあなたよ・・・」
そう言ってルナはアンディに抱きつく。
それは美女と野獣よりも奇妙な光景。
白骨死体と少女の恋の華が咲いたのだ。
「認めん!認めん認めん認めん!!!脳の無い生き物なんぞ私は認めないぞ!」
イノーの叫びが部屋に響く。
既に鬼となっているイノーではあったが医者としての理性も働いているらしくその手には人間相手に使用すればただではすまない薬品の数々がもたれていた。
筋弛緩剤を始め様々な薬品をそのままルナに向けてかけるイノー!
しかし、その液体が二人に触れるのを阻止するかのように周囲の脳を取り込んでいた男の肉片がその薬品を受ける。
「あぁ、私の35歳女の脳が・・・」
イノーのかけた液体によりゲル状の肉片が取り込み始めていた脳ともどもドロドロに溶け始めその姿をゲル状にする。
そうしている間にもイノーのコレクションは割られ取り込まれその数を減らしていく・・・
「やめろー!やめさせろー!!!」
イノーは叫ぶが男の意思で動いているものでもない為どうする事も出来ない。
そして、その肉片の一つがイノーの背中に飛び付いた。
「な・・・なんだ?!ナニをするつもりだ!?あぁ・・・よせ・・・止めろ?!」
その肉片は徐々にイノーの背中を溶かしその体に取り込み始めていた。
「くそう、化け物め!本物の化け物め!」
そう叫んだイノーは幾つかの薬品を背中にかける。
そして、異臭と共に何かを溶かすような異音が聞こえイノーの背中ごとゲル状の肉片は解けて死んだ。
男はイノーの背中の傷からそう長くは生きられないだろうと判断しそのままルナを連れて脱出する事にした。
「ま・・・まて・・・ルナ・・・私の・・・ルナ・・・」
イノーはそのまま前のめりに倒れ意識を失う。
脳を取り込んでいた肉片の一つが棚にあった2つの薬品を床に落下させ混ぜてしまったのだ。
塩素系と酸系の薬品が混ざると危険な気体が発生するようにこの部屋にも危険な気体が発生しそれがイノーの体を蝕んだのだ。
そして、肉片は倒れたイノーをそのまま取り込む・・・
まるでそこに在ったルナの母親と姉の脳の意思の様に・・・
男はルナを連れて地下のドアから飛び出る!
だがそこには既に村人たちが押し寄せていた・・・
まるで狂っているかのように意味の分からない奇声を発しながら男とルナを威嚇してくるので男は一歩下がった・・・
だがその時に背後で爆発音がした。
きっとイノーの死体を使って何か危険な実験を行ったのだろう。
少しの揺れではあったが村人の注意を反らすには十分であった。
そして男はルナを庇うように村人の中へ飛び込むのであった。
最終回まで後2話の予定です。




