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1話 ステータス更新

文体とか考えながら文章書くのって難しい・・・

 大陸最大の都市、『リヴェリア』で個人情報登録を済ませた僕。


 リュックに荷物を詰め込みいざ出陣!意気揚々とダンジョンに向かう。


 とはいかないようだ……


 「自殺願望者ですか!? あなたは!」


 冒険者ギルドを抜け、走りだそうとするユノは先ほどの登録の際、知り合った受付嬢のリーゼ・スノードに止められてしまう。


 「あははは……」


 「そもそもステータスプレートも作ってないのに……」


 と、リーゼは愚痴をこぼす。背中まで伸びる黒髪と透き通った碧色の瞳を持つ彼女が、せっせと仕事をする様子をユノは見つめる。彼女はどうやらギルドの人気者らしい。


 ぷんすかするリーゼをギルドのロビーに待機する冒険者たちが面白そうに眺めている。


 そして何より


「……きれいな人だなぁ」


 僕の口から自然と感嘆の声がこぼれる。


 ユノは昔からおばあちゃんっ子だ。おじいちゃんとおばあちゃんに拾われてから、いつもおばあちゃんの後を追いかけまわし畑に行ったり買い物に行ったりしていた。


 話すのはおばあちゃんたおじいちゃんの親戚のような年の離れた人ばかり。


 成長してからは『探索者』という『冒険者』の下請けのような仕事に明け暮れた日々を過ごし、若い女性とまともに話すことなど、生涯を通した16年間、ほとんどなかった。


 そのため、リーゼのような若くて綺麗な女性には自然と興味が湧くものだ。


 「リーゼさんは何歳なんですか?」


 純粋に疑問に思ったユノは彼女に問いかける。


 「19ですが ……。今日知り合って間もない女性にする質問がそれですか……」


 と、ジト目で見られてしまう。


 女心のわからないユノにとっては単なる好奇心での質問なのだ。悪気があるはずもない。


 「……?」


 不思議そうに首をかしげるユノの薄いエメラルドグリーンの瞳を見たリーゼは毒気を抜かれしまい、ため息をこぼす。


 「はあ……」


 「ユノさんは16歳ですね? 冒険者登録は初めてですか?」


 このままでは話が進まないので突っ込みたくなる気持ちを抑え、リーゼは登録手続きを進める。


 「はい!」


 日々の多忙な仕事で怒りっぽくなっていた彼女だが、健気に返事をする少年にリーゼは少し微笑む。


 「冒険者として活動するには『ステータスプレート』が必要となります」


 「ダンジョンに入るとき、現地にある受付に、それを見せてください。適正ランクと大きく離れていなければダンジョンに挑戦することができます」


 冒険者としての最低限の常識をユノに丁寧に説明する。


 「それでは、ステータス測定に行きましょうか」


 「うおおおおおおお!」


 ”ステータス”という響きに興奮を隠せないユノ。健全な男子なら全員この反応をするだろう。


 なぜなら身体能力や魔力、そして『スキル』に含まれる【能力(アビリティ)】が具体値として表示されるのだ。


 弱っちい僕でももしかしたら英雄の子孫でした!?


 みたいな展開が待ち受けているのではないかと目を輝かせる。




 結論: そんなことはなかった。


 見事に希望は打ち砕かれ、ロビーの床に両手をつく。僕は発行されたステータスプレートをまじまじと見た。


 ―――――――――――――――――――――――


 名前 ユノ・ルイス

 Lank F

 性別 男

 年齢 16歳

『ステータス』 

  力  9 

       敏捷 10 +20

  防御  7

       技能 10 

       魔力 35

    

『スキル』

 Cランク【加速(アクセラレーション)】 


能力』(アビリティ)

 Dランク 【速度上昇】   

  効果 自身の速度を上げる。魔力消費量 ”小”。

 Dランク【勇気の証メメント・オブ・ブレイブ】    

  効果 逆境に経つと、勇気が湧いてくる。

    

  衰弱状態を軽減する。

 

  ◼️◼️◼️◼️ 不明。

 

―――――――――――――――――――――――――


 『普通』だ……。


 現代の『英雄』と呼ばれる人は皆、ステータスプレートの時点から数々の伝説を残している。


 例えば、初めからステータスがすべて”1000”を超えていたり、天文的な確率とされている『スキルの2つ持ち(デュアルホルダー)』である上に超強力なスキルを授かっていたり、『スキル』自体が世界の法則を司るような神の祝福を受けたような人たちだ。


 僕はこれらの『伝説』への憧れを捨てきれず、銀色に光るステータスプレートに何か間違いがあるのでは?と疑ってみる。


 まず、舐めまわすようにあらゆる角度から眺めた。

 

 次に、年末ジャ〇ボで一等を願うくらいの気持ちを込めてこする。


 あるいは、引っ張ったりたたいたりして仕掛けが発動するのを待ってみる。


 すると、ステータスプレートが光だs……


 「――何してるんですか…」


 涙目になりながら何も起こらないステータスプレートに奇怪な行動を繰り返す僕を見て、リーゼさんは冷ややかな目を向ける。


 ……美人の侮蔑(ぶべつ)は迫力ありますね。


 「リーゼさん……」


 現実逃避をしていたユノは誰かに泣きつきたい気分を抑えることなくリーゼに(すが)りつく。


 「ちょっ! ユノさん⁉ 近いです!」


 若干引き気味のリーゼは慌ててユノを引きはがす。


 ひと悶着あったがユノは落ち着きを取り戻した。そこで、リーゼはユノに問う。


 「ユノさんは……どうしてそこまで『強さ』に拘るんですか?」


 「……」


 ユノは先日の出来事を初対面の彼女に話すかどうか迷った。しかし、彼女の瞳を見ると”話しても大丈夫”という安心感が湧いてくる。


 これもリーゼがギルド内で愛される理由の1つだろう。


 「……一昨日、おばあちゃんが放火による火事巻き込まれました」


 リーゼさんが息をのむ音が聞こえる。


 「――命に別状はありませんでしたが、意識はまだ回復していません」


 「僕がもっと強くて、もっとお金が稼げて、おばあちゃんと安全な場所で暮らせていたら……」


 ”おばあちゃんは火事に巻き込まれることはなかった”とユノは言う。


 「それは……」

 

 リーゼは 

  

 ”ユノの所為ではない”


 と言おうとするがユノは続ける。


 「……それだけじゃないんです」


 『探索者』として活動してきて実感した『冒険者』との実力の差こと、自分の実力のなさを噛み締めてきた今の心の内をリーゼに吐露する。


 「――何より、大切な人が傷つくまで弱いままでいた、そのことに目を背け続けてきた自分が憎いんです」


 リーゼは目の前の自分より年下の、空色の髪の少年に対する印象を改める。


 ただの年頃の男の子だと思って接していたが、彼なりの意思をはっきりと持ち、葛藤していたのだと気づかされた。


 「ユノさん……」


 神妙な顔つきのまユノは口を開く。


 リーゼも真剣に聞き入れる体制を整える。


 「――それから、強くなって、きれいな人と結婚したいです……」


 「……え?」


 リーゼは思わず耳を疑う。この少年は先ほどまで話していた人物と同一なのか自分に問い正す。


 

 いや、きっとどちらも『ユノ』という少年なのだろう。


 『弱い』けど『強い』、『脆い』けど『強靭な』そんな少年。


 少し気まずかった空気を和ませるために放ったユノのジョークに一瞬は戸惑ったもののリーゼは顔を(ほころ)ばせる。


 どこか応援したくなる。そんな雰囲気を持つユノにリーゼはアドバイスを投げかける。


 「……ユノさんは弱くないと思いますよ」


 顔を上げたユノと目が合う。


 「冒険者は皆さん最初はFランクからのスタートです」


 「『力』や『防御』などのステータスこそ一般的なFランクの冒険者と変わりませんが、『敏捷』や『魔力』の能力値はDランクの冒険者にも引けをとりません」


 「それに普通の方は『能力(アビリティ)』を最初は一つしか持ちません」


 「おそらくユノさんの【勇気の証メメント・オブ・ブレイブ】は固有アビリティでしょう」


 Dランクのものであるが珍しいとリーゼは言う。


 「――少なくともユノさんは冒険者に適性がありますよ」


 彼女は、僕の手に持つステータスプレートをひょいとつまみ笑顔でそう言った。


 かわいい。


 しかしすぐに怪訝(けげん)そうな顔をする。


 「ん?一番下の■は何でしょうか……」


 僕もそれに気付き、一緒にステータスプレートを眺める。


 「……もしかしたら印刷ミスかもしれないのでもう1回ギルド(うち)で作り直させてください」


 ステータスプレートは大切なものですから。とリーゼは言った。


 ユノはそれを快諾すると彼女にこう提案する。


 「あの… 作り直している間、装備を見てきてもいいですか……?」


 「はい。いいですよ!」


 リーゼの承諾(しょうだく)を得るとユノは笑顔でギルドを飛び出していった。


 「……ちょっと可愛かったなあ」


 リーゼは自分とほとんど同じ身長の少年の背中を見て、ぼそっとつぶやいた。



気づいたら時間が溶けてる…

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