31.冒険者の衝突
「ぶっ殺すッ! 衝撃!」
レイジが短剣に光を纏い、襲い掛かる。
「殺しますッ! 衝撃!」
対して、ドジェイルも杖にMPを溜め、術を発動。
ガキンッ!
互いの武器がぶつかり、弾けるような鈍い音が辺りに拡散された。
両者の間から異なる色の火花が発生、2つが互いに押し合おうとする。
「許しません! あなただけは! 絶対にッ!」
レイジみたいな、特に自分を見下してくるような人種は大嫌いだ。
怒りのあまり、元から酷かったドジェイルの顔がさらに歪んでしまう。
「くっ⁉︎ コ、コイツ⁉︎」
彼の怒りが勝ったか。
杖に集中する光源が大きくなり、その力を増幅させた。
レイジの短剣を持つ手がグググと震え始める。
「チッ!」
不意打ちは失敗。
競り合いを切って、一度距離を取る。
そして今度は、短剣をバッと前にかざし、標的に狙いをさだめた。
ギュルルルル!
「──放弾!」
レイジは術による緑の弾丸を放つ。
3つの光が対象にバラバラで突っ込んでいく。
「──結盾!」
ドジェイルが瞬時に盾を構えた。
レイジの放った光弾が、激硬ゼリーにぶつかった時のように、バインと音を立てる。
そのまま周囲に弾けながら消滅。
「お返しです!」
全部ガードした。反撃の時間。
ドジェイルはすぐに杖の先端、円形の部分に光を集中させた。
「──放弾!」
すかさず同様の術でやり返した。
「くっ!」
レイジの方は盾を張らず、避けることを選択。
相手の攻撃をそれっぽい身のこなしで躱し始めた。
「──放弾!」
ある程度見切ると、今度は自身も術で応戦。
そのまま両者は遠距離で撃ち合い出した。
「くらえッ!」
レイジは躱しつつ、余裕が出来次第に迎撃。
「──結盾! 放弾! ううううう〜、ショショショウォール!」
対して、ドジェイルは杖を振り回す。
盾と光弾を交互にせわしなく使用している。
バシュンッ!
互いの術が衝突。
すると、レイジの弾丸が押し負け、弾けるように爆散。
「チッ!」
威力が落ちずに向かってくるドジェイルの弾丸。
レイジは一旦反撃の手を止め、回避に専念する。
「くっ! 刀波!」
たまにどうしても無理そうなヤツが出てくる。
そういう時は短剣に鋭利な光を纏い、術を強引にはたき落とす。
「ハーッ! どうしました! 逃げるだけでは勝てませんよ!」
術を連発しまくるドジェイル。
消耗などまるで考えていないといったご様子。
無尽蔵にぶっ放している。
「どうやらMPは私の方が高いようですね!」
「チッ、うっとおしい!」
攻撃を弾いた、レイジの短剣を持つ左手に痛みが走る。
完全に相殺することはできない。
この弾幕の中を無理やり進むのは良くない。
一発でも当ると崩され、そこから一気に砲撃の的にされるだろう。
となれば、ここは相手がMP切れを起こすまで逃げ続ける。
エネルギーを使い果たしたが最後、一瞬で接近し、術で身動きを止める。
それが良い。
それがレイジの即興で考えた策。
少々厳しいが無理ではない。
というか、今のところそれしか思いつかない。
最後まで凌ぎ切れるか、それとも避けれらず爆散するか。
どうやらこれはそういう戦いらしい。
「……と、そう考えてはいませんか?」
「っ⁉」
相手の反応に、ドジェイルはニヤリ。
「また随分とお気楽ですね。残念ながらそのような戦いのセオリーは、この私、ドジェイルには通用しない!」
ドヤり気味で術を中断。
今度は両手で杖を持ち、頭上に掲げた。
先端の丸っこい部分に光が、周囲から集まるように収縮されていく。
そのあまりのMP量に戦慄。
術者であるドジェイルの身体までもポツポツと輝きを纏い始めた。
「コイツは……まさか、”超弾”か⁉」
それはまずい。
レイジは発動を阻止すべく、急いで接近しようとしたが、
「ええ、そうです! ですが慌てるのが少々遅い!」
思ったよりチャージが早い。
この距離から見て止めるのは不可能。
よって、ドジェイルは杖をさらに上にあげ、
「見せてあげましょう、我がMPの究極を!」
一瞬まぶしく光ったかと思うと、彼の周りに20~30個ほどの光弾が出現。
「マ、マジかよ……ッ⁉」
レイジはゾッとする。
これらが今から一斉に襲い掛かってくるのだ。
一つ一つに大した威力はないが、何ぶん数が多すぎる。
つまり、集中砲火。
「では死んでください! 超弾!」
ドジェイルが杖を前方に払うと、光たちが術者の命令に従い、
ボワボワボワボワ!
一斉に突っ込んでいく。
大量の光弾がレイジの元へと向かう。
その動きは放弾の時と違い、ふんわりと円を描きそうな軌道。
これがまた避けにくさの要因となっている。
それが数十個もあるのだ。
「躱すことは不可能です!」
「くっ⁉」
バシュンッ! バンッ! バンッ! バーンッ!
レイジのいた場所に全て着弾。
彼の身体はあっという間に光に呑まれてしまう。
小さな爆発が重なっていき、大規模なモノへと変わっていく。
それは、普段何かと無関心な街の住民たちが一斉に振り返るほど。
皆がビクッとするくらい大きな音であった。
発生した黒煙が路地裏全体に広がっていき、やがて表通りまで及んでいく。
「2連勝!……いえ、これまでを合わせると7連勝くらいですかね」
先に現れたのは、術者であるドジェイルだ。
襲ってきた刺客からまたも勝利を飾ってしまった。
今回はEXスキルを使わずして、実力のみでねじ伏せてしまった。
強すぎる。最強。無双状態ではないか。
こんなの、ドジェイルは気分が良くなってしまう。
「敗北を知りたいです……さて、最後に遺体だけは確認しておきましょう」
必要はないと思うが、一応死んだかどうか見ておこう。
その方がより勝利の余韻に浸ることができると言うモノ。
そう思い、ドジェイルは目をパチクリする。
やがて臭い煙が引いていき、辺りが可視化できるように。
「これで見納めです」
ワクワク。ドジェイルは相手の無様になった死骸を期待したが、
「──スキル【業火】」
バサッと過ぎ去る煙。
その奥から、鮮やかな色を成した、炎
レイジが、
「…………」
現れた。




