8.ダブルヒロイン登場
翌日、お気楽なレイジといえば、
「よ~し。お前たち、今日は奮発だ。欲しいモノがあったら俺に何でも言うんだぞ」
ただいま街に並ぶ出店でショッピング中。
お連れも2人ほどいるようで、そのどちらも女の子だ。
3人で楽しく何やらお買い物していた。
「で、ですがレイジ様……わ、私は……」
うちの一人がモジモジしている。
「ん? どうした?」
「私は奴隷の身なんです、旦那様に何かをねだるだなんて、恐れ多くて……」
身なりから察するに、彼女は奴隷の出みたいだ。
そういう風に躾けられていたのか、新しい主を警戒しているのか、まだまだ遠慮がちであった。
「だから気にすんなって」
「ですが……」
奴隷っ子はまだ納得してない様子。
このような待遇は初めてなため、頭の中が混乱しているのだ。
しかし、それではいけない。
よって、この素晴らしいご主人様はこう答える。
「はあ……いいか奴隷っ子。よく聞け、確かにお前を奴隷として買いはしたが、俺は別にそういう感じで扱うつもりは全くない」
初めにそう言ったではないか。
「今まで辛かっただろ?」
「っ!」
「これからは多少贅沢に、いや、もっと我がままに生きたっていいはずだ」
「ご……ご主人さまぁ……」
奴隷っ子は身体をプルプルと震わせている。
「ああ、お前はもう奴隷なんかじゃない、自由だ。これから見たいもの、やりたいこと、お前の好きなことを探していけばいい」
「好きなこと、ですか?」
「ああ、俺も全力で協力する。だから安心しろ……なっ?」
「は、はい、うぅ……ありがとう、ございます……」
感動のあまり大粒の涙を流している。
「まっ、俺はお前を逃がすつもりはないけどな」
と、白目をむきたくなるようなセリフを言い、レイジは相手の頭を撫でてあげた
「まずは服だな。さっきから見てただろ? 好きなのを選んできていいぞ」
「っ! は、はい! では選んできます! ご主人様!」
奴隷っ子は笑顔でお洋服コーナーへ向かう。
「フッ」
彼女の後ろを姿を見て、レイジは小さく笑った。
一方、
「はあ~~~~☆」
ジュルリ……、
「おっ、なんだ、お前はそれがいいのか?」
レイジはすぐ近くにいた、獣人族のケモ耳少女に話しかけた。
食べ物コーナーで目をキラキラさせながら、ヨダレを垂らしている。
「はあ~……ニャニャッ⁉ 別に見てないニャ!」
ケモ耳少女はハッと我に返り、すぐに目をそらす。
「遠慮はするなって言っただろ。おっ、これが欲しいのか?」
と言って、レイジは獣人族専用食糧である、焼きトカゲの尻尾を見た。
人が食べたら猛毒で即死、しかも激マズ。
「レイジ! ミャーを子供扱いするニャって、何度もそう言ってるニャ!」
「おー、おー、悪かったよ」
「もう、本当に分かってるニャ!」
ケモ耳はレイジの周りをピョンピョコ跳ねる。
このケモ耳は、レイジが路地裏でたまたま遭遇したケモ耳である。
とある闇の組織から命かながら逃げ出して、行き倒れていたところをレイジが発見した。
試しに食べ物を与えると、えらく懐かれてしまい、このようについてきたのだ。
初めから好感度マックス。
ハーレム要員にケモ耳少女の存在は欠かせない。
というわけで、このケモ耳も仲間に入れることにした。
「ミャーはこう見えてレイジより年上なニャ! 年上は敬うものニャ!」
エッヘン!
ケモ耳はあまりない胸を張って、大人の威厳を見せつけようとする。
「はあー、そうは言われてもな、お姉さんには全く見えないが……」
レイジは少しかがんでケモ耳の良く動くケモ耳をじ~っと見る。
「ニャ~~ッ! またそうやって子供扱いするニャ! 無礼なレイジはこうしてやるニャ!」
ケモ耳は大層プンスカし、爪を立てて飛び掛かろうとしたが、
「ニャッ⁉」
相手に頭を押さえられ止められてしまう。
「おー、やっぱりモフモフだな」
「ニャニャッ⁉ 何するニャ!」
「噂には聞いていたが、想像以上に良い触り心地だ」
レイジはそのまま頭をナデナデする。
「こらレイジ! 手をどけるニャ!」
その手をなんとかどかそうと、ケモ耳は必死に足掻いている。
しかし、
「別に俺の前でくらい、子供でいたっていいんだぜ」
「ニャッ!」
「なんせ俺たちは異種族だ、歳の差なんざ関係ない。それに人間からしたらお前はまだまだ子供の年齢、そうだろ?」
「で、でも……」
ケモ耳の抵抗力がだんだん落ちてきた。そして、
「これからは俺だけに甘えてくれ。俺だけにその笑顔を見せてくれ」
胃にある食べ物が全て出てきそうな、なんとも歯の浮くセリフを言い放つ。
「ふにゃ〜……そう言われると弱いニャ~」
なぜか途端にデレデレしだすケモ耳。
なぜか目を閉じて、気持ちよさそうする。
「ああ、毎日その耳をモフモフさせてくれ」
「ニャ~……」
2人はしばらくニャンニャンする。
出店の前でイチャついているため、周りには本当に良い迷惑であった。
──見ての通り、奴隷っ子、ケモ耳、彼女たちが現在のハーレム要員だ。
バーネットと別れてから、たった一日で2人も集まっていた。
途中でガチムチのナイスガイにも誘われたのだが、残念、生憎レイジにそのような趣味はない。
問答無用、シッシッ、業火で焼き払っておいた。
色々あったが、なんだかんだで絶好調。
なぜか可愛い女の子たちがレイジの元へ続々と集まってくる。
やはりこれもEXスキルとやらのおかげなのか。
とりあえずこの調子で行けば、夢のハーレム生活はまっしぐらだ。
思い描いていたのとなんかちょっと違う気もしなくはないが、流れとしては全然悪くない。
まさしく人生の絶頂、エクストラ。
レイジは有頂天になり笑いが止まらない。
「さて、次はベッドだ。ベッドを探そう」
「ベッド、ですか? 今のでは何かご不満でも?」
不思議そうに首を傾げる奴隷っ子を片目に、レイジはニヤッとして、
「ああ、3人で寝るにはちょいと狭いからな。デカい奴にくら替えするんだよ」
「そ、それって……」
奴隷っ子は顔を赤らめ、両手で押さえている。
「レイジはスケベだニャ〜、女の子にいきなり手を出すのはどうかと思うニャ」
ケモ耳は呆れたという感じで肩をくすめた。
「イヤか?」
「ニャッ⁉︎……い、イヤじゃにゃい……」
またデレた。
「毎晩可愛がってやるよ、2人まとめてな☆」
決まった、レイジはドヤァ!
「はう〜ん、ご主人様〜♡」
「キャー! レイジ〜、だいしゅきニャ~♡」
2人とも目にハートを浮かべて抱きついてくる。
常人には到底理解できない世界が広がっていく。
「よ〜し。今夜は寝かさないからな、覚悟しろよ」
「はい♡」
これは気分が良くなってしまう。
レイジは彼女たちを両腕に抱えて進み出す。
「じゃ、行くか……あっ?」
すると、チラッ
前方にある路地裏に入ろうとする、よく見知った人物が目の端に映る。
「バーネット……?」
一瞬しか見えなかった。
でも間違いない、あの後ろ姿は彼女のモノだ。
「…………」
少し考える素振りをして、
「悪いお前ら、少しここで待っててくれ」
「どうしたニャ、レイジ?」
「ああ、ちょっとな。先に良いのを探しててくれ」
「了解にゃー!」
路地裏へ向かう。