43.レイジング無双
レイジの放った強烈な一撃。
「な……ッ⁉」
それに晒されたドジェイルは、目を丸くした。
おまけに、てっぺんの毛髪を持っていかれたので、少しハゲて見える。
「い、今のは一体? スキル、なのですか?」
小さな剣から生成された巨大な紫電の塔。
たった一振りで、雇った暗殺者たちが全滅。
少なくとも彼の目にはそう映っている。
だが、頭が、脳がそれを理解しようとしない。
ドジェイルは動揺の色を隠すことができない。
「…………」
一方、混乱している相手とは違い、静かに佇むレイジ。
コレもMPの残骸なのか。
手に持つ短剣が何かバチッと鋭い音を立てている。
そのまま前を向き、敵を、ギロッ
「ッ⁉ ひいいっ……⁉」
──サッ!
突然、黒い影が。
ドジェイルの情けない声が漏れたと同時に、レイジの背後から刺客が出現。
これは要請を受けてやってきた隣街の暗殺者。
増援。
頼もしい、ようやく駆けつけてくれた。
そのまま背中からの奇襲。だが、
「──スキル【幻楼霧】」
急にレイジの身体が薄くなる。
暗殺者の一撃が当たると同時に、フワッと蜃気楼のように分散。
砂塵となってその場から消え去った。
「ッ⁉」
捉えたはずの暗殺対象が、こつぜんと姿を消した。
暗殺者はさも戸惑った感じで辺りを見回す。
しかし、そこに、
「──閃波」
見えない角度からの斬撃
あっけない。ブシュッ
暗殺者は肩からわき腹にかけて血を吹き出し、バタリと倒れてしまった。
背後にいたのはレイジ。
スキルと思わしきモノで回避したあと、素早く後ろに回っていたのか。
よく分からないがそう視るしかない。
「…………」
仕留めた敵を表情一つ変えずに、どこか冷たい感じで見下ろしている。
だが、それはほんの数秒の出来事。
シュンッ、シュンッ、シュンッ!
今度は3人。
3人の暗殺者が現れ、同時に襲い掛かってきた。
言うまでもなく背後からだ。
「っ!」
レイジはすぐに振り返り、ただちにそれらと応戦。
そのまま3対1の乱闘──いや、どんどん数を増していく。
黒フードたちが続々と集まってくる。
古今東西、ありとあらゆる方角から暗殺者たちが襲い掛かってくる。
しかし、レイジも負けてはいない。
いや、むしろこの多勢を前にして……。
迫りくる暗殺者の攻撃を、危なげなく冷静にかわす。
全ての斬撃、その軌道までも詳細に視えている。
暗殺者たちの短剣が虚しく空を切る。
ザシュッ
スキを見せたヤツから、はたまた動きの鈍い者を見定め、一人ずつ的確に排除していく。
次々と集結する暗殺者たちだが、その乱闘数はさして変わらない。
出てきたそばから殺されるのだ。
彼らからしたら無駄死にも同然である。
前回の死闘でコツを掴んだのか、あるいは学習したのか。
それを考慮してもこの死神の如き戦いぶり。
もはや全く知らない別人のようであった。
やがて、
「ッ!」
流石に厳しくなってきたか。
暗殺者たちの数にモノを言わせた戦術が勝ってきた
レイジは徐々に後方に追いやれていき、防戦気味になっていく。
「──結盾」
盾を張るも、少し遅れた。
暗殺者の一撃が肩をかすめてブシュッとなる。
「…………」
しかし、レイジの表情に一切の変化はない。
負傷したというのに、まず出てくるはずの痛がる素振りがない。
「──スキル【灰狼煙】」
戦況が劣勢になったとみるや、すかさずスキルを発動。
文字通り灰色の煙を地面にぶちまけ、辺り一面をシャットアウトさせた。
ボワーンッ!
白煙があっという間に広がる。
暗殺者たちの視界は閉ざされてしまう。
少しでも動きを見せれば、灰の乱れで特定されるだろう。
よって迂闊に動くことができない。
それにこういう時は、相手が行動に出るまで待った方がいい。
なので暗殺者たちは聴覚と視覚を研ぎ澄ます。
「──スキル【暗視】」
だが、盲点。
今のレイジには上記のスキルがある。
つまり、一人だけ全部視えている。
スキル【視界拡張】で全体を真上から、手に取るように分かっているのだ。
【炎魔】
両手に宿りし高温のエネルギー。
それを放ち、周囲を地獄に変えた。
付近にいた者の下半身は溶け崩れ、すぐに上半身も、やがて地面と一体化する。
【風天】
大気で生成された見えない刃、無数の斬撃が暗殺者たちの首を跳ね飛ばす。
透明の刃が血の色を帯びていく。
生首大量製造器。
【雷王】 【土剛】 【闇壊】
「──波動」
様々な属性を付与した高位の術を連発。
そのどれもが最強格に位置する属性系スキル。
暗殺者たちは為すすべもなく、無慈悲に殲滅されていく。
何が起こっているのか、一体どうすればいいのか。
彼らには何も分からない。
なにせ、唯一の頼りである聴覚は、仲間の断末魔で塞がれているのだから。
まさに無双状態、レイジの独壇場、凄惨な殺戮ショー。
もはや戦いと呼べるモノではなかった。
逃亡を図ることすら叶わない。
全てを葬り去るまでは終わらない。
そのような冷徹な意思が、空間全体を完全に支配する。
その姿は、まるで……
「…………」
一方、高台にいる一人の黒フード。
同業の悲惨な光景を、遠くから双眼鏡でじっと観察する暗殺者。
一人だけ安全地帯に身を潜めている。
舞い上がる灰からおおよその位置を特定。
ただちに標的に狙いを定め、カチッ、狙撃態勢に入る。
……が、
「──【天性解除】」
スキル【感覚強化】で殺気をいち早く探知したレイジが、
「ッ⁉」
その距離から直接、狙撃タイプの力を封殺。
「──【狙撃手】」
炎の弾丸を発射。
一瞬で焼き払う。
直前に奪った能力と【業火】を組み合わせ、逆に狙い撃ちした。
200メートルほど先にある高台に爆炎が立ち昇る。
ドサッ
「…………」
殲滅した。




