二人の少女
ここは…。
広々とした円形の闘技場、俗にコロシアムと呼ばれる場所。
今は観客も無く無人のこの場所に、先程の熱気は大気中に結晶となり留まっていた。
おっと失礼…。
観客席に、二人残っていました。
後ろから見ても珍しいと判る服装。
我々だと、その服装は学校の制服であると断言できる。
付け加えるなら、その二人は少女でる。
動きから、
「キャッキャ。」
その言葉使いから、
「きゃっきゃ。」
容易に判断出来た。
では、二人の楽しげな会話に耳を傾けてみよう。
あっ…。
こう言うご時世なので、当然お二人には許可を取っていますので、ご心配なさらず。
軽い茶色のロングストレートの少女が、
「今の…。」
軽く握った両方の拳を、
『かくかく…。』
小刻みに上下させ、
『かくかく…。』
髪をお供に揺らせ、
「凄かったよね!」
熱く語りかける。
上下させるスピードが、言葉の熱量を増大しているに違いない。
受ける方の少女は、肩までの金髪ストレート…。
俗に言う、おかっぱと呼ばれる髪型であるが、その呼び方では怒りそう…。
頭を小刻みに、
『カクカク。』
上下させ、
「うんうん!」
残像を残し、
「わっかるぅ!」
相槌を打つ。
その相槌に、
「あの技って…。」
益々ヒートアップし、
「複数の合成スキルだよね。」
声の熱量も上がっていく。
その熱量を下げるように、
「うん…。」
少し詰った相槌。
それを感じとると、
「違ったぁ?」
首を捻りながら聞き返す。
答えを整理し、
「私の見立てでは…。」
ゆっくりと、
「複数の合成スキルじゃなくて…。」
口を開く。
目の輝きは、
「うん…。」
否定されたショックよりも、
「うん。」
ワクワクが上回っていた。
伝わるワクワクは、
「あれは…。」
知らず知らずに、
「スキルの複数の同時並列発動じゃないかと…。」
声のトーンをシリアスにする。
『はっ!』
見開いた目が、
「そっ!」
心の隅の小さな引っ掛かりを、
「そうか!!!」
吹き飛ばした。
伸ばした両手が、
「流っ石!」
眼の前の両手を、
「ちーちゃん!」
掴むと、
『ぶんぶん。』
上下に揺すった。
少し朱くなった頬の色が、
「それ程でも…。」
照れていると、
「あるよ!」
無言で語る。
リアクションは、
『ずこっ…。』
定番の肩滑らしから、
「もーっ。」
笑いながら、
「ちーちゃんたら。」
ツッコミを入れた。
と…。
「…。」
「…。」
同時に噤んだ口の中に、
「プッ…。」
「ぷっ…。」
笑いを溜める二人。
そして…。
一気に…。
同時に…。
「キャハハハ。」
「きゃははは。」
吹き出す。
当然、最後にハートマークを付けて。