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瞬息万変

武馬問斗です。初投稿です。

俺、霞谷一樹(かすみやいつき)は暇をしていた。出すものもないのにトイレにいって校則違反のスマホをさわり教室に戻ってきたがそれでも時間が余った。

 自分の席につき、ネットサーフィンにでも勤しもうかとiPadを机にかかったリュックから取り出した。


「霞谷ー。次の授業なんだっけ?」


意味もなく学級本棚のギリシャ神話の解説本を読んでいたとき、柳山礼(やなぎやまれい)が話しかけてきた


 「自分で調べろー、んなの覚えてなあい」

 

いちいちその日の時間割りを覚えられるほど自分の記憶力に自信はない。それを聞いた柳山が目をつぶって考え出した。


柳山は成績学年上位者だ。俺とは頭の出来が違う。少し考えたら思い出せるのだろう。


 「ええと.....ああ。数学か。プリントやった?」


ほらやっぱり。すぐ思い出した。

 

てかそんなに早く思い出せるならなぜ俺に聞いたのだ


 「そんなのあったか?」


 「あいつが次の授業までに問題➂までやっとけって言ってたやろ。次の授業で当てるとも」


 「ああ、そうだっ.....け?今日何日?」


 「は?今日は.....6月の10だな」


 「じゃいいや」


 「当てられたらどうすんだ」


 「当たんねえよ、安岡先生だいたいその日の月と日にちを足した人を当てた後にその列の前後ろって当ててくやろ?16席の小倉とは列が違う」


 「お前なんで悪知恵だけ頭良いんだ」


 「悪知恵って.....こんなしょーもないこと悪知恵とは呼ばないだろ」


 「確かに」


他愛もない会話とはこの事だろう。がっつり青春を謳歌してる訳でもなく、世間話な訳でもなく。ただ次の授業を確認してるだけなのに男子高校生らしさがにじみ出ている。


そうこうしているうちにチャイムがなり、同時に安岡先生が教室に入ってきた。


身体は小柄な方だが他の教室に聞こえるほど授業の声がでかい。この前この先生の授業中に居眠りをした時夢の中に声だけ侵入してきた。


授業が始まって早々安岡先生が小倉にプリントの問題の答えを答えさせる。彼は問題を解いてきていなかったらしく、その旨を伝えた。安岡先生は注意だけして後ろの柳山を代わりに当てた。


やつは座ったまま長々と答えまでの導入と答えを解説しきった。安岡先生は「完璧」といい柳山を褒め詳しい説明を始めた。


(数学得意だもんな.....あいつ)


俺は彼の頭脳を単純に凄いとも思うし尊敬もする。


前では安岡先生が授業をし。前方の席の女子たちは手紙を回し会いくすくすと笑っている。一番後ろの席では睡眠王 勝本がいつも寝ている。今日は授業開始10分後には既に寝ていた。全くいつも通りの風景だ。


そうして授業を数度繰り返し昼食の時間になった。運動部のやつらは机を2、3個くっつけそこを囲んでワイワイと各々の弁当を食べている。陽キャ女子たちも同じだ。


そんな2つの集団から俺に嘲笑するような目線と「ぼっち.....」とボソッと発された声を俺は感じとった。


俺は自分の席で食べているだけなのにぼっち飯と周りから見られるこの風潮を嫌っている。


何か怒りたくなる訳でもない。その方がよっぽど面倒だ。直接噛みついてきたならまだしも、向こうでこそこそ笑ってたから反撃となるほどヤンキー魂はもっていない。


第一ここは県内では有数の中高一貫の私立校だ。ヤンキーにでもなって喧嘩した暁には一発退学だ。


そもそもこの付近にヤンキーや暴走族なんているのだろうか。それらしき影といえば夜中にバイクを爆音で走らせて町中人々の睡眠を害する悪党達だ。暴走族も最近後継者不足に悩まされているらしい.....と前にYouTubeで見た。


昼飯を食い終わったら俺はまた暇となる。授業までは残り15分あるが「今のうちに課題をやっておこう」となる聡明な思考は持ち合わせていない。


(どこかフラッと歩いて戻ろう.....)そう考えて廊下に出ようと立ち上がった。






その時だった。


ピーーポーー.....ピーー.....


教室のざわめきの中、俺の耳が外から救急車の音を拾いとった。なぜ気がつかなかったのだろうか。俺は廊下に出て4回の窓から下を見下ろす。


 「また物騒な.....楓?」


そこには体育館と運動場の間に停まった救急車に運ばれ行く男子生徒の姿があった。


その男子生徒はまさかのクラスメイト 矢田楓であった。


矢田は陽キャの部類ではあるものの、俺や柳山などの陰キャ軍団にもなんなく話しかけてくる人格者だ。


何やら人も多く楓の体を明らかに覆い隠していて容態はよくわからない。見る気の失せるほどの重傷なのだろうか。


体を覆い隠すということは具合が悪いとかの内的要因ではなく外的要因の怪我なのだろう。学校でそんなことがあるとすると.....階段や窓から落ちたなどだろうか?


それまで気付いていなかったクラスの連中も騒ぎに気付くと廊下に出始めた。階段で下に様子を見に行く者もいたが俺は廊下で高みの見物を続けた。


しばらくして救急車がけたたましいサイレンと共に発車した。そして救急車で隠されて居た場所に驚くべき者をみた。


これまたクラスメイトの華岡龍斗が歴史の石川先生と安岡先生の教師二人係で取り押さえられていた。


 そしてなにか言葉を発した


 た の む し ん で て く れ


彼の唇がそう動いた。二階まで聞こえなかったが。絶対にそう言った。それを聞いた時先生の拘束が強くなった。


そしてその側でもう一人の先生があるものを本当に戦慄した目で見守っていた。俺はそれに気付き絶句した。


 「霞谷!矢田が刺されたってマジか?!」


遠くから柳山が俺が想像してしまった通りの真実を告げる。


ああ、やはりそうか。あの先生が守ってたものは血の水溜まりの中に浮かぶ光り物 ナイフだった。黒い持ち手の折り畳み式で遠くからでわからないが十徳ナイフの類いだろう


 「どうやら.....マジ.....らしい」


 「これ.....どうなんだ?」


 「そりゃ.....全員帰宅命令だろ.....」


俺と柳山はただ呆然と目の前の状況をみていた。


華岡はじっと動かなかった。石川先生は仰向けの華岡の上から膝で押さえつけて胴体、そして右手で頭をさらに左手で左腕を押さえつた。安岡先生もまた両足を両腕で押さえつけてじっと動かなかった。


華岡は既に逃亡する意思を放棄していた。


俺もそう思った。


それが大きな間違いだった。


華岡は急に寝返りをうつように回転した。上に乗っていた先生はバランスを崩して前に手を付く形で転倒。それにより華岡の上半身がほぼフリーな状態になった。


華岡は石川先生を押し退けると未だ反応出来ていなかった安岡先生の拘束から脚を引き抜き、両足で顔に蹴りを入れた。


蹴り上げた次の瞬間には素早く立ち上がった。華岡はバスケ部でゴリゴリの運動部。運動神経は抜群なほうだ。


ふと横を見ると柳山は校則違反のスマホでその様子を撮影していた。


 「.....この状況でよく撮影しようなんて頭がまわるよ.....」


 「.....おう」


柳山は頭は回っているが心ここにあらずという感じだ。


俺はこの緊迫しすぎている状況に一種の興奮すら覚えていた。学校内で殺人事件が起こっているというのに、不謹慎極まりないと自分でも思う。


立ち上がった華岡はナイフの方に向けて駆け出した。


が、それは。ナイフを見守っていた体育課の野口先生に阻まれた。華岡が急ブレーキで止まる。


華岡にとってはここでナイフを取れないことよりも捕まることの方がリスクが大きいと判断したのだろう。先ほど救急車が出ていった校門から勢いよく逃げ出した。


その後先生達が後を追って校門から出て行ったタイミングで普段通りチャイムが鳴った。俺と柳山、そしてその様子を見に行っていた多くの生徒たちが足取り重く教室に戻っていった。


中にはチャイムが鳴ってもなかなか戻ろうとしない生徒もいたが生徒指導部の先生が戻れと叫ぶと先ほどの生徒たちとと違い足早に全員帰っていった


5限目は英語だったが。俺らもまともに授業は受けられる心情ではないだろうし学校もそれどころではなかった。


全員が口を開くこともなく着席して待っていたところに息を切らしながらやってきた安岡先生から殺傷事件が起き緊急下校となった旨を伝えられた。


台風や大雨で下校時間が早まるならクラス全員教室が揺れるように喜んだだろう。だが今回ばかりはそんな空気には微塵もならなかった。


しかも親が車で迎えにくるまで教室待機ときたものだ。普通に帰った方が早い人たちにとってはいい迷惑だが反論する余地もない。あんなことがあったのだから安全のため親が迎えにくるというのは当然のことだ。


まあ俺も家が近く歩いて帰れる距離だが親は家にずっといるため迎えに来るのも早いだろう。


1人、2人とクラスメイトに迎えが来て程なくして母さんが迎えに来た。


母さんは車で迎えに来ていた。車に乗り込んでからしばらくの沈黙があった。沈黙の気まずさと非現実なことが起きたことによる驚きで周りの音が変にクリアに聞こえた。車の振動一つ一つが鼓膜と脳にダイレクトに届くようだ。


母さんは何か聞きたいことがあるかのようにミラーから目線をこちらに送ってくるがこちらからは何も喋らない。肩や腕にもいつもより力が入っている気がする


ふと母さんが決心がついたかのように事件について聞いてきた。


 「一樹は何も巻き込まれてないんだよね?」


 「うん。事件も起きた後に知ったし。矢田以外の人は誰も巻き込まれていないよ」


 「…ふう、そうなのね。矢田くん…心配ねえ」


母さんも母親なりに俺のことを心配していたのだろう。力んでいたハンドルを握る手が少し緩んでいた。


 「事件の後華岡が校外に逃げたんだ」


 「華岡くんに何があったのかしら…」


全くその通りだ。一体全体何がそこまで華岡を駆り立てたのか。華岡と矢田はこれまたクラスメイト鳳来晃牙ほうらいこうがと合わせてクラスのサンコイチと言っていいほど仲が良かった記憶がある。喧嘩をした程度で殺し合いに発展するというのも何かがおかしい。


その時俺の頭に華岡の発していた言葉が再度よぎった


 た の む し ん で く れ


一文字一文字生々しく発音されていたその言葉には身震いさえする。この言葉からの憶測で華岡は明らかな殺意を持って矢田を刺したのだろう。しかもそれを後悔もせず切実に相手の死を願う。サイコパスもいいところではないか。


逃亡した華岡はどこへ逃げたのだろうか。自宅の近く?学校周辺にまだ隠れているのだろうか?それともどこか遠い遠い場所で逃亡生活をするのだろうか。というかもうすでに警察に捕まっているのではないだろうか。


次から次へと疑問が浮かんでならない。


…だめだ。考えるのをやめようとしてもどうしても事件のことばかり考えてしまう。仕方のないこととも思うが俺が考えることに意味があるとも思えない。そう思ったばかりの俺の脳には「矢田は無事だろうか」という新しい疑問が浮かんでいた。


程なくして自宅についた。車から家に入るまでの間も母さんと会話はなかった


家に着いた俺は鞄を背負ったまますぐさま2階へと駆け上がり自室に閉じこもった。


あんな非日常を味わった後だからだろうか、俺はベッドで天井を仰ぐなり夕飯の時間まで目覚めることはなかった。


夕飯が終わり風呂に入るまでの間俺はスマホを見ることにした。クラスラインを見るとそこには60件ほどの通知が溜まっていた。


見ると華岡がグループを退会していた。


そりゃあんなことが起きた後だ、彼の元には友人、先輩後輩問わず多くの人から連絡が届くだろう。そんなものを見せられては早々に精神がどうにかしてしまうだろう。


クラスラインには他にも鳳来や岸本、獅子谷ししたにが矢田の見舞いに病院に行ったことも書かれていた。


今の所矢田は手術が終わったものの目は覚めていないらしい。とりあえず今の所最悪なことなってなくて一安心した。


残りは矢田を心配するメッセージや華岡に怒りを露わにする文章もあった。


柳山からも個別でラインが来ていた。


俺は数人程度しか個人ラインを人と繋いでいない。柳山も同じだろう。別に無理に増やそうとも思わないが…


柳「明日の物理って移動教室だっけ?」


まじかこいつ。


柳山の連絡は思った数倍重要度の低いものだった。


霞「うん、物理室で実験のはず。そしてよく明日の準備する気が起きたな」


柳「そりゃだって…事件があろうがなかろうが授業はあるだろうし」


霞「そうか?明日は流石にないと思うが…」


そんな会話を午後8時過ぎまで電子板上で繰り広げていると扉がノックされた。


俺は体を起こしてベッドに腰掛ける体勢になると「はあい」と返事をした


わかっていたが入ってきたのは母さんだ。スマホを手に持ったまま俺の部屋に入ってきた。


その目は呆然としているようにも見える


「なにかあった?」


「…今学校から連絡あったんだけどね。まずあの事件のことで明日は学校おやすみだって」


「そっか。まあしゃーないよな」


「それでね一樹…」


呆然としたような空気感はそのまま母さんが少し真剣そうな目つきに変わる。


「どしたの?」


「亡くなったんだって…」


「…っ」


俺の顔から血の気が引いていく


俺の頭にはまだ初めて同じクラスになってまもない頃クラスでタブレットばかり眺めている俺に「何見てんだ?」と気さくに話しかけてくれた矢田の顔が思い出された。


駄目だったか…考えうる最悪が起きてしまった


途端に華岡への怒りがはらわたから突き刺されるように膨らんでいく。俺は自分の爪が手のひらに刺さるほど拳を強く握りしめて地面に俯いた。


「くそっ…」


「学校付近の道路で見つかったそうよ…華岡くんの遺体」


そうか…








は?

学校になろう教信者多いんですよね。続きは気が向いたら書きます。

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