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俺の青春がラブコメなわけがない!!

作者: emeral

「朝だよ~!朝だよ~!」

スマホのアラームが鳴りもうそろそろ起きようとしているとこに、 いきなり窓が開き、隣に住む幼馴染の優衣が入ってきて、

優衣   「優ちゃん、起きて~!遅刻しちゃうよ~」

なんて言いながら、俺の上に優衣が飛び乗ってきた。

優    「げふっ!おい、優衣その起こし方やめろって言ってるだろ!」

優衣   「え~、じゃあ、どうやって起こしてほしいの?」

優    「ど、どおって…普通の起こし方があるだろ!」

優衣   「普通の起こし方って?」

優    「それは……体を揺さぶるとか……声掛けるとか……」

優衣   「でも優ちゃん、それで起きたためしないよね?違う?」

優    「それは……その……」

  と、俺が口ごもっているところに、

香澄   「お兄ちゃん、起きてるの~?」

と言って、階段を誰かが上ってくる音がする。そして、部屋の扉が  開いた。

香澄   「優衣さん!お兄ちゃんの上でなにしてるんですか!」

優衣   「ん?なにって見てわからないの?」

香澄   「わかりませんよ!なんで私のお兄ちゃんに馬乗りなんですか!」

優衣   「もちろん優ちゃんを起こす為に決まってるじゃない!」

香澄   「そんな起こし方ありません!」

優    「ふ、二人とも落ち着いて…学校遅刻しちゃうから(汗)」

優衣・香澄「げっ!こんなことしてる場合じゃないじゃん!」

と言って、優衣と香澄は急いで階段を下りていく。

優    「さっ、俺も着替えるか…」

と言って、服を脱ごうとした時に扉が少し開いてる事に気付いた。  そして扉を開けるとそこには・・・

優    「おい、涼香。そこで何してる?」

涼香   「え?何ってもちろんお兄ちゃんの着替えを見守ろうと…」

優    「俺を一体何から見守るんだ?」

涼香   「えっと…それは…その…」

と口ごもっている間に俺は扉を閉め、鍵をかけて着替えに戻る。

涼香   「あ~!お兄ちゃんなんで閉めるんですか~開けて下さいよ~」

涼香の嘆きを無視しながら黙々と着替え始めた。


 朝ごはんを食べて学校に向かう。歩いているといきなり香澄が腕 に抱きついてきた。

優    「ちょ、香澄!?いきなり何するの?」

香澄   「何って抱きついただけだよ?」

涼香   「あ~!香澄だけずる~い。私も抱きつく!」

と言って涼香も香澄とは逆の腕に抱きついてきた。

優衣   「いいな~二人とも~うちも抱きつけばよかった~」

優    「いやいや待て待て、優衣もそんなこと言わずに助けてよ」

なんて、いつもやり取りをしながら歩いて学校に行く。

玄関に入って、靴箱を開けるとそこには……

優    (なっ!?こ、これは…まさか…ラブレター!?)

あたりを見渡してこっそりバッグに入れる。

その日の授業は全く頭に入ってこなかった。

そして放課後になり手紙に書いてあった時間に屋上に向かう。


手紙に書いてあった時間に学校の屋上に向かうとそこにいたのは…        …少し顔を赤らめながらうつむいてる女の子がいた。

優    「君が僕に手紙を?」

結衣奈  「はい。わたしが先輩に手紙を出しました」

優    「それで話って?」

結衣奈  「わたしと付き合って下さい!」

優    「はい?まじで?」

結衣奈  「はい、本気です」

優    「そういえば、君はあの時の助けた子!」

そういえば、去年の新学期始まってすぐの時、廊下で困ってた子を  案内してあげたこともあったな~

結衣奈  「はい、それでわたしと付き合って下さい」

優    「それでどうして僕なの?」

結衣奈  「あの時助けてもらった時にとってもカッコ良かったから…その後色々な人に先輩のことを聞いてもっと知りたいと思ったから…」

優    「まじか…わかったよ。こんな僕でよければ…」

結衣奈  「本当ですか!?」

優    「うん。これからよろしくね♪」

結衣奈  「はい!」

そんなこんなで僕に彼女ができた。しかし、このことは妹たちには 言えないよな…。言った時のこと考えると……。


そして、何もないまま週末を迎える。

金曜日の夜 机に向かって勉強をしていると携帯が鳴った。

「明日、予定開いてますか?もしよければ一緒に映画見に行きませんか?」

優    (なぬ!?まじか…でも、予定ないしな…行くだけ行ってみるか)

そして、そのあと数回やり取りをして大体の日程が決まったので俺 はそのまま寝ることにした。


午前八時半 少しお洒落をして家を出ようとしたらそこを涼香に見つかった。

涼香   「お兄ちゃん、そんな恰好してどこ行くの?」

優    (げっ!!よりにもよって涼香に見つかるなんて…)

「学校の友達と映画見に行ってくる」

涼香   「ふ~ん、そう。行ってらっしゃい」

優    「うん、行ってくる」

優は家を出た後に涼香が急いで階段を駆け上がっていくのを知らないまま結衣奈が待つ駅前に歩きだした。


一方、階段を駆け上がっていった涼香はというと……。

涼香   「香澄、香澄。起きて、起きて。お兄ちゃんが変だったのよ!」

香澄   「ん?お兄ちゃんがどうしたって?」

涼香   「あのね、お兄ちゃんが変だったのよ!」

香澄   「いや、だから何が変だったの?」

涼香   「お兄ちゃんがお出かけするのにアニメTシャツ着ていかなかったんだよ!いつも、お出かけの時は着ていくはずなのに着てなかったんだよ!」

香澄   「えっ!?それってホント!?」

涼香   「ほんとほんと!しかも、髪までセットしてたんだよ!」

香澄   「女の匂い……」

涼香   「えっ!?お兄ちゃんに限ってそんな……」

真剣な顔の香澄を見て涼香も黙る。

香澄   「よし!決めた!」

     「お兄ちゃんを尾行しよう!」

涼香   「え~~!?いや無理だよ~どこにいるかわからないのに…」

香澄   「涼香、お兄ちゃん出かける時何か言ってなかった?」

涼香   「う~ん…あっ!映画見に行くって言ってた!」

香澄   「ふ~む。映画か…だとするとあそこしかないな」

涼香   「香澄、お兄ちゃんのいる場所わかったの?」

香澄   「うん。大体ね予想はついたよ」

     「じゃあ、急いで着替えて出発しよう!」

涼香   「うん!」

そして、涼香は自分の部屋に急いで着替えに行く。


妹たちが話しているとも知らずに、そのころ優はというと……

九時半 駅前で結衣奈を待っていた。そして、五分後に結衣奈が来  た。

詩織   「お待たせ~待った?」

優    「いや、俺も今来たところ」

     「あっ、その服かわいいね、とっても似合ってるよ」

詩織   「ほんとに!?ありがとう、うれしいな~」

そんな、たわいのないやり取りをしながら歩きだした。近くに妹た  ちが冷たい視線で見ているとも知らずに……

香澄   「やっぱり、学校の友達って女の子だったんだ」

涼香   「ちょっと香澄、早いって…少し休憩しようよ~」

と膝に手を当てて息を切らしている涼香に香澄は、

香澄   「だらしないな~涼香。少しは運動しないと」

涼香   「そんなこと今言われたって…」

香澄   「じゃあ今度から私と一緒に走る?あ、お兄ちゃん達移動する」

涼香   「いや、それは遠慮しとく…。って、待ってよ香澄~」

と言いながら先を行く香澄を慌てて涼香が追いかけていく。


そして兄は妹たちに見られているとも知らずにデートを楽しんでいた。

午前十時 優と結衣奈は映画を二人で見ていた。そして、それを後ろで見る香澄と涼香の二人。

午前十一時半 映画を観終わって二人で昼食をとり、次はショッピングをする為にデパートに向かった。

午後一時 デパートに到着した。

詩織   「いろいろ見て回りたいんだけどいい~?」

優    「うん、いいよ。じゃあ俺はその間どこにいよう…」

詩織   「よ、よかったら一緒に回ってくれませんか?」

優    「いいよ~」

そして二人は楽しく話ながら見て回っていた。それを忌々(いまいま)しそうに 見る妹たちがいた。

涼香   「楽しそうですね、お兄ちゃん」

香澄   「涼香、何言ってるの!?お兄ちゃんが他の女にとられてもいいっていうの?」

涼香   「そういうわけではありませんけど…お兄ちゃんが楽しいならいいかなって…」

香澄   「うぅぅ…そうだけどさ~お兄ちゃんがとられるなんて嫌なの!」

涼香   「あっ、お兄ちゃん達ここ出るみたいですよ?」

香澄   「えっ!?追いかけなきゃ!見失っちゃうー」

そして二人もデパートを後にする。

そして他にも色々なとこを回り夕日が落ち始めたころに優と結衣奈は結衣奈の家の前にいた。

詩織   「今日は付き合ってくれてありがとね…とっても楽しかったわ」

優    「うん、俺もとっても楽しかったよ。また行こうね」

そして、結衣奈が家に入ったのを見届けて優も家に帰ることにした。しかし、そのあとに家で待っていること優は知らないまま……

午後七時 優雅家に帰り着き自分の部屋に入るとそこにいたのは・・・・・・

優    「ん?みんな揃って俺の部屋に集まって何してるの?」

香澄   「お兄ちゃん、今日はどこにお出かけされたの?」

涼香   「それに、今日は少しいつもよりお洒落をしていかれたみたいで」

優衣   「優ちゃん、正直に教えて、今日は誰と出かけてきたの?」

優    「いや、待て待て。だから、朝行く時に言っただろ?学校の友達て言ってるだろ?」

涼香   「うん、言ってたよ?じゃあ、学校の友達って、誰?」

優    「だれって…孝太だよ。知ってるだろう?」

優衣   「優ちゃん、嘘はよくないよ?知ってるんだよ?」

優    「知ってるって何を…?」

優衣   「香澄ちゃんと涼香ちゃんが見たって聞いたよ?」

優    「えっ!?見たってなにを!?」

香澄   「今日、お兄ちゃんが知らない女とお出かけしているとこを」

優    「えっ!?お前らみていたのか?」

涼香   「うん、朝お兄ちゃんの様子が変だったから、気になって」

優    「まじか…もうばれてるのか…」

優衣   「うん、もうばれてるから白状しなさいよ」

優    「はいはい。話しますよ、全部」

優衣、香澄、涼香「では、聞かせてもらいましょうか」

そういって満面の笑みを浮かべている三人の女子の怖さを肌で感じた優は先週後輩の結衣奈に告白されたこと、付き合っていること、そしてこの前のデートのことを全て包み隠さず全部話すと、結衣奈と香澄はフリーズしていた…

香澄   「ふーん、そういうことね…」

涼香   「お、お兄ちゃんに、か、彼女が…」

詩織   「優ちゃんに恋人ができたなんて…」

優    「ま、そういうことだから」

そんなこんなで優は、危機を脱した。そして、また、いつもの日常に戻ると優は安直に考えていた……。


     いつもの朝が来るはずだった…

いつもどおり目覚まし時計が鳴り起きると、横に誰か がいる。布団をめくってみるとそこには……

優    「わぁぁぁ!?」

優はベッドから転げ落ちた。隣にいたのは優衣が寝ていた。

優    「なっ!?なんで!?」

混乱しているところに優衣が起きた。

優衣   「おはよ~優ちゃん」

優    「いやおはようじゃなくて、なんで俺の隣で寝てるの?」

優衣   「ん~寝たかったから?」

優    「なるほど、じゃいいや。って、なるかい!」

優衣   「ありゃ?ならないの?」

優    「まぁいいや、速く着替えて来いよ。遅刻するぞ?」

優衣   「うん、そうだね」

と言って、いきなり優の前で脱ぎだす優衣。

優    「おい、優衣。な、何してんだよ」

優衣   「なにって着替え」

優    「い、いやそんなの見たらわかるわ!」

     「なんで自分の部屋で着替えないんだよ!」

優衣   「ここに着替えがあるから?」

優    「いや、なんで持ってきてるんだよ!」

優衣   「準備いいでしょ?」

優    「いや、そうじゃなくて。まぁいいや」

優は説得するのは諦めて見ないようにして着替えだした。そして、  着替え終わろうとしたときに香澄が入ってきた。

香澄   「何してたの?」

優    「え、いや、なにって、着替えてただけだよ」

香澄   「着替えてただけ?じゃあなんで、優衣ちゃんがいるの?」

優    「知らないよ!朝起きたら隣で寝てたから、それで…」

香澄   「まぁ、なんでもいいや。ちょっと優衣ちゃん後で私の部屋に来て」

優衣   「はぁい」

そして、優は朝ごはんを食べに一階に行き、優衣と香澄は香澄の部  屋に…

香澄   「優衣ちゃん、どういうこと!?お兄ちゃんの隣で寝てたって本当?」

優衣   「うん、ほんとだよ。優ちゃんにうちのこと見てもらいたいから」

香澄   「そ、そうなんだ、いきなりだね。アハハ(苦笑)」

優衣   「うん、だから、これから明日からも優ちゃんの部屋で着替えるから、よろしくね」

香澄   「なぁんだ。そういうことだったんだ。そうするなら先に言ってよー。協力するのにー」

優衣   「えー、そうだったんだ。だったら協力してもらっちゃおうかな」

そして、優衣と香澄の秘密の会議が始まった…

その日を境に優衣の「優を振り向かせる為の作戦」が開始されたのだった…。

それからというもの、優衣は毎日のように朝、優の部屋に侵入して優を振り向かせようした。

しかし、当の優はというと…

優    「聞いてくれよー孝太―」

孝太   「ん?どうした、優」

優    「それがなー最近優衣の様子がおかしいんだよ」

孝太   「優衣ちゃんがどうしたって?」

優    「それがな~この前から朝、俺の部屋で寝起きしたり着替えたり

      大変なんだよ」

孝太   「寝起き!?着替え!?」

     「おい…優。まさか…そ、その、おまえにかぎって、な?」

優    「孝太、お前落ち着け。それに自分が何言ってるか気付いてるか?」

孝太   「ん?ってことは、何もないってこと?」

優    「あ、当たり前だろ!」

孝太   「よかった~」

優    「ん?なんで、お前が安心してんの?」

孝太   「え、いや、それは、あれだ」

優    「いや、どれだよ。まさか、お前」

孝太   「そうだよ、俺は優衣ちゃんが好きだよ!」

優    「まじか…そうだったのか。じゃあ、俺の立場やばくない?」

孝太   「あぁ、俺と変わって欲しいぐらいだ」

優    「孝太よ…あいつを振り向かせるのは大変だぞ?」

孝太   「まぁ、そうなるよな…優衣ちゃん、優一筋だもんな…」

優    「おいおい、弱気でどうするよ。安心しろ俺には彼女いるから」

孝太   「あっ!そっか、優、彼女いたんだった。忘れてたよ」

優    「まぁ、忘れていたことは後に置いとくとして、お前どうするつもりなんだ?優衣と付き合いたいのか?」

孝太   「付き合いたいけど、優衣ちゃんの俺に対する好感度低いよね?」

優    「まぁ、高くはないな」

孝太   「だよね~~(泣)」

優    「とりあえず、頑張れ。俺も協力するから。でも、危ない橋は渡らんからな」

孝太   「優~~やっぱり、持つべきものは友達だね」

優    「で、これからどうするんだ?」

孝太   「それでな~頼みたいことがあるんだけど…」

そして、優衣も孝太も何も進展しないまま夏休みを迎える。

夏休みが始まったが、夏課外で三分の二潰れる。それが俺が通う学校の夏休み。

そして、その夏課外の前半が終わろうとした時にふっと孝太に頼まれた事を思い出した。

孝太   「優、夏休みの前期課外が終わったら優衣ちゃんと俺とお前とお前の彼女とダブルデートをセッティングしてくれない?頼む!」

優    「はぁ!?まじかよ…。俺、優衣をデートなんて誘った事ないぞ?それに、どうやって誘えと?」

孝太   「えぇ!?そうだったのか…まぁ、がんばれ」

と言って、孝太は教室に帰ってしまった。

なんてこと頼まれてたなぁ、なんて思いだす優だった。

優    「さぁ、今日電話して頼んでみるか…」

そして、その日の夜、 俺は優衣に電話をかけた。

優    「もしもし、優だけど。前期課外の次の日って空いてる?」

優衣   「いきなりだね。うん?空いてるよ」

優    「その日にさ~俺と結衣奈と孝太とダブルデートしてくんない?」

優衣   「えー、孝太と結衣奈と~なんで?」

優    「うーん…孝太と約束しちゃったんだよ。期末で勝ったほうが負けたほうの頼みをひとつ聞くって」

優衣   「で、負けて、頼まれたわけね…」

優    「まぁ、そういうこと。それでどうかな…?だめかな?」

優衣   (うむ~孝太か…それに、結衣奈か…邪魔者が二人も。でも、優にデート誘われたの初めてだし、一緒に行くわけだし、よし、結衣奈より可愛いとこ見せれば優だってこっち向いてくれるはず…)

     「うん、わかった。行ってあげる」

優    「まじ?やった~!いろいろ決まったらラインするわ」

優衣   「了解。じゃあ切るね。バイバイ~」

そうして、何とか優衣を誘うことができた優だったが、結衣奈を誘わなければいけない事に気がついた。

優    (あ~!結衣奈も誘わないといけないじゃん!まぁ、しかたないっか…勝手に言い出したのは俺だし…よし、今からかけてみるか、いや、待てよ…結衣奈は誘わず、俺が当日ドタキャンをすれば優衣と孝太を二人っきりにできるじゃん!よし、それでいこう!)

と考えて、優はそのままベッドに入り寝た。


そしてデート当日……

孝太   「優のやつ、おせ~な~」

と、呟きながらスマホをいじる。

少し経って優衣が来た。

優衣   「おまたせ~孝太君」

そういって優衣が駆け寄ってきた。

孝太   (優衣ちゃんの私服姿超可愛い―)

優衣   「あれ、優ちゃんは?」

孝太   「ん?まだだけど?一緒じゃなかったの?」

と、話している時にスマホが鳴った。

孝太   「ん?誰からだろう?」

見てみると優からだった。

孝太   「優、今どこにいるんだよ!」

優    「孝太、ごめん!風邪ひいた…ゴホゴホ。それと、結衣奈も急用ができたらしくいけないってラインきてた。ということで、二人で楽しんできて…パタッ」

孝太   「って、おい!そんな急に言われても困るよ!」

(ツーーツーー、ツーーツーー)

孝太   「って、優の奴切りやがった…僕はどうしろと…」

優衣   「優ちゃんだったんでしょ?なんて?」

孝太   「なんかな、優は風邪で石川さんは急用なんだって」

優衣   「ふーん、そうなんだ…まぁ、石川さんはしかたないとして、なんで今日に限って風邪ひくのよ~」

     「しかたないわね、今日は解散にする?」

孝太   「うーん、優衣ちゃんさえよければ二人で行かない?」

優衣   「じゃあ、どこ行く?」

孝太   「優衣ちゃんは行きたいとこない?無いなら僕が決めるけど…」

優衣   「うーん、じゃあ、パ~ッとゲーセン行こ~」

孝太   「了解!それでは行こうか」

そして、二人はゲーセンに向かって歩き出す。

数分後、目的地のゲーセンに着く。

孝太   「最初何のゲームする~?」

優衣   「そうね~、じゃあ、UFOキャッチャーしよ?」

孝太   「いいよ~、どのUFOキャッチャーする?」

優衣   「じゃあ、ぬいぐるみとれるやつする♪」

と言って、優衣は駆け出していく。その後ろを孝太が歩いていく。

そして、孝太が優衣に追いつき見てみるとまだぬいぐるみはとれていないようで……

孝太   「いくら使ったんの~?」

優衣   「まだ500円くらいだもん。あと少しでとれそうなの!だから、邪魔しないでね!」

孝太   「はいはい、がんばってね~♪」

優衣の泣きの一回はむなしくも失敗に終わった…

優衣   「うぅ(泣)諦めようっと…」

そう言って、別のゲームのとこに行く優衣に、

孝太   「ちょっと、僕トイレ行ってくるから先に行っててくれない?」

と言って、孝太は行ってしまった。残された優衣は別のUFOキャッチャーをすることにした。

孝太は5分もしないうちに帰ってきた。

孝太   「おまたせ~」

優衣   「うん、おかえり」

と言って、優衣は孝太の方を向いた。優衣は孝太が手の後ろに何か隠していることに気付いた。

優衣   「孝太君、後ろに何隠してるの?」

孝太   「えっ~とね、はい♪」

そして、孝太は後ろに隠していたぬいぐるみを優衣に渡す。

優衣   「孝太君、なんでそれもってるの?」

孝太   「優衣ちゃんの為にとってきたんだよ」

優衣   (孝太君、やるじゃん♪)

     「ありがと~うれしいな」

その後は、他にも色々なゲームをして遊び、昼食の後、少し歩いて  いると広場にクレープの屋台を見つけた。優衣が食べたいというので、優衣を先にベンチに座らせて孝太は買いに行く。そして、二人分買って持って孝太が帰ってきて、隣に座る。

孝太   「はい。優衣ちゃんの分」

優衣   「ありがと、孝太君は何買って来たの?」

孝太   「僕はブルーベリーかな」

そして、次にどこに行くか話しながら食べていると優衣が、

優衣   「孝太君が食べてるの美味しそう~一口ほしいな~」

孝太   (えっ!?こ、これって…まさか、あのお約束の…い、いや、でも、そ、そんな…)

しかし、優衣のほうを見ると孝太のそんな考えをよそに、早く早  く、とせかしてくる。そして、

優衣   「私のも一口食べていいから~おねが~い」

そういって、優衣は何のためらいも見せずに自分のクレープを差し 出してきた。孝太はそして、諦めて自分のを優衣に渡す。

孝太   「はい、どうぞ」

優衣   「わ~い!ありがとう~!」

そして、お互いに一口ずつ食べる。

優衣   「ブルーベリー…意外とおいしいかも…」

孝太   「ストロベリーにすればよかったかもなーなんて…」

優衣   「じゃあ、いっそのこと交換しちゃおっか?」

孝太   「えっ!?」

     (いや~男としてはありがたい申し出なんだけど…ここはやはり…)

   「男の子としてはありがたいんだけど…ごめん!」

優衣   「そう?私は全然いいんだよ?」

孝太   「い、いや、優衣ちゃん、一つ聞いていい?」

優衣   「うん、いいよ」

孝太   「えっとね…そ、その…優衣ちゃん、何とも思わないの?」

優衣   「うん?なにを?」

孝太   「い、いや…だからさ…その…今さっき、間接キス的なのしたんだ       よね?」

優衣   「あっ!?」

優衣は孝太に言われて気付いたようで、顔を真っ赤にしてうつむいてしまった。

そして、二人の間に気まずい空気が流れていく……。

孝太はその空気をどうにかしようとあたりを見渡していると離れたところで観覧車が回っているのに気づいた。そっと、隣をそっと見てみると、優衣も気づいたみたいで……。


優衣   「観覧車乗りたいな~」

孝太   「いいね、よし、いこう♪」

次の目的地が決まり、二人は歩きだす。電車を使って遊園地に行く。

そして、手続きをして入る。

優衣   「わぁ~!すご~い♪」

孝太   「来るの初めてだった?」

優衣   「ううん。小さい時に来たっきりだったから、懐かしくて」

孝太   「なるほどね。じゃあ、最初何乗る?」

優衣   「観覧車!」

孝太   「えぇ!観覧車!?」

優衣   「うん♪早くいこ♪」

と言って、孝太の手を引っ張って優衣は駆け出す。そして、順番が  来たので乗り込む。優衣が外側に孝太が内側に座る。

ゴンドラが高くなるにつれて優衣のテンションも上がっていく。

優衣   「ねえねえ、孝太君!見てみて~景色が綺麗だよ」

でも、孝太の目にはそれを見てはしゃいでいる優衣しか見えていな かった。

孝太   「優衣ちゃんのほうが綺麗だっつうの……」

優衣   「ん?なんか言った?」

孝太   「あぁ、綺麗だなって言ったんだよ…」

優衣   「だよね~。あっ!ねえねえ!孝太君」

孝太   「ん?どうした?」

優衣   「次、ゴーカートにしよーよ!」

孝太   「いいけど、手加減できないかもよ?」

優衣   「ふん!手加減なんていらないもん」

そして、観覧車から降りゴーカート乗り場に移動する。

乗り場に到着しお互いカートに乗り込み、真剣勝負?が始まった(笑)

優衣   「孝太君、中々やるね」

孝太   「優衣だって、初めてとは思えないうまさだよ♪」

そして、優衣の勝利で決着がついた。勝因は孝太が最後のカーブでハンドル操作をミスしたからだった。

そしてそのあとも、色々なアトラクションを堪能したころにはすっ かり夕方になっていた。

孝太   「ねえ、優衣ちゃん」

優衣   「なぁに~?孝太君」

孝太   「あのさ~もう一回観覧車乗らない?」

優衣   「いいけど。どうして?」

孝太   「いいからいいから」

と言って、孝太は優衣の手を引いて観覧車に向かう。閉館間際の時  間だったのでそんなに並ばず乗ることができた。

そして、観覧車が高いとこに来た時に……。

優衣   「わぁ~!綺麗!最初に見たのもいいけど、夕方の景色はもっとすごいね」

優衣が笑顔で孝太の方を振り返る。

孝太   「そうだね~」

     (心の準備ができてない時にその笑顔はずるいよ…でもそこが可愛いから告白したいんだけど…よし!)

孝太   「あのさ…えっと…」

優衣   「?」

孝太   「……今日、楽しかった…?」

優衣   「うん!すごく!」

孝太   「お、俺も!」

告白したいけどまだ言いだせない孝太、告白されるかもしれないと いう期待を抱く優衣。しかし、そんな二人の気持ちをよそにゆっくり回る観覧車。迫ってくる終わりの時間。そして、孝太の頭は緊張でグルグル回ったまま…そして、下りる時間になる……。


下りたころにはもうあたりは暗くなり始めていた。孝太の火照った 体を心地いい涼しい風がなでるように吹き抜ける…。その時に、音楽が鳴り始め気付くとお客さんは少なくなり、残っているのは優衣と孝太の二人になっていた。

孝太   「優衣ちゃん、辺りも暗くなってきたし帰ろっか」

優衣   「そうだね、帰ろっか」

そう言って二人は駅に向かって歩き出す。

そして、優衣の家に着き孝太が……。

孝太   「優衣ちゃんっ!あの…そ、その…」

     「一目見た時からずっと好きでした。優衣ちゃんの楽しい時に見せる笑顔がとても好きだから、隣でずっと見ていたいから…」

     「だから…その…僕と付き合って下さい」

孝太は真剣な眼差しで優衣を見つめて言った。

優衣   「ありがとう…孝太君、今日、とっても楽しかったよ」

そう言って、優衣は家の中に入っていった。

孝太   (これって、俺振られたんだよな…)

孝太は家に向かって重い気持ちで歩き出す。その孝太の後ろ姿を 影からこっそり見ている人影がいることに孝太は気付かなかった。

どういう道筋で帰ってきたのか全然覚えていないが気づいたら自分 の部屋のベッドの上で布団をかぶっていた。孝太は恋をして初めて泣いた。下にいる親に聞かれたくなかったから押し殺すような声で泣いた。どのくらい泣いたかわからないがふとスマホが鳴った。着信相手を見ると優だった。孝太は涙を急いで涙を拭いて電話に出た。

孝太   「ん?どうした、優」

優    「孝太、今日は行けなくてごめんな…」

孝太   「いや、それはいいんだけど、優は大丈夫だったの?」

優    「大丈夫って何が?」

孝太   「今日風邪ひいたんでしょ?それで、少しはよくなったかなって」

優    「あ、うん。大丈夫、大丈夫。今ではすっかり元気」

孝太   「そうならいいいんだけど…」

といつも通りはなしていると優は孝太の声が少しかすれていることに気づいた。

優    「孝太、泣いてたのか?少し声がかすれているけど」

孝太   「少しな……」

優はその一言で孝太に今日のデートで何かあったの悟った。

優    「孝太、今度いつ暇だ?」

孝太   「いきなりどうしたの?」

優    「いいから、いいから。久しぶりにどこか遊びに行こうかと思ったからさ―」

孝太は優が自分のことを気遣ってくれているのかもしれないと思い、優の誘いに乗ることにした。

孝太   「そういうことか、そうだな~来週末なら空いてるが…」

優    「じゃあ、来週末ちゃんと空けとけよー。その日はお前が行きたいとこに行くから、候補挙げといてくれ」

孝太   「わかった、じゃあ、予定は後日な」

そういって孝太は電話を切った。

孝太   (優のやつ、俺が振られたってことに気づいたのかな…多分気付いたからあんな提案を…)

孝太が優のことを考えているときに、優も孝太のことを考えていた。

優    (孝太が泣くなんてな…よっぽどの事があったんだろうな…多分優衣に聞いても教えてくれないだろうし…ま、落ち着いてきたら孝太に直接聞くか)

その後、優と孝太は孝太の行きたいところを巡りに巡って楽しみ、その帰り道に優は孝太が優衣に告白し振られたことを孝太自身から聞いた。



あっという間に夏休みが終わり、後期課外がスタートし、またみ  んな忙しくなり勉強に明け暮れる日々……。そして、夏休みが終わり二学期がスタートした。


二学期の始業式が終わり、みんなを待っていたのは実力テスト…

しかし、これを何とか乗り切り、二学期が始まった。

優    「テスト終わったー!」

優衣   「優、ちゃんと解けたの?」

優    「優衣、それは聞くな…」

優衣   「も~だから、夏休みにしておきなさいって言ったでしょ?」

優    「はい…言いました。次回はちゃんとしますから…」

優衣   「それ聞くの何回目だと思ってるの?」

優    「そ、それは……」

孝太   「優衣ちゃん、もうそれぐらいにしてあげて…優もわかってると思うから…ね?」

優衣   「孝太君がそういうなら…しかたないわね」

優    (ん?あれれ~?優衣、どうした…?それに孝太も…。いつもは何も言わないで見てるだけなのに…)

優は優衣と孝太の態度に異変を感じたが何も言わずにそのまま会話を続けた。


そんなある日、先生に呼ばれた優衣を待っていたのは……。

先生   「新谷さん、アメリカに冬休みの間ホームステイしに行ってみない?」

優衣   「えぇ!?私がですか?」

先生   「うん。でも急だから無理にとは言わないけど…」

優衣   「少し考える時間貰ってもいいですか?」

先生   「そうよね。じゃあ、良くしっかり考えて、また後日教えてね」

優衣   「はい。失礼します」

そして、優衣はみんなに言うべきか内緒にしていくか悩みながら廊下を歩いていた。そこに、たまたま歩いてきたのは…。

優衣   「優ちゃん…どうしたの?こんなところで」

優    「あぁ…近くに用事があったから」

優衣   「ふ~ん、用事ね…まぁ、いいわ、ちょっと話があるから付き合って」

優    「うん」

     (話ってなんだろう…?う~ん、まぁ、俺も話あるからいっか)

そして、二人は優衣の提案で屋上に向かう。屋上の扉を開けると少し肌寒い風が優と優衣の肌をなでて行く。

優    「それで、話って…?」

優衣   「うん、さっきね。先生から冬休みの間アメリカにホームステイに行かないかって誘われたの…」

優    「へぇ~すごいじゃん!」

優衣   「それでね、優の意見を聞きたくて…」

優    「俺は純粋に行ってきて損はないと思うぞ?」

優衣   「そういうことじゃなくて…だから…その…私が一時いないんだよ!?」

優    「優衣、せっかくのチャンスなんだぞ?活かさないでどうする」

優衣   「それはそうだけど…優ちゃんは寂しくないの?冬休みいないんだよ?」

優    「うん、だけど、寂しいってことを理由にしてこのチャンスを蹴るのか?それに、たかが、冬休みの間だけじゃないか」

優衣   「優ちゃんはうちと離れても寂しくないんだね?そういうことでいいんだよね?うちはとっても寂しいのに…」

優    「優衣、それは違うぞ。俺がお前と離れて寂しくないだと?そんなわけあるか。寂しいに決まってるだろ!でも、お前の将来のことを考えて言ってるんだぞ?」

優衣   (そんなことはわかってるよ…優ちゃん…うちは、ただ優ちゃんに止めてほしかったんだよ…)

     「だよね…優ちゃんならそう言ってくれると思ってたよ。うん、わかった。じゃあ行ってくるね」

優    「おう!行って来い。俺はどこにも行ったりしないから」

優衣   「優ちゃん、その台詞、恋人がいない人がいうやつだよ」

優衣はくすっと笑いながらいう、そして、優は少し照れながら

優    「まぁ、細かい事は気にすんな…」

優衣   (こういうセリフをさらって言えるから優ちゃんカッコいいんだよね…)

     「ふう、最初に相談したのが優ちゃんでよかった」

優    「それは、どういたしまして…じゃあ、もうそろそろ戻るか」

優衣   「うん、ありがとうね…」

そして、優と優衣は教室に戻ろうとした時に、

優    「そういえば、孝太と何かあった?」

優衣   「い、いや、何もなかったけど」

優    「そうか、俺の思い違いか…」

優衣   「うん、きっとそうだよ。あっ、それと孝太達には黙っててね。ちゃんと決まったときに教えたいから」

優    「わかった、でも、本当にいいの?」

優衣   「うん、みんなに心配かけたくないから…」

優    「優衣がそれでいいなら何も言わないけど…」

優は優衣の少しさびしげな表情に気付かなかった……

そして、教室に戻り帰り支度をし、みんなと合流し家に帰る。


それから、何もない普通の日々が過ぎてとうとう二学期の終業式を迎える。

終業式の日のSHRで優衣がアメリカにホームステイに行くことがみんなに伝えられた。そして、SHRが終わり帰り支度をしていると、

孝太   「優、お前知ってたか?優衣がアメリカに行くこと」

優    「あぁ、知ってたよ」

孝太   「なんで教えてくれなかったんだよ!」

優    「それはだな、口止めされてたから」

孝太   「誰から?」

優    「優衣」

孝太   「本人からなら仕方ないか…」

優    「まぁ、たかが冬休みの間じゃないか」

孝太   「そりゃそうだけど…」

孝太がそう口ごもっているところに優衣が歩いてきて、

優衣   「優ちゃん、もう帰るの?」

優    「ん、ああ。あっ、そうだ。優衣。アメリカ土産頼むよ~」

優衣   「しかたないな~覚えてたらね…」

優    「じゃあ、よろしくな。じゃ、帰るか」

そして、優と優衣が先に行き、後ろからなぜかがっかりした様子で孝太が歩いていく。


優衣が出発する日、空港の搭乗口で、

優衣   「じゃあ、行ってくるね」

優    「おう、行って来い!怪我だけはするなよ」

優衣の両親「優衣、行ってらっしゃい。気をつけてね」

そして優衣は搭乗口に向かう。

優    「いっちゃったか…」

優は少しさびしげな表情で飛び立つ飛行機を見つめる……


優衣のいない冬休みが孝太に訪れた。突然告げられた優衣のアメリカ行きをうまく受け止めれずに少しばかり落ち込んでいた孝太……

孝太   「はぁ…。もう十時か…。優衣ちゃん出発したかな…」

ぼやきながら、歩いていると、腕を組んだカップルが通りすぎる。

孝太   (だーー!も~~!なんで俺には彼女ができないのだ―!泣きたい…今年もまた、クリぼっち確定だな…、はぁ…家で一人でゲームするか…)

そんな冬課外のある日に孝太が家に帰ろうと玄関に向かい靴箱を開けるとそこには手紙が入っていた。孝太は靴箱をもう一度閉めて開ける。しかし、手紙があるのは変わらず。次に頬をつねってみた。

孝太   (痛い…ってことは、夢じゃない。とうとう、俺にも春が来たーー!)

そして家に帰り、中身を読むと、「明日、課外の後に教室に来て下さい。伝えたい事があります」と書いてあった。

翌日課外が終わり教室に戻ってくるとそこにいたのは……

孝太   「宮本さんだよね?隣のクラスの」

菜月   「私のこと覚えていてくれたんですか!?」

孝太   「もちろんだよ。1年の時、同じクラスだったよね?」

菜月   「はい!嬉しいです、覚えててもらえて」

孝太   「それで、話って…?」

夏輝はもっと顔を真っ赤に染めて言った、

菜月   「あ、あの、その、一年の時から永田君のことが好きでした。だから、そ、その、私と付き合って下さい!」

恥ずかしそうに下を向いて言った。それを聞いて、孝太は頭が真っ白になって固まっていた。

菜月   「あの~」

そう言って固まった孝太の顔を覗き込む。孝太はハッと我に返って、

孝太   「ほ、ほんとに!?俺なんかでいいの?」

     「俺の中身知ってる?」

菜月   「はい、知っています…生粋のヲタクさんですよね?」

孝太   「うん、だから、俺なんかでいいのかな~って」

菜月   「実は五園寺君がヲタクって知って私も少しアニメとか見てみたらはまっちゃって、今では立派なヲタクになっちゃいました」

緊張が解けたのか夏輝は少し舌を出し笑った。

孝太   「そうだったんだ。こんな俺でよければよろしく」

そう言って孝太は菜月に笑いかける。


そしてそんな孝太に彼女ができたころ、優はというと詩織を自宅に招待していた。

優    「ただいま~」

詩織   「おじゃまします…」

優    「じゃあ、俺の部屋に案内するね」

そうして、階段を上り優の部屋に入る。

優    「飲み物は、ホットミルクとココアどっちがいい?」

詩織   「じゃあ、ココアで…」

優    「了解!ちょっと待っててね。あっ!そうそう、フィギュアとかは触らないでね」

優はそう言って一階に下りていく。

詩織   「ここが優君の部屋…」

フィギュアやらポスターなどがたくさん並んでる優の部屋を結衣奈は物珍しそうに見渡す。

と、その時に扉が開いた。

詩織   「優君、おかえりなさい?」

扉を開けて立っていたのは、優ではなく妹の香澄だった。

香澄   「お兄ちゃん~帰ってきてる~?ん?どちらさまで?」

詩織   「えっと…優君の彼女の石川結衣奈です」

香澄   「あっ…妹の香澄です」

と言って、香澄は部屋を出て行ってしまった。そして、香澄は自分の部屋に入り、勉強をしていた涼香にむかって、

香澄   「涼香!涼香!」

慌てた様子で涼香の肩を揺さぶる。

涼香   「なに?香澄。そんなに慌てて。とりあえず、深呼吸して」

そう言われ香澄は深呼吸をする。

涼香   「少しは落ち着いた?」

香澄   「うん、それでね。今ね、お兄ちゃんの部屋にか、彼女さんが…」

涼香   「ふ~ん、お兄ちゃん、とうとう連れてきましたか…」

香澄   「涼香、ど~する?」

涼香   「ん?どうするって、勉強する」

香澄   「涼香、そんなこと言わないでよ~」

そんなことを妹たちが話している時に、

優がトレイにココアの入ったコップを持ってきた。そして、結衣奈に手渡す。

詩織   「優君ってさ、妹いたんだね」

優    「あれ、俺、詩織に言ったっけ?妹がいる事」

詩織   「それはね、さっき妹さんの香澄さんが部屋に来て…」

優    「結衣奈、ちょっと待ってて」

そう言って優は部屋を出て行く。そして、優の向かった先はもちろん妹達の部屋。扉をノックし、

優    「香澄。涼香。入ってもいいか?」

涼香   「はい、いいですよ」

優は扉を開け、部屋に入る。

優    「香澄、俺の部屋来た?」

香澄   「うん。行ったよ」

優    「そうか。で、用事は?」

香澄   「いや、お兄ちゃんいるかな~っと思って」

優    「ふ~ん、用事が無いならいいや」

そう言って優は部屋を出ようとする。

香澄   「いやいや、お兄ちゃん、そんなことよりだよ!何で、お兄ちゃんの部屋に彼女さんがいるの!?」

優    「ん?そんなの俺が連れてきたからに決まってるだろ?」

涼香   「あら?本当にいらっしゃるんですか?」

優    「あぁ、今俺の部屋にいるぞ?」

涼香   「では、お兄ちゃんの妹として挨拶しないと。さぁ、香澄行きますよ!」

香澄   「えぇ~!さっきしたのに~」

といいながら涼香に引っ張られるようにして連れて行かれる。その後ろに優がついていく。


そして、優の部屋に到着し、

優    「えっと~この人が俺の彼女の石川結衣菜で…そして、この二人が俺の妹で…」

涼香   「妹の涼香です。詩織さんって呼んでもいいですか?」

香澄   「妹の香澄です」

詩織   「うん、いいよ。二人ともこれからよろしくね♪」

結衣奈は香澄と涼香に微笑みかける。その笑顔に妹たちが少しよろける……。とそのときに涼香が優に、お菓子を買ってきてほしいと頼む。

優    「えぇ~ここからどれだけ距離あるとおもってんだよ!」

涼香   「お願い!お金は香澄と二人で出すから」

香澄は涼香の方を見ると涼香は香澄に向かってウインクをした。香澄はそれで涼香の考えを理解して重ねて頼んだ。

香澄   「私からもお願いします!」

優    「わかったよ、何が欲しいかはラインで送って。詩織は欲しいのある?」

詩織   「じゃあ、私もラインで送るね」

優    「了解!じゃあ、ちょっくら行ってきますよ…」

そう言って、優が家を出て行ってしまったのを、確認した香澄と涼香は、結衣奈のほうを振り返って、突然こう言い放った。

香澄   「ずばり!詩織さん、お兄ちゃんのどこに惚れたんですか?」

詩織   「えぇ!?そ、そんな急に言われても…」

涼香   (照れてる詩織さん可愛い…)

詩織   「えっと…その…私の困ってるときに助けてくれるとこかな…」

涼香   「ほうほう…。それで二人の出会いは?」

詩織   「えっと…私が入学して間もないころに、道に迷ってたときに優君が声をかけて助けてくれたんです。そのときの優君がとってもカッコよくて…。それから、周りの人に聞いたりしてもっと知りたいと思って、今年の春に告白したんです」

涼香   「お兄ちゃんが人助け…そんな、まさか…」

香澄   「でも、お兄ちゃん。いざって時は頼りになるからな…」

それからも、優について三人が話していると、優が買い物から帰ってきた。

優    「はぁ…疲れた…」

詩織   「優君、お疲れ様です♪」

香澄   「お兄ちゃん、ありがと~♪」

涼香   「お兄ちゃん、ありがとうございます…」

そして、優は三人にそれぞれ頼まれていたお菓子を渡す。そのときに結衣奈と妹たちが仲良く話してるのを見て、

優    「よかった…二人とも詩織と仲良くなったみたいで」

香澄   「ん?なんで?」

優    「いやな…二人ともそこそこブラコンだから…心配で…」

涼香   「それは、最初はショックでしたよ?でも、詩織さんと話しているとこの人もお兄ちゃんのこと私たちと同じ位、大好きなことがわかったから…」

そのことを聞いて詩織は顔を真っ赤にしてうつむく。

優    「なっ!?いきなりそんなこと…」

香澄   「わ~お兄ちゃん照れてる(笑)」

優    「お前らがそんなこと言うからだっつの!」

香澄   「では、お兄ちゃんも帰ってきたことだし、あれしちゃおっか、涼香」

涼香   「そうだね、香澄」

優    「二人とも何するつもりでして?」

香澄・涼香「ヒ・ミ・ツ♪」

そういって、二人は一階に降りていく。二人はすぐに上がってきた。そして、二人の手に握られていたのは……。

優    「ま、まさか…それは…」

香澄   「じゃあ~ん!お兄ちゃんのアルバム!」

優    「やっぱりか…」

優は額に手を当てて首を振る。

涼香   「一緒に見よ?結衣奈さん」

詩織   「本当に!?いいの!?」

香澄   「はい!どうぞどうぞ」

優    「おいおい!勝手に…」

しかし、優が止めようとしたときにはもう遅く、三人は楽しそうに優のブラックボックスを開けて楽しそうに話していた。その三人は詩織が帰るまで続いた……。


そんな楽しい日々もあっという間に過ぎ、冬休み最終日。そして、アメリカから優衣が帰ってくる日。優は優衣の両親と一緒に空港にいた。少し待っていると優衣が搭乗口から歩いてきた

優    「おっ、来た来た。優衣、おかえり―」

優衣   「Hi, yuu. I’m home!」

優    「えっ!?優衣、今なんて言った…?」

優はあわてて聞き返す。

優衣   「あ~ごめんごめん(笑)向こうでの癖が出ちゃって」

そんなたわいのない話をしていると、優衣の両親が来て、

優衣の母 「優衣、お帰りなさい」

優衣   「ただいま、お母さん。お父さん」

優衣の母 「その様子だととっても為になってきたようね」

優衣   「うん!!」

優衣の母 「じゃあ、今夜は優衣の好物のフルコースにしましょうかね」

優衣   「やった~!」

そして、みんな車に乗り空港を後にする。


翌日、三学期の始業式が終わり、その日の帰り道。

優衣   「孝太、はい。お土産」

孝太   「わぁ~優衣ちゃん、ありがとう♪」

優衣が孝太に渡したお土産はお菓子の詰め合わせだった。

優    「優衣、ありがとうな」

優はそう言って、右手を前に出す。優衣はその手を握り返し、なぜか上下に振り始めた。

優    「いやいや、握手とかじゃなくて!」

優は握手していた手を離す。

優衣   「あれれ?ちがった?」

優衣はわざとわからない振りをして首をかしげていた。

優    「お土産、孝太にあって俺にはないわけ?」

優衣   「あるよ、たくさん」

優    「ほんとかぁ~!?やった~!」

優衣   「うん、土産話がね」

優衣はにこやかにそういって話を変えた。

優衣   「それでさぁ、孝太。アメリカ、すごかったよ~」

そして、孝太と別れ優衣と二人になった帰り道。

優衣   「ねえ、優ちゃん。あのね…」

優    「ん?どうした、優衣」

優衣   「土産話のほかにね…もう一つ話があるの…」

優    「ん?なんだ?アメリカで彼氏でも作ってきたのか?」

優衣   「優ちゃん、何でわかったの!?」

優    「最初から薄々気付いてたよ。まぁ、もしかしたらって位だったけど。長い付き合いだしな。それに優衣はすぐ顔に出るから分かりやすいし」

優衣   「そっか…優ちゃん気づいてたんだ、そういうとこは鋭いよね…」

優    「ん?どういうとこだ?」

優衣   「私が言いたいことがわかっちゃうとこかな…」

優    「まぁ、それは、おいといて。それで、相手とはうまくいってるのか?」

優衣   「うん!えっとね…名前はマイクっていって…」

優衣が目をきらきらさせながら話をしようとしているのを優が無理やり話し切り替える。

優    「優衣、それで、本当に俺にお土産ないのか…?」

優衣   「ん、ああ、えっとね。あるけど家にあるから、後で部屋に持っていくね」

優    「了解。あまり遅くなるなよ」

優衣   「はぁ~い」

話が一段落したときちょうど家についた。

優    「優衣、じゃあまた後で」

優衣   「うん、後でね、優ちゃん」

そして、二人はお互いの家に入っていく。その夜に、優衣が優の部屋に来て、お土産の手袋を渡した後に、優衣の彼氏自慢やアメリカでの話が止まらず夜中まで聞くことになった…。


そして、三学期が始まって間もない日の放課後、孝太が話しかけ  てきた。

孝太   「優、なんと俺に彼女ができた♪」

優    「はい?孝太、俺の聞き間違いかもしれないからもう一度言ってくれる?」

孝太   「だ~か~ら!俺に彼女ができたって言ったの!」

孝太は少しイラッとしながら優に言う。

優    「ほんとに!?いつ?相手は?孝太から告白したの?」

孝太   「優、落ち着け。一つ一つ答えていくから聞いてろ!」

優    「へいへい」

優は適当に返事をする。

優    (孝太、優衣に振られて落ち込んでなかったか?この前のデートの後に電話で話したっきりだったけど…)

と、優が考え込んでいると、

孝太   「…で、僕はOKしたんだよって優、聞いてる?」

優    「ん?ああ、ごめん、考え事してた」

孝太   「も~仕方がないな~、それでね…」

と再び孝太は得意げに話し始めた。


三学期のある日、詩織は学校の校門の前にいた。少し待ってい  ると、

優    「おまたせ。ごめんね、待たせちゃって」

詩織   「い、いえ、今日、そんなに寒くないですし…だから…その、大丈夫です!」

優    「そう?だといいんだけど…今度から先に帰っててもいいよ?」

詩織   「私が優さんと帰りたいから待ってるだけなので…」

そう言うと結衣奈は黙ってしまい、優も照れて何もいえなくなった。お互い黙ったまま歩く。そして、交差点に差し掛かったときに優が、

優    「詩織」

詩織   「はい?なんですか?」

優は少しぶっきらぼうに

優    「あ、あの、あれだ。明日から図書館で勉強するから一緒にするか?」

詩織   「いいんですか!?」

優    「ああ、そしたら、寒い中待たなくてもいいだろ?」

詩織   「はい、ぜひ!」

優    「じゃあ、決定だな。明日から待ち合わせ場所は図書館ってことで」

そして、少し薄暗くなってきた道を二人、手をつないで帰っていく。



三学期もあっという間に終わり、そして卒業を迎える。

卒業式が終わり、高校生活の最後の放課後。優衣と優と孝太と夏輝は校庭にある桜の木の下で話をしていた。

優    「は~ぁ、俺らもこれで卒業か…。そう考えると少しさびしいかもな…」

優衣   「そうだね~あっという間だったよね…」

菜月   「楽しい時間はあっという間ですからね…」

優と優衣は、孝太から彼女ができたことを聞いた日の翌週には、菜月を紹介してきた。優衣は名前だけは知っていたらしく、すぐに仲良く話していたが、優は最初のうちは他人行儀だったが今では少しはそれも抜けてきていた。

孝太   「優と優衣ちゃんは、進路とかって決まってるの?」

優    「俺は、ゲームの専門学校に受かったからそこに行く」

優衣   「私も第一志望受かったからそこに行く」

孝太   「ふ~ん、じゃあ二人とは離れ離れになるのか…」

孝太は少しさびしそうな顔で空を見上げた。

優    「孝太はどうするんだよ?」

孝太   「僕は親の知り合いのとこで修業する…」

孝太の家は小さな居酒屋をやっていてそこの一人息子だったりする。

菜月   「私は地元の大学に受かったので…」

四人の間にどんよりとした沈黙が流れる。

優衣   「大丈夫だよ!今はラインとか便利なのあるし、ずっと離れ離れになるわけじゃないから…」

優    「そうだな。じゃあ、またみんなで会える日が来るさ」

孝太   「そのときはみんな自分の夢叶えたりしてるのかな~」

優    「じゃあ、今度会うときはみんな夢を叶えたときってことで」

優衣   「それいいね。じゃあ、帰りましょうか」

孝太   「そうだね」

優    「そうするか」

菜月   「はい」

そして、四人はそれぞれの自分たちの未来へと続く道への一歩を踏み出した。


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