拝啓 全てを奪った人達へ
運命はいつも残酷だ。
まるで産まれたその瞬間から、愛される優劣が決められているように
私の人生はずっと長く、誰かの代わりであり、
いつだってあの娘の二番手だった。
幼い体をボロボロにしながら血の滲む程、努力した。
誰にも負けてはならないと教えられたから。
昼夜の境目が分からなくなる程、働いた。
体を壊しても家名の誇りを優先しろと教えられたから。
そうあるべきで、それ以外の人生など無いのだと、そう思っていた。
愛されたいと思う人達に認められるには、それしかないと信じていたから。
誰かの愛など簡単に手に入るものではないのだと、そう思っていたのに。
たった一つの、花のかんばせのようなその笑顔で、
私の全てを奪った妹。
「すまない。アリシア。
彼女の代わりに、魔獣の元へ行ってくれないか。
ー…君にしか出来ないんだ、頼む。」
たった一人、私に頑張ったねと寄り添っていてくれた、あの人さえ。私を幸せにしたいと言ってくれた、あの人さえ。
彼女の代わりに私にこの世界から消えろと言った。
もう、限界だった。
体が、心が。
何かを考えるのも、前を向こうとすることも億劫で仕方なかった。
体が重くて、もう一歩も動きたくなかった。
助けてと声を上げて、振り返ってくれる人など、私には誰もいなかったから。
私の血反吐の塊のようなあの辛い日々の努力よりも、皆はあの娘を選んだのだから。
ならば愛する人の最後のお願いに、この命をくれてやるのもいいかもしれないと、涙を堪えて頷いた私の気持ちを
ねえ、愛した貴方は、少しでも気付いていてくれたかしら。
でももう、そんな事もどうでもいい。
何かを望むより、諦めることの方がずっと簡単だったから。