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27.回帰、買物

 突如、アイナの腹部から杖が突出。


「かはっ……」


 これは致命傷。

 

 ポタ……ポタ……


 強制的に吐かされた大量の血液が、顎から下へと流れていく。


「うっ、くっ……なん、なの……」


 想像がつかないほどの痛み。

 その中でも、刺さった態勢の中でも、アイナは後ろを向いて、何が起きたのかを確認しようと……。


「フッフッフッフッ」


 聞き覚えのない変な笑い声。


「っ!」


 背後に人がいた。

 それは先ほど殺したばかりの男、変異者のドジェイルであった。

 彼のキモいキモ顔。

 確かに死んだはずなのに、なぜか生きている。


「フッフッフ、初めまして。綺麗な女暗殺者さん」


 跳ね飛ばした首が綺麗に繋がっている。

 商店街の時と同様、一切の傷が見られない。

 また、細切れとなった彼の死体も、いつの間にか消えている。

 暗殺者のアイナでも感知できないほどの速さで背後に回っていた。


「くっ……ごぼっ……」


 い、いつの間に……。

 全く気づけなかった。

 アイナは歯を食いしばってこらえることしかできない。


「ようやく、ええ、ようやく、です。随分と手こずらせてくれましたね」


 何度も失敗した。

 だが長い苦労の末に、やっとここまで辿り着くことができた。

 まるで難易度の高い山を踏破したかのような達成感


「あ……あなた……は……い、一体……」

「おや? 状況が飲み込めないといった顔ですね。まあそうなるのも無理ないでしょう」


 この能力の前では、皆同じような反応をする。

 訳も分からないまま皆同じように死んでいく。

 そう言って、勝ち誇った顔のドジェイル。

 

 グリュッ!


「うぐっ……」


 杖を引き抜いた。


 アイナは2、3歩、ヨロヨロとその場をふらつき、


 前から倒れてしまった。


「はあ……はあ………」


 震えが止まらない。

 生暖かい血が冷たくなる身体を温めていく。

 呼吸が、意識が、心臓音が、あらゆる機能が薄れていく。

 

 だんだんと、弱くなって……。

 もう助からない。

 自分の死が差し迫っていることが良く分かる。


「もう長くはないでしょう……少し、心残りです」


 始末する前の細やかなお楽しみ。

 そう考えていたドジェイルだったが、これではもう無理そう。

 流血する相手を見下ろしながら、よこしまな感情に入り浸る。


「はあ……はあ……」


 やがて、


「はあ……くっ……」


 アイナは、


「へん……い……しゃ……」


 意識を失った。


「……ようやく片付きましたか。やれやれ、今回は苦戦しましたね」


 大変だった。でも何とかなった。

 これでしばらく襲われることはないだろう。

 そう思い、ドジェイルは揚々と路地裏を後にした。


「…………」


 残された静寂の中、


 ☆


 小さな何かがキラリと光る。







 ──一方その頃、何も知らないレイジと言えば……


「うむむ……コイツは悩ましいぞ……」


 ここはとある防具屋さん。

 品ぞろえは悪くはないが決して良くはない。

 まあまあなお店。

 レイジは現在、ここで商品のラインナップを眺めながら、何やら頭をクネクネさせていた。


「あー、どれするかな~」


 レイジは思い悩む。

 実は、仲間のために防具を買おうと思っている。

 しかし、中々良いモノが見当たらずに困っている。


 本人に黙って購入してもあまり意味がない気が。

 プレゼントか何かでも、防具はちょっとアレ過ぎるような……。


 が、余計な詮索は必要ない。心配ご無用。


「ちょっと過激だな……こういうのはあんまり……」


 もっと控えめで清楚な感じがいい。

 独り言が周囲にだだ漏れであった。


 そう、なぜならレイジのお目当ては、何も実用性のある防具ではない。

 性能なんてどうでもいい。

 大事なのは防具の見た目、そのデザインだけだった


「あー、ビキニアーマーは趣味じゃないんだよな~」


 何も分かっていない。

 やはりこの程度なのか。

 スク水だとか、裸エプロンだとか、総じてゴミ。


「あんなのの一体何が良いんだか……控えめに言って頭がおかしい。たぶんそいつとは一生分かり合えないだろうな」


 レイジは一人コクコクとうなづきつつ、そのような崇高な考えに浸り込んだ。

 

 ご覧通りここは、この武具屋だけに存在すると言われる18禁コーナー。

 そこでレイジは今夜、相手に着させる夜の防具、大人の防具を探していた。

 

「たまにはこういうプレイも悪くない。俺はそう思うんだよ」


 ずっと同じでは飽きてしまう。

 そろそろ行為にマンネリ感が漂ってくる今日この頃。

 盛りあがるためには何か工夫が必要。


 よって、まずは形から変えていこうというワケだ。

 それに案外、彼女もノリノリで応じてくれるかもしれない。


「あの日中の態度はどうもいただけないが、その反動か、夜では考えれないくらい解放的だからな」


 立場完全逆転。

 昼間の澄まし顔からは想像もつかない。

 どんなプレイにも付き合ってくれる〇〇女へと変貌する。


 レイジの歪みきった〇癖をこれでもかとぶっ刺してくる。

 だからきっと……。

 レイジは夜がさらに待ち遠しくなる。


「お、おお……こ、こいつは……!」


 やがて、見つけたみたいだ。


 レイジは雷に撃たれたような顔で、棚に飾ってあるメイド服を手にかけた。

 露骨感のない自然なデザイン。

 それは彼の好みに非常にマッチしている。

 通常の物よりも軽く、また安い素材で出来ている。

 つまり、そういった用途で使用する特殊なモノであった。


 ゴ、ゴクリ……。


 なぜこんな物がここに置いてあるのかは不明。

 だがそんなのはほんの些細なこと。

 素晴らしい、今夜はご主人様プレイ。


「うっ……まずい……っ!」


 ダメだ。

 考えると夜まで持たない。

 レイジは早くも活発になっていく。


 次の瞬間、


 ピーン……。


 頭に何か糸のような一本線が流れた。


「ん? なんだ今の……?」


 おかげで我に返る。

 一瞬、何かに呼ばれたような気がした。

 良く分からないが知ってるような、そんな感覚だった。


 レイジは背後を振り向く。


 すぐに向き直して、疑似メイド服を、チラッ


「…………」


 お店を出た。







 ──防具屋を後にしたレイジ。

 彼は現在、街中をやや早歩きで動いていた。

 いま自分がどこに向かっているのか分からない。

 だが目的がハッキリしているような、迷いなく進んでいる感じ。

 まるで亡霊にでも誘われるかのように移動していた


 やがて、レイジは路地へと進行方向を変える。


「なッ⁉」


 すると、入ったすぐ出先で、衝撃的な光景に見舞われた。

 レイジはたまらず足を止める。


 そこにあったのは、


「嘘……だろ……」


 見知った人物の、惨劇。


「アイ……ナ……」



 絶句した。

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