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9.メインヒロインはもちろん……

 レイジはまた路地裏へと立ち入った。


「おっ!」


 そうしたら案の定、お目当ての人物に遭遇する。

 こちらに背を向けて突っ立つバーネットを発見した


「やっぱりバーネットじゃないか、こんなとこでどうしたんだ?」


 こんな人気のない場所に、女性一人で入るのは危険である。

 この街の治安は悪くはないが、決して良いわけではない。

 だからもう少し警戒して欲しいところ。

 レイジは何度もまぐわったよしみでそう注意してあげた。


「何か探し物か? ゴミしか落ちてないが……」


 相手の言葉に、バーネットは無言で返す。


「違うのか?……ってことは……」


 レイジは立ったまま考える人のポーズをして、


 ポンッ!


「ひょっとして俺を探してたのか? そうか! バーネット、お前もか!」


 なぜそうなるのだろうか。

 この男の頭はヒヨコ並みにお気楽である。


「そうかそうか! いや~、ちょうど何か物足りないと思ってたんだ」


 実は自分もお前のことを探していた。

 そう言って、勝手に話しを進めるレイジ。

 女性に対する気遣いがまるでなっていない。


「なんつーかな~。アイツらじゃ刺激というか、俺の求めてたモノとはなんか違うというか……」


 あの2人はハーレム要員として申し分ない。

 だが、メインとしてはちょっと欠ける。

 メインヒロインと言えば、やはりツンデレ。

 やや男勝りでツン増し増しのツンデレ。


 良い感じに、定期的に罵ってくれる存在、一筋縄ではいかないあの感じ。

 澄まし顔でデレてくる姿には、たまらないモノがある。

 そうだ、足りないのは可愛さではなく、美しさと強さを兼ね備えたツンデレ枠だったのだ。


「やっぱりお前も昨日のことが忘れられなかったんだろ、おお? あんなに盛り上がってたもんな!」


 相性だって色々とピッタリだ。


「どうだバーネット、俺のところに来ないか?」


 そうと決まればさっそく、レイジは新しいパーティに勧誘する。

 加入するのならば特別に、センター、正妻、メインヒロインにしてあげるそうだ


「お前って女好きだろ? 男は俺以外に入れる気はないからな、案外悪かないと思うんだよ」


 バーネットは無言。


「ちょうど今ベッドを探しててな。どうだ? アイツらと一緒に選んできちゃくれないか?」


 さらに大きなベッドが必要になりそうだ。

 今夜はバーネットを入れて〇P。

 そう思うと夜が待ち遠しくなってくる。 


 この男はもはや何も隠してない、欲望全開であった


「…………」


 しかし、バーネットに相変わらず返事はない。

 レイジが何を言ってもまるで反応がない。


「なんだよ、まだ怒ってんのか」


 そんな彼女の冷たい態度に、レイジは不満になって近づこうとする。


「おい、何とか言ったらどうだ」


 そのまま相手の肩を、グイッ。


 しかし、ブチュッ


「ッ⁉」


 レイジはギョッとした。


 掴んだ手が身体に食い込んだのだ。

 肩骨の独特的な硬さはなく、指がイヤな音を立てて簡単に入ってしまった。

 まるでトマトを潰した時のような感覚に近い。 


「うおっ⁉」


 気持ち悪い、たまらず手を放す。


「…………」


 バーネットが顔を半分だけ振り向く。


「なっ……⁉」


 レイジはまたも言葉を失った。


 ポタッ……ポタッ……

 

 額からかなりの血が流れている。

 だが、それよりも瞳の方に目が行ってしまう。

 彼女の宝石は輝きを失っていた。

 虚ろな色をしており、生気をまるで感じられない。


「ど、どうしたんだ、そのケガ……嘘だろ……」


 よく見ると顔だけではなく、全身がボロボロ。

 至るところから出血が見られる。かなりの重症だ。


 マズいことは一目で分かる。

 レイジは迷わず病院へ連れて行こうとしたが、


 グチャッ!


 突然、バーネットの腹部から腕が生えた。


「うおおッ⁉」


 あまりの驚きで、レイジは尻もちをつく。

 勢いよく飛び出した腕により、バーネットから大量の血が噴き出した。


 グチャッ……グチャグチャグチャ……グチャッ


 その腕が動いている。

 細くて青白い、血で真っ赤に染まる腕が、外に出ようと足掻いている。


「あ……ああ……あ……」


 何が起きてるのか分からない。

 レイジは目の前で起きる怪奇にただ戦慄し、動くことはおろか瞬きすらままならない。


 ドグシャッ!


 すぐにもう一本の腕も飛び出した。


 二本で腕を使い、脱皮のごとく這い出てくる。


 邪魔な肉は無理やりひきちぎり、周囲に乱雑に投げ捨てる。


 形がどんどん歪になっていく。横に広がっていく。


 ズサッ


 やがて、外側から2つに分かれて崩れ落ちた。

 それは人が倒れた音ではない。

 もっと軽いモノだった。


 ピチャッ


「ひぇっ……」


 まだ生暖かい液体が、レイジの顔に飛び散る。


 そして、中から、血だらけの人間が。


「──あはっ! み~つっけたっ!」


 やや高めの少女めいた声。


「やっと会えたね!」


 それは、明るい金の髪色をした、


「レイジ君!」



 エマコだ。

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