33.決着
ドジェイルがいきなりぶちかます。
そして、自分ごとレイジを巻き込んできた。
「ゲホッゲホッゲホッ……くっ、くそッ!」
レイジ。
爆発の中から飛び出したレイジ。
早めに離脱したが、それでもダメージは避けられない。
全身の火傷がさらに酷い状態である。
「フッ、間一髪のところで逃れましたか」
一方、ドジェイル。
爆心地からすす汚れたドジェイルの姿が。
盾を張っている。
どうやら術をかました後に、素早く盾を出して身を守っていたようだ。
だが、それでも負傷は隠せない。
所々が焼け焦げている。
「いいえ! これくらいのリスク、勝利を得るためには覚悟の上です!」
ドヤァ!
「ですがこれで私の距離です! 行きなさい! 放弾!」
仕切り直し。
再びドジェイルのターン。
離れた相手を光弾で追撃した。
「くっ!」
レイジは地面に足をつけた。
と同時に、素早く盾を張り、敵の攻撃を防ぐ。
数発守った後に、今度は横軸に移動して躱しだす。
「チッ、アイツの頭はどうなってんだ⁉」
相手は至近距離から術を放ち、自分ごと巻き込んできた。
いわば自爆に近い行為である。
エマコの時もそうだが、自分の命なんてまるでお構いなしの行動。
狂っている、頭がおかしすぎる。
変異者とはこういうのばかりなのか。
そう思い、同じく該当者のレイジは苛立ちが大きくなる。
「放弾! 放弾!」
さらにショット!
ドジェイルは杖を振り回し、お得意の術を唱えまくっている。
「おおおお! ショショショショットオオ!!!」
一度大きく溜めて、5連弾!
少しリズムカルに、おかしなCのポーズで発射する。
これでも本人的には、最高に決まっていると思っている。
かもしれない。
「チッ、うっとおしい!」
迫りくる弾幕の嵐。
レイジは左手の業火であっさりと薙ぎ払う。
そして、すぐにまた接近を試みる。
悠長に躱してはいられない。
近づいたところで、先ほどのように自爆してくる可能性もあるが、もうそうは言っていられない。
そうだ。
とにかく今は早く接近しなくては。
さもないと、そろそろまた、アレが──
「──溜まりました! 待ちに待った”究極”の時間です!」
間に合わなかった。
ドジェイルの奥義の再装填が完了。
ヒョイッ! 杖を真上に大きく掲げた。
「では再び見せてあげましょう! 我がMPの究極を!」
「ッ⁉ よ、よせ!」
無情にもレイジの言葉は届かない。
杖の丸っこい部分に光がみるみる集約されていく。
その3つ輝きが空色のベールとなり、綺麗に一つに巻かれていく。
「くっ、まずい」
レイジはすごい焦る。
今度は急いでここから離れなくては。
ここまで接近したことが逆に仇となってしまった。
「もう遅いですッ! 今から逃げてどうにかなる距離ではありませんッ!」
レイジは死ぬしかない。
そう思い、ドジェイルは標的にロックオン、
「さあ、華々しく散りなさい! これから巻き起こる爆炎と共に!」
シュウィイイイインッ! そして、
「食らいなさい! 超弾!」
無数と錯覚するほどのエネルギー。
それを一斉掃射。
おびただしい数の光弾が滑らかな軌道を描く。
それはまるで魂のよう。
一つ一つに意思があるかの如く、決して無視できない速度で、レイジへと向かっていく。
「ッ⁉ うおおおおお! 業火ッ! 俺を守れえええ!!!」
これはヤバい。
レイジは両手の炎を前にかざし、迎撃態勢に入る。
体内にあるMPを全て絞り出してスキルに変換。
必死の形相で、声をあげて撃ち合い出した。
「うおおおおお!!!」
両者の中間地点で絶えず起こり続ける爆発。
分散したMPと炎の欠片が、流れ弾となって周囲に飛び散っていく。
見る見るうちに破壊されていく辺り一帯の建物。
激しい撃ち合いの最中、【業火】が相対する【超弾】を何とか食い止めていた。
「ほーう、これを耐えてきますか。いえ、思ったより中々」
ドジェイルが話しかけてきた。
バババババババッ!
しかし、今のレイジに答える余裕はない。
「それにしてもあなたの【業火】、とても厄介なスキルですね。なんせ正面からの攻撃は全て撃ち消されてしまうのですから」
こんな時に相手のスキルを賞賛し出すドジェイル。
「くっ⁉︎」
だが、今のレイジには何も耳に入らない。
対処するの精一杯。
とりあえず今は黙っていて欲しい。
と、思っていたが、
「──では、2方向からの攻撃ではどうですか?」
聞こえた。
ニチャリ、ドジェイルの決め──キモ顔。
「ッ⁉」
「気づきませんか? 先ほどより数が少ないことに、超弾の弾数が足りてないことに!」
「なにッ⁉」
言われてみると確かに……。
超弾とは本来、真正面から撃ち合って耐えられるほど甘いモノではない。
並みの冒険者程度では、簡単には使えない上位の術。
レイジはとっくに死んでいるはずだ。
「前回あなたのお仲間、女暗殺者さんとの戦いで学びました。攻撃とはただ行うだけではないと言うことを!」
時にはフェイントを織り交ぜる。
目くらましとか、とにかく相手の不意を突くこと。
「力だけでねじ伏せるのではなく、戦略で相手を切り崩す。それが戦いの醍醐味というモノです!」
このドジェイルは勝手にそう学習していた。
「そして! それはすでに実行しています!」
人差し指をピンッ!
その言動と共に、レイジの足場から黒く丸い影が、ポツポツポツポツポツ
「ッ⁉ まさかっ⁉」
反射的に上を見るレイジ。
すると、空から大量の光弾が、流星群のように、自身に向かい差し迫っていた。
「なッ⁉」
「そうです! 前か上か、どちらを防ぐかはあなたの自由!」
特別に好きな方を選ばせてあげよう。
なに、このドジェイルは慈悲深い。
「さあ、フィナーレの時間です! 我が極限を食らって地獄に落ちなさい!」
「クソッ! うおおおおッ!!!」
レイジにはもうスベが、対処する気力が残されていない。
あるのは絶叫だけであった。
彼の汚い断末魔と共に、無数の光が一斉に着弾。
レイジの突っ立っていた場所から、半径20メートルほどがその爆炎に覆われ、瞬く間に周囲に広がっていく。
今日一番の巨大な爆音が鳴り響く。
その音は近くにいた住民たちがたまらず耳を塞ぐほど。
ついにはぶっとい耳栓をして、雑音を遮断する強者まで現れる始末。
「おっと、これは危ない。結盾」
ドジェイルは巻き込まれないよう盾を張って自身を守る。
狭い路地裏全体が、発生した黒煙に包まれた。
「少し火力オーバーでしたかねえ、やはり超弾は加減が難しい」
しばらくそのまま待機、
やがて、
「──ハア……ハア……」
引いた煙から、ボロボロのレイジが、
「……くっ」
現れた。




