表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

タイムマシンを発明してしまった!!

作者: 大沙かんな

はなはだ愚作ではありますが、この作品を石川英輔先生に献呈いたします。

 なんてことだ、タイムマシンの原理を見つけてしまった!!


 切っ掛けは本当に些細なことだったのだ。コンビニで買ってきた豚まんにカラシをつけて、そのあと醤油をかけようと思っていたのに、間違えてウスターソースをかけてしまったのだ。


 もしも俺が金持ちだったら、その豚まんをあきらめていたかもしれない。しかし俺はあきらめきれなかったのだ。案ずるより産むが易し、車山前(くるま、さんぜん)(いた)りて必ず(みち)あり。覚悟を決めて食べてみた結果、ソース豚まんはコレジャナイ感満載ではあったものの、そんなに悪くなかったのだ。むしろアリ? そう思わせるだけの高いパフォーマンスを見せてくれたのだ!!


 それに気づいた瞬間、俺の頭の中に激しいスパークが散った。実時間軸に直行する平面と、その平面を右回転する虚時間、そして逆に左回転する虚時間があるのだ。そしてそんな平面からであれば因果的な実時間軸を俯瞰できること、その俯瞰視野からは現在過去未来すべてが見通せることが、一瞬のうちに理解できたのだ。


 実際に時間旅行をするにはおそらく莫大なエネルギーが必要になるが、過去や未来を覗き見するだけなら簡単にできる。そのためにはある程度の大きさの空胴と、あまり薄すぎない薄膜が必要だ。その時、俺の頭は目の前の現実に心の底から驚嘆の声を上げた。なんという女神の采配だろう、必要な物がすでに目の前にある!


 俺は飲みかけだったコーラのペットボトルを空にし、そして豚まんの下にひいてあった紙から、点々と残っている豚まんの欠片をこそぎ取って口に入れた。これで空洞と薄膜は手に入った。あと必要なのはエネルギー源の単三乾電池だけだ。


 俺は完成した装置に『時眼鏡』と名づけた。俺の作った時眼鏡の大きさから計算して、おそらく約四百年、そしてその二倍の約八百年、三倍の約千二百年ほどの過去と未来を覗き見できるだろう。四倍以上となると安定共振させることがおそらく難しい。


 未来を見るのには、過去と比べてより大きなエネルギー源が必要だ。おそらく単三乾電池百本ぐらい必要になるはず。とりあえず未来は後回しにして、過去に的をしぼることにしよう。


 約四百年前なら江戸時代初期、約八百年前なら鎌倉時代初期、約千二百年前なら平安時代初期にあたる。その時代風俗を直接目にできるなど、なんと浪漫あふれる話だろうか。


 俺はさっそく時眼鏡に目をあてて、約四百年前の世界を覗いた。俺の目の前には青い海が広がっている。


「おお!成功だ!俺は今、四百年前の世界を直接この目で見ている!!」


 そして俺は四百年前の世界に数秒で飽きた。だってただの海だし。


 気を取り直して、時眼鏡の設定を八百年前の世界、鎌倉時代に合わせた。


 目の前に青い海が広がる。


 千二百年前の平安時代もただの海だった。



 その昔この辺り一帯は海で、戦後になって埋め立てられて人が住むようになったみたいだ。話としては知っていたが、その意味するところをまったく理解していなかったぜ。人がいないと面白くないので、昔から陸だった場所で試したほう良い。俺は電車で都心に移動して、四百年前の世界を覗いた。


 時眼鏡に、すすき野原が広がる風景が映しだされた。


 八百年前もすすき野原、千二百年前もすすき野原……うん、そうなるって知ってた。


 だから人がいないと詰まらないって言ってるじゃないの!


 一時間ほど歩いて場所を移動してから時眼鏡を試す。


 うん、田んぼ。そして田んぼ。


 だから略!



 これはある程度戦略を立てて行動したほうが良さそうだ。昔からずっとあって、人がいそうな場所が必要だ。例えばだけれど皇居で試すとする。四百年前には徳川将軍が住んでいたはずだから、ナマ将軍様を観察できる良いポイントになるはずだ。とはいえ、現在の皇居に勝手に侵入することは激しく難しい。


 時眼鏡は位置の微調整ができないっぽいので、そのものズバリの場所で使う必要がある。今の装置は四百年単位だが、調整して一年単位の物を作ったとしても、それで女湯を覗くには女湯に入らなければならないのだ。女湯の外から時眼鏡を使っても、女湯の外しか見えず、中を見ることはできない。いくら過去に戻っても結局ノゾキをするしかないのだ。


 自由に入れるうえに昔からあることがわかってる場所が必要だ。少し考えて、俺は古い神社を利用することに決めた。由緒正しい神社なら千年ぐらいは経っているだろうし、場所だって変わらない。それに人だっているだろう。日を改めて、しっかり調べてから試すことにしよう。


 四百年前なら旧吉原があったはずで、毎日それなりに人の出入りがあるうえ、超絶美女も数多く住んでいたことだろう。それだけでなく今は完全に町の作りが変わっているので、道端から覗けば置屋の中や寝所がガン見できるかもしれない。いやもうあれよほら、以下略でアッハーンって感じで。でも他人のオタノシミを黙って眺めるだけで自分では手も触れられないのは、ねぇ。もしかすると素晴らしい体験ができるかもしれないが、激しい嫉妬で発狂できる自信満々だし、涙を飲むことにした。嗚呼、俺の、俺だけの花魁達よ、さらば!


 次の週末、俺は千年ほど前からあるという古い神社を訪れていた。立派な石造りの鳥居や、古びた社殿の(おもむき)(いや)が上にも期待が高まる。偶然神社を訪れた乙女が、ぽっと桜色に染める頬が初々しくて。


 わかる、わかるぞ、乙女が俺を待っている!すぐに行かねば!


 時眼鏡で四百年前を覗く。石造りの鳥居は現代そのままだ。古びていた社殿にはところどころ朱色の後が残っていて、少し新しくなったように見える。そして四角い石畳だった場所に、現代では存在していなかった(うまや)のような床のない屋根だけの建物があった。少し歩いて良く見ると、中には大きな絵馬が飾ってあった。絵馬なんて合格祈願とか書いた手のひらサイズの物しか知らなかったけれど、昔はこんな大きな物があったんだね。ちょっと勉強になった。


 しばらく観察していたが人の姿は見当たらなかったので、俺は八百年前に焦点を変更した。鳥居は木造に変わっていた。年季が入っているのか、少し虫食いの跡がある。社殿は古い物のままだったが、その形は完全に変わっている。大きな絵馬があったところは丸い石畳に変わっている。現代では小さな(ほこら)がある場所に厩に似た小さな建物があり、その中に数頭の小さな木馬が飾られていた。木馬の足元はかなりボロボロで、それなりに古い物のようだ。絵馬はどこにいったんだろう、社殿の中かもしれない。


 神社の変遷は興味深かったが、別にそんなものを見たかったわけじゃない。ダメ元で千二百年前に設定変更してみると、ただ薄暗い森が広がっているだけの場所だった。


 由緒ある神社はそれなりに楽しめたが、やはり人がいなかったのがイマイチだ。もしかしたら京都や奈良の有名な寺社ならいけるかもしれないが、それなりに交通費がかかるのがネックだな。今後どうするかは、おいおい考えよう。



 帰り道にコンビニに寄って豚まんと一リットル半入りのコーラを買う。コーラは飲み物だしな(当たり前)!


 大きいペットボトルを使って共振周波数を下げれば、時間の刻みを四百年より短縮して百年ほどにできるはずだ。そうすれば大正浪漫や爛熟した化政文化、ナマ暴れん坊将軍などにお目にかかれるかもしれない。


 期待に胸が膨らむぜ、かなり膨らんだ今ならギリギリCカップはあるかも知れない、いやきっとある!コーラで膨らんだ腹ならもっとある!


 俺の時間旅行(タイムトラベル)との闘いはまだ始まったばかりだ!


 いまこの時が、新しい時代の始まりなのだ!

貴族の時代、武家の時代、そして中央集権と町人・市民の時代。我々の日本は今までおよそ400年周期で大きく移り変わってきました。

まだ始まったばかりのこの400年、これからいったいどんな素敵な文化が育まれ、そして花開かせる時代になっていくのでしょう。

ほんと、希望に胸が膨らみますよね、Gカップぐらい!

もみもみ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ