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06 これって公認ってこと?

「おいおい、なんだ? 珍しく騒がしいな」

受付カウンター奥のドアからちょっと顔が(いか)つい筋骨隆々な男が出て来た。

冒険者組合ってヤクザ事務所なの!? とか思ったけど受付嬢のお姉さんが

「あ! 支部長! 今カクカクシカジカという事になってまして」

「ほーう・・・」

一言だけ返すと、カウンターに置きっぱなしにしてたホーンラビットの角と皮を手に取り、ニヤッと口の端を上げる。

「なるほどな・・・ よし、事情は分かった! この勝負オレが公認してやる!」

まさかの冒険者組合の支部長が出てきて、勝負を許可すると言う。

「だが、公正な勝負って事を前提に、書面で宣言しそれぞれサインしろ」

受付嬢が勝負内容を記載したものを急遽作成し、俺とその冒険者3名がそれにサインをした。

もちろん俺は自分の名前すら書けないから、ローブの少女に書いてもらったのを見ながらサインした。

「よーし、これでいい! しかーし、忘れるなよ? 負けた方はキッチリ払うもん払う事、それが出来なかった場合は契約不履行で借金し弁済した上で奴隷落ちだ! ガッハッハッハッー!」

え? マジで!? 奴隷とかアリの世界なの!? てかサインする前に言って欲しかった。

どっちにしろ、俺に勝負もしないで尻尾巻いて逃げるって選択肢はないけどな。

「キミ、本当に大丈夫かい?」

ローブの少女が心配してくるので、俺はコクっと頷きを返した。

なんやかんやでゴタついたまま話がまとまったらしく

「よぉーし、これからこの新米冒険者アルフォンスが、勝負を賭けてホーンラビットの単独討伐を行う! 見物したい奴はオレについてこーい!」

冒険者組合の支部長が俺と絡んできた冒険者3名を先導し村の外へ向かう。

門では門番のバンさんが近寄る行列を見て「ギョッ!」となっていたが、俺に気が付いて声を掛けてくれた。

「お、おいおい、アルフォンス! お前いきなり何やらかしちまったんだ!?」

「あははは、ちょっとイザコザがありまして勝負をすることに」

状況が良く呑み込めないバンに支部長が歩み寄り何やら話をする。

それにウンウンと頷いてバンは指を1本縦にしたら、支部長はバンの背中をバンッと叩いて笑顔で戻ってきた。

「さぁ、俺に続けー!」

行列に何故かバンさんも加わってついてきた、門番の仕事はいいのかよ?

しばらく歩くと多分俺がホーンラビットに遭遇しただろう辺りに着き、支部長が声を上げる。

「これから、この新米冒険者アルフォンスが、勝負を賭けてホーンラビットの単独討伐を行う! オレが「そこまで」と合図するか、アルフォンスが「ギブアップ」を宣言したら終了だ! それでは開始するぞ、準備はいいか? それと観客は離れて見物しておけよ、怪我しても責任は取れねぇからな」

俺と冒険者3名と支部長を残し距離を取る。

支部長は何か取り出し「ピィーーー」と笛? を吹いた。

それってなんぞ? と聞こうとしたら周辺に「ザザッ!ザザッ!」とモンスターが集まって来ている音がしてきた。

もしかしてアレか?「魔物を呼ぶ笛」とかそういうアイテム、てかモンスター集まりすぎじゃない!?

「そろそろいいか・・・ よし、いけ、アルフォンス!!」

その合図で俺は腰の白と黒の短剣を引き抜く。

服に隠れて今まで見えていなかったのか、冒険者らが「んなっ!」と声を出すのが聞こえたが、チラっと目をやると支部長はニヤっと笑っていたのでどうやらバレていたようだ。

ホーンラビットは草の揺れる感じと音で位置が丸わかりなので、こっちから踏み込んでわざと跳ねさせてから首元を一閃、綺麗に頭部と胴体に別れを告げさせる。

「魔物を呼ぶ笛」?の効果なのかあちこちから集まってきては俺に切られ、バッタ、バッタと地面に落ちて動かなくなる。

「カササササ・・・」

なんか違う音が聞こえたんだが間違いなくモンスターだと思う、が、日本人の俺としては非常に抵抗感のある音なんだよなぁ、とちょっと背筋にゾゾっと悪寒が走る。

「カサササ・・・ッ!ザッ!」

近づいてきたと思ったら跳ねやがった! うえっ! ってなりながら目視したら、想像していた「G」ではなくダンゴ虫のデカイやつだった。

これはこれで非常に気持ち悪いんですけどーーぉぉ!! って内心叫びながら無意識で黒の短剣を振り抜いた。

「ズゾッ」といった切れ味鈍く錆びた刃で無理やり肉を切るような感覚がして、しくじった!? と思い咄嗟に白の短剣で追撃しようとしたが、ダンゴ虫はそのまま地面に「ボトッ!」と落ちた。

何が起きたの? とホーンラビットを倒しながら様子を見ると外皮の甲殻を残して中身がドロドロと溶けて行ってる。

黒いのヤバ! となりながらも「カササササ」と聞こえた時は躊躇せず黒の短剣を使った。

結構な量を討伐したし、モンスターが草を掻き分ける音も聞こえなくなり、そろそろ終わりでいいのでは? と思って支部長に視線をやるが腕を組んだままで、まだ「そこまで」の声が上がらない。

草原に影が落ちたので顔を上げたら上空に鳥?が集まってきてグルグル周回している。

多分倒したホーンラビットの肉を狙ってるのだろうか、あれは結構美味しいからキミたちにやるつもりは1個もないっ!

急降下を始めた鳥たちが俺の肉を掠め取ろうとした瞬間を狙って、的確に首を刎ねた。

ハイエナどもの影がなくなった頃には鳥の死骸の山だった、ちょっと辺りが血生臭い。

「そこまでぇ!!」

支部長のデカイ合図が響き渡り、見物客からブーイングと一部歓声が聞こえてきた。

冒険者3名はその場で腰を抜かして、アワアワと震えていた。

倒したモンスターは人手を使って組合の処理場へ運び込むらしく、勿論俺も手伝わされた。

解体して肉と素材に分け、組合で買取価格を算定してくれるらしい。

待ち時間の間は俺はロビーの椅子に座っていたが、隣にローブの少女が当たり前のように座り、俺を挟むようにして支部長が座り、冒険者3名は逃げられない様に端っこで数名に監視されている。

「ガッハッハッハ! アルフォンス、お前ほんとに登録したばっかの新人冒険者かぁ!? ってかその小さいなりで相当やるな!! いやぁこれほど愉快なのも久しぶりだ!!」

「キミ、強いね! ちょっと所じゃなく驚いてしまったよ」

「そうなんですか!? モンスターは動きもかなり遅かったですし、危険もありませんでしたし、総合的に弱かったと思うんですけど」

「お前、まだ小さいのに難しい言葉つかうなぁ、ほんとに7歳か!? しかも強さが異常だ」

「そう言えばホーンラビットはEランク上位のモンスターって受付のお姉さんが言ってましたけど、さっきのダンゴ虫と鳥ってどのくらいの強さになるんでしょうか?」

周りに「おかしい」とか「異常だ」とか言われると、一応自分の強さってランクのどの辺なの?って気になるよね?

「ああ、それはな・・・ おっと、素材の査定が終わったようだな! まずは先にそっちから終わらせようか」

そう言うと支部長は椅子から立ち上がった。

ご覧いただき、ありがとうございます。


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