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ウイング☆ガールズ!!  作者: 遊我
2/4

第一羽


 編隊に戻った美代はマフラーの下の口を緩めていた。

「んふ♪ 緊張解けたかな?」

『……のろけてんじゃねーよ加藤』

「やばっ!?」

 耳元から聞こえてきた声に、美代はマフラーの上から口元を押さえた。

 とは言ってもあまり意味はないのだが。マイクは首に張り付ける咽頭マイクだ。

 そして耳にはイヤホンがある。

 僚機との短距離連絡用風精通信機だ。

 飛空騎が飛行中は風切り音が酷いため、自身の声を風精に選別してもらって音を運んでもらうことになる。

 なので、馴れれば腹話術のように口を閉じたまま話すことも出来る。

 そんな美代の近くに、一騎の飛空騎が騎体を寄せてきた。

『愛しの彼が気になるのは仕方ねーかもだが、ほどほどにしろよー?』

 聞こえてきたのは、美代の僚機でもある坂井さかい あかね空士長補だ。

「……あなたに言われたくないんだけど?」

 茜は美代の指揮する第二航空騎兵隊の副長でもある。彼女は大の男好きでほとんど毎日違うパートナーを繕っているという噂があり、美代はそれがほとんど真実であることを知っていた。

『ひとりに操を尽くすとかあたしの趣味じゃねーしよ? つーか、あのぽっちゃりくん今度貸してくんね? 味見し……』

「よし! 撃墜しよう!」

 美代の跨がる飛空騎が、ひらりと舞って、茜の背後に着いた。

『うげっ?! 冗談だってのっ!? マジになんなって……ロックオンしてんなよっ!?』

 魔法矢の照準が合わされた警告が茜の頭に響き、彼女は慌てて身を翻した。

「チッ」

 その動きに照準を切られ、美代は鋭く舌打ちした。

『舌打ちしたっ! 今舌打ちしやがった! この女マジだっ!?』

「当たり前よっ! こっちはいつかあなたがシゲちゃんを毒牙にかけるんじゃかと思うと気が気じゃないんだからねっ!」

 抗議する茜に、美代は吐き捨てるように言い放つ。

 そんな二人のやり取りに部下達が苦笑した。

『たいちょーそのくらいにしとくッスよ~』

『……気を緩めすぎ』

『オーウ、でも羨ましーネー。ミヨはシゲとラブラブネー』

『ひゅーひゅー♪』

『ぴゅーぴゅー』

 加藤美代麾下の第二飛空騎兵隊少女達がぴーちくぱーちく騒ぎ始める。

 と。

『……そのくらいにしーやー?』

 というドスの利いた声がイヤホンから響いた。

 第一飛空騎兵隊の隊長にして、蒼龍飛空騎戦隊隊長でもある加賀見かがみ 容子ようこ上級空士長だ。

 一瞬で第二飛空騎兵隊の面々が静かになる。

 上級空士長は軍隊で言えば少佐に相当する階級だ。ちなみに空士長は大尉、空士長補は中尉に相当。

 以下、空士、準空士、空士補となる。

 この階級は学園島内の階級ではあるが、島外でも通用する階級だ。

 学園を正式に卒業し、母国へ帰国し、そのまま軍に入ると同じ階級に相当する階級、あるいは準ずる階級になる。

 この辺りは大国のお抱え学園であれば、正規軍に準ずる組織として扱われるため、階級は持ち越しやすい。

 しかし、お抱えでない三つの学園島は一段低く見られやすく、階級が下がることがある。

 とはいえ、学園島に所属する学生達はある意味、学園島という国を運営している者達だ。

 規模こそ違えど、国家を動かすことの出来る学生エリートであることは間違いない。ここで“生きて卒業”した生徒には栄光が約束されていると言って良い。

 ゆえに、入学も卒業も狭き門。

 それが学園島なのだ。

 話を戻そう。

 容子はその上級空士長なのだ。

 さらに言えば、美代や茜に空戦のテクニックを仕込んだのも彼女である。

 芙蓉学園島最高峰の腕を持ち、大型龍単独撃破をはじめとする、数々の対龍戦闘記録を持つ学生飛空騎兵。

 それが加賀見容子だ。

 美代と茜も、エース格ではあるが、容子と比べれば見劣りする。

 なにしろ容子の龍撃破記録は大小合わせて二百を越え、世界第三位にもなるのだから。

 そんな大先輩ゆえに、美代と茜をはじめとした飛空騎兵は誰も彼女に頭が上がらないのである。

『ま、緊張しすぎよりはええけどな?』

 そう言って、容子はカラカラ笑う。

 そして、前方を軽く睨んだ。

『さて、ぼちぼちトカゲさんらの射程に入る頃や。艦長はんの作戦通りにいくで!』

『了解!』

 容子の号令に、飛空騎の編隊が空を行く。

 蒼龍飛空騎戦隊は総勢二十四名だ。しかもそのすべてが女子である。

 男子の飛空騎兵も居なくはないが、女子に比べれば精霊炉との相性が良くない。

 逆に、龍炉に関しては男子の方が相性が良い。

 なので飛空艦の龍炉の制御をしているのは大抵男子である。

 さて、二十四騎は十二騎ずつの飛空騎兵隊として編成される。

 これは四騎編成の小隊三つの中隊レベルの構成だ。

 この二つの中隊を合わせて一個飛行戦隊を構成しているのだ。

 それが容子と美代の指揮のもと、巨大な影へと向かう。

 加速する飛空騎は、速度に優れる風精炉を搭載したtype4“烈風”である。

 空中機動能力に優れ、高い格闘能力を誇る。

 武装呪アームドスペルは、貫徹力に優れる旋貫風槍スパイラルエアロスピアーと連射力に優れた風連矢ウインドアローだ。

 防御に関しても射撃や砲撃に強い竜巻盾トルネードシールドが備えられており、走攻守が高いレベルでまとまった優秀な騎体だ。

 この迎撃戦では、芙蓉学園が保有する飛空騎でも最高性能であるこの騎体を、予備騎を除く稼働全騎を投入している。

 旗艦蒼龍と共に、学園最大の戦力と言えるだろう。

『よっしゃ、かかるでえっ!』

 容子の号令に、蒼龍飛空騎戦隊は龍達へと襲いかかった。

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