第一話 君との再会
君の声が好きだった。
君の話し方が好きだった。
君の仕草が好きだった。
その全部があの日失われた。
2015年9月が終わる頃君はアパートの7階から自殺した。
「ぐしゃり」と言うあの音がいまだに記憶の中にこべりついてる。
何度も、何度も夢に出て、その度に起きると泣いている。変えられない過去なのにずっとずっと過去に戻りたいと思ってしまう。
10年経ったいまでも、僕は君のことを思って生きている。君のやりたかったこと。君のなりたかった職業。君の好きな音楽。全てに僕は縛られてる。
「そうだ、僕は君のために生きなきゃそれが僕のせめてもの償いだから」
2025年8月某所
この日は今年一の猛暑日と言われるほど暑い日だった。額からは止まらない汗。肌にはこべりつくシャツ。僕の体には水分は一滴も残ってないだろうと思えるくらい喉はカラカラ。それなのに気づけば砂埃舞うグランドの真ん中で大の字になって寝転んでる。
息は荒く、呼吸を整えるまで数分かかるほどだ。ただ、この瞬間だけは、君のことを想うことなく走れる唯一の時間だからきっと全力で走っていたんだろう。息を整えている時に見る大きな大空はものすごく綺麗で雲ひとつない青天だった。「君のお葬式もこんな青天だったな」ぼそっと言った言葉を自分の手で塞ぎ、「まただ」と内心思いながら君を忘れられないことを自覚する。僕にとって仕方ない発作のようなものだ。これが日常的に行われるから恐ろしい。天を仰ぎながら体が冷える前にまた、走ろうと思い体を上げ立ちあがろうとした。ふと景色が歪んだ。その瞬間頭に強い衝撃が走り、視界には先ほど見ていた青天が見える。ただ、先ほどの強い衝撃でゆっくりと目を閉じた。
何分か経った頃だろう。どこからか微かに女性の声が聞こえる。
「大丈夫ですか?大丈夫ですか?」どこから聞こる声に少しばかり懐かしさを感じる。
次第に大きくなる声に懐かしさより、どこか胸騒ぎに変わっていく。「これは夢だ。」
暗示しながら目を開けた。予想は的中した。
そこには、好きだった君に似た人が立っていた。
「久しぶり」声を聞いた時涙が止まらなかった。




