ガルム君の7日目(動乱)⑦
前からも後ろからもざわめきが聞こえる。
僕は死体を見ても何も感じない。
「き、貴様!王国に逆らってどうなるか分かっているのか!」
「本当に理解しないな、お前」
「だ、だからと言って我の兵を殺すなど!」
「ッチ、これだから…」
「この地に踏み入れた時点で――
お前らの生死は、あたしが決める」
「……下された命令を、知らない訳ないよな?」
空気が変わった。
直後、前方で悲鳴が上がる。
「嘘だろ……」
「化け物……!」
「殺される……!」
兵士が口々に喋る内容に顔をあげたくなる。
「ガルム!!」
後ろからの声に振り返る。
ヘンリーが手招きしてそちらに駆ける。
アストレアの舌打ちが聞こえる。
振り返ろうとした――
その時――
視線の先に――
空の上に巨大な魔法陣。
「……なんだよ、これ」
知ってる。
……でも、これは違う。
「……遠すぎるだろ」
手が、届く気がしない。
魔法陣の中で、何かが動く。
足が、止まる。
息が詰まる。
……眼だ。
巨大な片眼が僕らを見下ろしていた。
後ろから馬が遠ざかる音が聞こえ、
魔法陣が消えていく。
それでも、目が離れない。
後ろからの足音に振り返る。
「う!」
アストレアの顔に、思わず後ずさる。
僕の横を通り過ぎる。
ドン!
「グエ!」
振り返る。
ヘンリーが、地面を転がっていた。
「お、おい!!何やってるんだよ!」
僕とウィリアムさんが間に入る。
体が、横に弾かれる。
アストレアがヘンリーの胸倉を掴み、引き寄せる。
「何なんだよ!」
足が勝手に動く。
「お前のせいでこの村が消えるかもな」
その言葉の後ヘンリーを押し返す。
この村が消える?
ヘンリーは何もしてないだろ?
僕だけじゃなく皆が同じ顔をしていた。
いや……村長だけ違う……。
なんなんだよ……。




