留守番電話
ケンカをしてしまった恋人たちがいた。
男のほうが、仲直りをしようと電話をかけようとしていた。
男
「ああ、オレってなんてバカだったんだ。A子の気持ちも考えないで。電話で謝ろう」
ピッポッパと電話をかける。
プルルルル………
留守電
「こちらは留守番電話サービスです」
男
「留守番電話になっちゃったか…」
留守電
「ピーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー………という発信音のあとにメッセージをお入れください」
男
「長いな! ピーが長いな!」
留守電
「ピッ」
男
「短っ! 本番、短っ!」
留守電
「メッセージをお受けしました」
男
「ちょっと待てえええっ!! 違う違う、今の違うから!! なんか、すっげえ誤解されそう!!」
慌ててもう一度かけ直す男。
留守電
「こちらは留守番電話サービスです。ピーという発信音のあとに用件をお伝えください」
男
「何で今度は普通なの!?」
留守電
「ピー」
男
「A子…オレが悪かった…。全部、オレが悪かった。だから、仲直りしよう」
留守電
「ムリですね」
男
「うおぉい! 何言ってんの、こいつ!!」
留守電
「『うおぉい、何言ってんのこいつ』というメッセージだけお受けしました」
男
「ちょっと待てええぇぇ!! 前半はカットされんの!? っていうか、機械音声のくせに用件の内容に口出しするなよ!!」
慌てて再度かけなおす男。
留守電
「こちらは留守番電話サービスです。ピーという発信音のあとに2秒以内で用件をお伝えください」
男
「短いよ! 2秒なんて無理だろ!」
留守電
「ピー」
男
「ごめんすまん謝るオレがわりゅきゃった…」
留守電
「メッセージをお受けしました。ぷぷ、噛んでやんの」
男
「そりゃ噛むよ! 2秒なんて短すぎだよ! っていうか、機械がなんで笑ってんだよ! おかしいだろ」
しつこく電話をかける男。
留守電
「こちらは留守番電話サービスです。またあなたですか。ピーという発信音のあとに…」
男
「またってなんだよ!!」
留守電
「ピー」
男
「A子、すまん、オレがすべて悪かった。全部、お前の言うとおりだ。何もかも、お前の言うとおりにする。だから、仲直りしよう」
留守電
「メッセージを受けとりました」
男
「よかった、ようやく言えた」
留守電
「なお、メッセージは盗聴の恐れがあるので暗号通信で送られます」
男
「なんでだよ!!」
結局、男は直接謝りに行って仲直りしましたとさ。
最後までありがとうございました。つづきます!!