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別れの夕暮れ

作者: 片栗子

夕暮れの河川敷は秋の風が吹いていた。

冬服の制服でももう肌寒い。

そんな時期になっていた。

一年あっというまだな。

そんなことをぼんやり考えながら、土手の影で暗くなっている川を見るともなく見つめていた。

今日でここに来るのも最後になるだろうから、しっかり目に焼き付けておこうと思っていたのに、頭が他の事を考えているせいでそれもままならない。

結局最後まで何もないまま終わりそうだ。

うっすらと期待していた自分がむなしかった。

ずっとこの河川敷で風景を描いていた。

絵がすきというわけでもなかったが長い間つづいたのは浅はかな期待があったからかもしれない。

ここは有名な画家がよく通っていた川だと聞いたのは本当に幼い時。

絵を描いて褒められるのがまだ嬉しかった時期だ。

その場所で自分も絵を描き続ければ大勢の人に認められるかもしれない。

そんなことをぼんやりと思い続けていた。

でもそれも今日で最後だ。

じっと川面を見る。

何度も何度も同じような絵を描いてきたせいか、もう見るのも嫌になってしまった川面。

いつかもっと広い世界を描くんだと思っていたがもうそれもかなわない。

そう思う時点で、そこが自分の限界だったのかもしれない。

高校2年の秋。

進路希望には堅実な志望先を書いた。

これまで何の結果も残せなかったし、4年間遊ぶほど我が家に余裕はない。

目標を達成するには、今のままじゃダメだった。

フラフラと定まらないここではダメだった。

振り返り、暗い川面に背を向けた。

一歩踏み出そうとして、名残惜しく思う自分に気付く。

いままで当たり前にあったものを手放すことが心細かった。

こんなふうに決意してもまた性懲りもなくここに戻ってきてしまいそうな自分が恐い。

そんな、心の中にとめどなく湧き上がりつづける感情をいちいち拾い上げてしまったら何もできなくなりそうだった。

たまらず顔を上げると、空には煌々と光る夕暮れの太陽があった。

沈む寸前の、無遠慮なくつきささる光に目を細める。

迷いと不安を抱えたまま、一歩歩き出す。

へばりつく後悔を足の裏から引きあがすように。

まぶしすぎる太陽にうつむき、重い足元を見つめながら、見慣れたどんよりとうす暗くどこか居心地の良かった川面と心の中でかたい別れをした。

別れといれば川原、という自分の中の勝手なイメージで書いた。


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