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サンタさん

 クリスマス・イブの夜のことだった。


サンタ

「ワシはサンタクロース。クリスマスの夜に良い子の家々を回ってプレゼントを配っておるぞい。今年も頑張ろうな、トナカイよ」


トナカイ

「ったりぃすよ、親分」


サンタ

「バカたれ! もっとやる気ださんか! そんなんだから赤鼻のトナカイって毎年バカにされるんじゃぞ」


トナカイ

「いや、そんなこと言ったって。寒い夜空を走るこっちの身にもなってほしいッス」


サンタ

「お前は毛があるからいいではないか。ワシなんか背中に大量のホッカイロつけて我慢してるのに」


トナカイ

「カイロの消費量ハンパないっすね」


サンタ

「人類の英知だな、これは」


トナカイ

「ああ、今年も赤鼻になるのか…」


 シャンシャンシャン、と出発したサンタとトナカイ。


サンタ

「寒っ!! 日本の夜空、寒っ!!」


トナカイ

「ちょ、親分!! ソリの上で震えないでください!! 落ちます」


サンタ

「いや、だって、めっちゃ寒いんだもん! 早く最初の家にいってよ」


トナカイ

「ほんとに、このジジイは……」


サンタ

「お、見えた見えた。最初の家が。よし、あそこでプレゼント置いたら暖をとろうか」


トナカイ

「プレゼントした家で暖をとらないでください」


サンタ

「さて、煙突は、と」


トナカイ

「いや、最近の家に煙突なんてついてませんよ」


サンタ

「ついてないの!? どうやって冬越してんの!?」


トナカイ

「ほら、最近は石油やガスや電気で部屋を暖めてるんですよ」


サンタ

「人類って、すごいね…」


トナカイ

「こういうやりとりを、毎年続けてるんですけど。いい加減、覚えてください」


サンタ

「いや、だって下界に降りるのなんて年に一回じゃん? 忘れちゃうって、そんなの」


トナカイ

「ボケが始まってると見てよろしいですか?」


サンタ

「よろしくないよ! ワシ、まだ現役! ていうか、煙突がないのにどうやって侵入するの?」


トナカイ

「いや、普通にピッキングで…」


サンタ

「ピッキング!? ワシできないよ、そんなの」


トナカイ

「ええ。ですから、いっつも自分がやってるんすよ」


サンタ

「その前足で!? すごいね、君。でかっぱななんて思っててゴメン」


トナカイ

「今までそんなふうに思ってたんすか!?」


サンタ

「でもさ、最近は防犯設備がしっかりしてるし、大丈夫かの?」


トナカイ

「そうなんすよ、セ○ムとかしてる家が増えちゃって…。年々、気づかれずに侵入するのが難しくなってきて…」


サンタ

「こんなんで捕まったら、ワシらサンタ失格だよね」


トナカイ

「あ、開きました」


サンタ

「早っ!!」


 のっそりと不法侵入を果たしたサンタとトナカイ。

 ベッドには枕元に靴下を置いた女の子が熟睡していた。


サンタ

「ほっほっほ、子供はかわいいもんじゃの。靴下まで用意してあるわい」


トナカイ

「靴下を用意するくらいなら、鍵なんかかけるなって話っすよね」


サンタ

「まあ、そう言うな。世の中にはこの時期を見計らって泥棒に入る悪党もいるんじゃ。防犯対策はしっかりせんとな」


トナカイ

「あ、親分、見てください! 欲しいものを書いたメモ書きがあるっすよ!」


サンタ

「ほっほっほ、どうせぬいぐるみとかじゃろう。特大のをプレゼントしてあげよう」


トナカイ

「いや、なんか『デスノート』って書かれてるっす…」


サンタ

「あるか! 子供が、んなもの欲しがるな!」


トナカイ

「いや、オレに怒ってもしょうがないっすよ。この子の希望だし」


サンタ

「子供は子供らしくぬいぐるみで我慢せい!」


トナカイ

「あ、もうぬいぐるみって決まってたんですね」


 サンタはぬいぐるみを置いて女の子の部屋をあとにした。


サンタ

「さ、次は男の子の家じゃな」


 サンタとトナカイが2軒めに到着し、またトナカイが得意のピッキングで鍵を開ける。


サンタ

「なんか君、これで生活できそうだね」


トナカイ

「人聞きの悪いこと言わないでくださいよ、親分」


 再び侵入を果たしたサンタたち。


サンタ

「ほっほっほ、スヤスヤかわいい寝息をたてて寝ておるわい」


トナカイ

「親分、ここにもメモがあるっすよ!」


サンタ

「ほっほっほ、いいじゃろう。さっきの女の子ではちょっと大人げないことしたからの。今回はこの子の欲しいものをあげよう。何が欲しいんじゃ?」


トナカイ

「え~と、『現在、米軍で使用している本物のコンバットナイフと自動小銃』だそうです」


サンタ

「このまま寝首をかき切ってやろうか、小僧っ!!!!」


トナカイ

「お、落ち着いてください、親分!!」


サンタ

「戦場ではな! 戦場ではな! そんなすーすー寝息立てて安眠などできんのだ!!」


トナカイ

「わかりました、わかりましたから! ほら、特撮ヒーローで使う武器のおもちゃを置いときましたから、次行きましょ、次」


 次の家へと向かうサンタとトナカイ。

 サンタはまだ怒っていた。


サンタ

「最近のガキは、子供らしくないな! なんなの? そういう時代なの?」


トナカイ

「もしかしたら、うちらが時代遅れなのかもしれないっすね」


サンタ

「なんだか、自信なくなってきた、ワシ」


 次の家でも見事なピッキングで侵入したサンタとトナカイ。


サンタ

「今度の子供は何を要求しとるんじゃ?」


トナカイ

「えーと、『パパと私を置いて駆け落ちしていったママを返してください』って…」


サンタ

「重いのぶちこんできたなっ!!」


トナカイ

「重いっすね…。どうします?」


サンタ

「少しでも心が軽くなるようにダイエットサプリをあげよう」


トナカイ

「なんか、逆に嫌味っぽくないすか?」


次の家では

『最近、仲の良かった友達が急に話してこなくなったんです。別にケンカしたわけじゃないんですけど。どうしたらいいでしょうか』

という手紙が置かれていた。


サンタ

「わし、こども相談室じゃないよ!? こんなところで相談持ちかけられても困るんだけど!!」


トナカイ

「きっと、サンタさんならなんとかしてくれるって思ってるんでしょうね」


サンタ

「プレッシャーかけすぎだよ、この子!!」


 サンタさんは、考えた末に

「勇気を持ってなんで無視するのか聞いてみて」

と、めちゃくちゃありきたりな内容の書き置きを残していった。


サンタ

「…もう、今年はこれでいいか」


トナカイ

「まだ4軒ですけど!?」


サンタ

「無理だよ、最近の子供のトレンドについていけてないもん、ワシ」


トナカイ

「時代でしょうか」


サンタ

「なんか、こう、メールの一斉送信みたいな感じでプレゼント送れないもんかね?」


トナカイ

「いいですね、それ。そういうシステムにしましょうよ」


サンタ

「天界に相談するか」


トナカイ

「来年は、ワイハでのんびり過ごしたいっす…」


 と、言いつつ来年もどこかの家にサンタがやってくる。


 メリー・クリスマス☆



最後までお付き合いありがとうございました。つづきます!!

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