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50.超時空間

「うわあああああ!!!」


 突如として時空の歪みに飲まれた2人。


 彼らはただいま仲良く落ちている真っ最中。

 それはまるで無限に続く螺旋のよう。

 ただ淡々と落下していた。


「わああああ!……おや? ここは一体……?」


 急降下する中、ドジェイルがふと我に返る。

 

 そして辺りを見渡す。

 そこは一面が真っ白な背景。

 周りには大きな鏡のようなモノがいくつもあり、一つ一つに違う景色が映り込んでいる。

 落ち続ける彼らの周りを、数えきれないほど囲んでいた。


「あれは……私?」


 鏡に映る自分自身の姿、それがドジェイルの目に入る。

 彼だけではない。

 レイジの姿もチラホラ見える。


 2人が戦ってる場面。

 彼らが予知合戦を繰り広げている場面。

 EXレイジが暗殺者たちを蹂躙する場面。

 エマコの世界、美少女化したカトリーヌ、etc……。

 これまで体験してきた過去の断片が、鏡の奥からいくつも観測できる。


「ま、まさか……この場所は……」


 そう、ここは何次元も先の果て。

 文明が発展に発展を重ね、ようやくたどり着ける場所。

 おそらく生体のままでは不可能だろう。

 ここまで到達できた者は、まごうことなき生物の頂点を約束される。


 しかし、今の人類にはまだ早すぎる。

 ロクに想像することすらままならない。

 少なくともここに踏み入れるのは1億年以上早い。

 出直してこい、そういう空間である。


「……な、なるほど」


 というのを、いち早く把握する変異者のドジェイル。

 辺りを見るのはもうやめて、今度は仲良く落ちている変異者仲間、レイジの方に顔を向けた。


 そして、


「……レイジさん、ここは一旦休戦しましょう」


 一時的な休戦協定を持ちかけた。


「ッ!」


 いきなり何をほざくか。

 できるワケないだろう。却下だ。

 レイジはさも当然の反応をする。


 だが、ドジェイルは構わず話を続けた。


「よく聞いてください。これは私の力、【限点回帰ダーク・リ・ターン】の能力ではありません」


 いま起きているこの現象は、EXスキルによるモノではない。


「あくまで私の推測の域に過ぎませんが、先ほどあなたのスキルと衝突した時に、おそらく……」


 ドジェイルは落下しながら説明した。

 自分のEXスキル【限点回帰ダーク・リ・ターン】が発動する直前、何を考えたのかレイジも同じようにEXを発動した。

 【天性解除スキルダウト】の能力を考えれば全くもって意味がない行動。

 

 だが、奇しく2つの似た力がぶつかり、混じり合う形となってしまった。

 同程度の、ましてや未知の力が衝突すればどうなるか。

 予測が全くつかない。

 結果はご覧の通りワケの分からないことになっている。


「つまりレイジさん、こうなったのは全部あなたのせいです。はい」


 レイジがとち狂った行動をしなければ、こんなことにはならなかった。

 これは10-0でレイジが悪い。

 ドジェイルはそう言って、責任の是非とやらを勝手に問い始めた。

 

「この際それは良いです。なってしまったモノはもう仕方ないですから。今はとりあえず戻る方法を模索するのが賢明でしょう」


 周りにあるのは、無数に存在するレンズのようにクリアな画面。

 この中のどれかに、元の時間軸に通ずる出口があるはず。

 

 何としてその鏡を見つけだし、いち早く飛び込みたいところ。

 そうすれば同じとは行かなくとも、近い時間軸に戻ることができるだろう。


「2人で探しましょう……いいですか? くれぐれも変な気は起こさないで下さい」


 ドジェイルは一応念を押しておいた。

 ここは慎重になった方がいい。

 余計なことはしてはいけない。

 なぜなら、ここは非常にデリケートでデンジャラスな時の空間。

 場所が場所なため何が起きるのか見当もつかない。


 鏡の中の映像をいくつか見るに、おそらくループしている。

 もう何度か似たような光景を見ているのだ。

 永遠と落ちているように感じるが、その実態はただ繰り返しているだけである。

 

 また、これ以上長居するのも危険。

 何かの拍子でこのループから外れ、さらに取り返しのつかないことになるやもしれない。

 なので、今は互いに元の世界に帰ることだけを考えるべき。

 それが何よりも先決だ。


「まあそもそも、何かしようにも今は互いに干渉できないようですが」


 現在、どちらも武器は所持していない。

 武器の持ち込みは認められていないからだ。

 衣服はまだ辛うじて許されている。

 素っ裸で落ちるといった最悪のケースだけは回避された。


 仮に武器があったとしても、おそらく術は使えないし、直接攻撃も意味を為さないだろう。

 ここはそういう場所、そういう空間だ。


 つまり、協力しかない。


「いいですか……ん? レイジさん?」

「…………」


 が、しかし、レイジ無言、レイジ。


「どうかしました? さっきからだんまりして」


 顔が下の方を向いているため、表情が確認できない


「レイジさん?」


 気分でも悪いのか。

 無理もない。

 ずっと落ち続けているのだから落下酔いの一つもするだろう。


「…………」


 というより、さっきからずっとこんな感じだ。

 説明の辺りからだんまりを決め込んでいる。

 余程辛いのか。

 もう吐き散らす寸前なのか。


「……すみません、今は時間がありません。気分は悪いでしょうけど我慢してください。それくらい、今のあなたになら──」


 とその時、レイジが顔を、ヒョイッ


「なッ⁉」


 瞳の奥に宿る剝き出しの闘志。

 それは暗殺者が対象を仕留める際、直前に全放出する殺気。

 その込められた湿度の高さに、ドジェイルは言葉を失った。

 

 レイジは近くにあった”時空の破片”を掴み取り、


 ブシュッ!


 ドジェイルの脇腹に思いっきりぶっ刺した。


「おごッ⁉ ああああああああ!!!!」


 汚い絶叫音が空間全体に響き渡る。

 重力の関係でドジェイルの血が上へ昇っていく。

 近くにあった鏡にビチャッと飛び散り、画面の中に滲むように入っていく。


「~~ッ! い、いきなりなにを⁉ かはっ⁉」


 ドジェイルは派手に吐血。 

 その汚れた数滴が、レイジの顔に飛びかかる。


「レイジさんあなたッ! 正気ですか⁉ 今ここで私を殺して、一体どうなると言うのですか⁉」


 いま戦っている場合ではない。

 ドジェイルは声を荒げながらにそう訴えた。


 仮にこの空間からレイジだけが帰還できたとして、いずれ過去や未来、前後の時間軸からドジェイルが戻ってくる可能性だってある。

 そうなれば、事態はさらにややこしくなる。

 時系列やなんやらがグチャグチャになってしまう。


 第一に、1人勝手に選択して間違ってしまい、全く異なる時間軸に出てしまった場合どうなるか。

 もう一生帰れない。

 絶古代とか、超未来とか、どの時代に飛ばされるか分かったモノではない。

 そうならないよう、2人で吟味して慎重に選ぶべき


「だから協力しろと言っているのですッ! 万が一違ったら一巻の終わりなのですよ⁉」


 人が善意でせっかく教えてあげたのに。

 それをあろうことか、この男は攻撃という形で踏みにじってきた。

 ドジェイルは怒りと痛みで震えがあがる。


「……ッ!」


 一方、ここに来てもあくまで冷静なレイジ。


 ドジェイルの誤算。

 それはレイジにはもう後がないということ。

 どの道EXの代償で長くはない。

 だから今更どうなろうと関係ない。

 どこにいようとも、真っ逆さまに落ちていようとも、やることは依然として変わらないのだ。


 ちなみに、この空間では術もそうだが、スキルの類は一切発動できない。

 全ての使用を制限される、例外はない。

 ここはEXすらも超越した不可侵領域。


 つまり、今このドジェイルを殺しても、彼のEXスキル【限点回帰ダーク・リ・ターン】が発動することはない。

 むしろこの場所こそが、この男を仕留める絶好のチャンスなのだ。


 それが分かっているというのか。

 理解した上での行動なのか。

 EXレイジはこの機を逃さない。

 そうだ、共に時空間のオブジェとなろうではないか


「うげえええ!!!」


 ブシュッ、脇腹に突き刺さった破片を引っこ抜く。


「ゴホッ⁉ ならもういいですッ! あなたなんてここで死んでしまえばいい!」


 激昂したドジェイルの反撃。

 レイジと同じく近くにあった”時空の破片”を手に取り、そのままレイジの首めがけてぶっ刺そうとした。


 しかし、ガシッ! 

 レイジはすかさず手の甲を前に出してガード。

 破片の刃が骨を貫くも、首元ギリギリでストップさせた。


「ッ⁉︎」


 そして、すかさずもう一突き、ブシュウウウ!!!


「ああああああああ!!!」


 ドジェイルの反対側の横腹に突き刺さる。

 左右両方から多量の血が噴き出してくる。 


「あああああ!!! 死ぬ! 死ぬ! ドジェイル死んじゃううううう!!!」


 空中でジタバタするドジェイル。


「…………」


 この汚声を聞くのもそろそろ飽きてきた。

 レイジ的には一刻も早くズタズタに引き裂いてやりたいところ。

 しかし、空中だと動きを大幅に制限され、思うようにいかない。


 要所要所で細かい動作の調整が要求される。

 これが中々に難しい。

 全身が重力に阻害される。


「……ッ」


 そうこうしている間にも、また肉体が……。

 レイジは最後の一撃に難航していた。


 シュンッ


 とその刹那、彼の研ぎ澄まされた感覚が、一瞬スローに。

 

 目を向けた先、そこには一つの鏡が。

 鏡の中にいる一人の女が、レイジの目の端に映り込む。


「ッ!」


 それはよく見知った人物の背中。

 綺麗な黒髪をなびかせ、揃えられた黒を基調とした特徴的な軽装。

 肌の露出はやや少なめ。

 だがそれが返って身体の──

 

 ──彼女がこちらを少し振り返る。

 そこには滑らかに輝く黄金が見えた。


「ああああああ! い・た・いいいいい!!!」


 レイジはその鏡へ、ドジェイルの襟を掴んで、


「…………」


 あとは、任せた・・・



 飛び込んだ。

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