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カマボコ

作者: 大石次郎

私が10歳の時に蒸発した父は風変わりな人で、毎晩カマボコをつまみに焼酎のお湯割りを飲んでいました。


そんな人もいる、とは思うでしょうが、父は食べているどのタイミングかで、それも私達子供だけが食卓に着いているタイミングで、こう言ってきたのです。


「スポンジ食ってんだよ」


最低な部類です。


こんなに御飯が美味しくなくなるワードを言う物でしょうか?


思えば父は家庭と生活の破壊のカウントダウンをしていたのかもしれません。


やがて父は働いていた町工場のお金を経理の女性と2人で持ち逃げして、それきりになりました。


大人になった私は身辺調査を恐れたのと経済から離れたくて、看護師になりました。


そして父への復讐活動の一環として、お弁当を持参する時は必ずカマボコを入れる事にしました。


これはスポンジじゃない。私は持ち逃げせず、私は蒸発もしない。


確固たる私のカマボコ。


その夜も私はどうにか時間を作ってカマボコ入りお弁当にありついていました。


「出た! 富士田さんのカマボコっ」


上がる時間がズレて私が夜中にお弁当を食べる時間に原付で家に帰るらしい岡野さん。


「美味しいですよ?」


「えー? 私、正直苦手何ですよ」


「何でですか?」


「いやカマボコってスポンジみたいじゃないですかぁ~。あ、じゃあお先でーす」


私は唖然とした。


探偵を雇って岡野さんの身辺を調べた。


岡野さんは無関係だった。


私は探偵を雇う等した事を恥じ、退職し、とある四国の浜辺の民宿に暫く滞在することにした。


何も無い水平線を見て、思った。


父は普通の人だった。

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