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23.マセガキ、ドレイジ

 そして5日後。

 チュンチュン、チュンチュン

 みんなが起きる時間。


「あ~~~~」


 これはレイジ。

 ただのレイジ。

 だらしないあくびをしながら、いつもと変わらない朝を迎える。

 ポリポリポリポリ。


 まずはカーテンを開けて窓を見る。

 そこから朝の眩しい日の光が差し込んでくる。

 まだ未解明の鳥たちが、群れを成して飛びまわっている。


「…………」


 今日は特にやることもない。

 と言っても、今のレイジにとっては毎日がお休みたいなモノ。

 毎日がエブリデイ。

 お金が有り余っているため、働く必要が全くないのだ。

 よって、昨夜の疲れを取るために二度寝を決め込もうとしたが、


 コンコンッ


 ドアを小さく叩く音がする。


「ん~~っ!」


 ギギギィー、可愛らしい声。

 ドアが一人でに開く。


「おはよっ! あさ! よるのおにいさん!」


 そして、ドアノブの辺りからヒョコリ。

 まだ幼い少女が顔だけを出してきた。


 宿屋の店主の娘だ。

 詰め寄ってくるレイジを追い返すべく、パパと共謀した非常に賢い娘だった。

 

 パパに言われてお客さんを起こしに来たのだ。


「う~ん……もう一泊……」


 幼女の高い声は寝起きに悪い。

 レイジは布団をかぶり、迷惑そうにする。


「ダメ~! 朝ごはん出来てるの! 早く起きないと冷めちゃうの~!」

 

 だが、この幼女にそれは通じない。

 急にレイジの上に乗っかり、ユサユサと揺らし始めた。


「早く起きて~! ねえ~、よるのおにいさ~ん!」

「あー、わかったわかった。悪かった、お兄さんが悪かったから」


 ここまでされては起きないわけにいかない。

 夜のお兄さんは身体をゆっくりと起こし、目の前にいる幼女を見た。


「で、なんで俺は『よるのおにいさん』なんだ?」


 なんか引っ掛かる呼び方。レイジが尋ねた。


「んーとね、それはね。パパが言ってたから!」

 

 夜になると、レイジの部屋は何やらお取込み中でうるさくなる。

 とても迷惑な客。

 なので、親しみを込めてそう呼ぶことにしたそうだ


 ちなみに、常連のお客さんたちの間でもそれが流行している。

 幼女は無邪気な感じで答えた。


「くっ……あのクソ店主……」


 自分の娘になんてことを教えやがる。

 あの店主のドヤ顔が頭に浮かび、レイジはイラっとした。


「どうしたの? よるのおにいさん?」

「…………」


 幼女はキョトンなご様子。

 悪意がない分余計にくるモノがある。


「……いや、何でもない。それより起こしてくれてありがとな、まだ小さいのに偉いな」

「えへへへ! そうかな~!」

「ああ、パパと違ってしっかりしてるぞ」


 と言って、レイジは幼女の柔らかい頭をナデナデ。

 年上のお兄さんとして、それっぽく良い感じに褒めている。


「えへへへ~」

 

 夜のお兄さんに褒められるとつい照れてしまう。

 幼女は頭を撫でられながら嬉しそうに、


 が、しかし、


「触んないで!」


 パシッ、急にレイジの手を力強くふり払う。


「へっ……?」

「もう! ちゃんと起こしたよ! アティチはあなたと違って忙しいの! パパのお手伝いがあるからもう行くね!」

 

 と言って、


「フンッ!」


 重たいドアなどもろともせず、バンッ! 勢いよく閉じる。

 そのまま部屋から出て行った。


「……えっ」


 マセガキだった。







 ──その後、まあまあな朝食を終えたレイジ。

 とりあえず暇なので外をお散歩していた。


 しばらく歩いていると、


「んん? あの尻は……おっ!」


 前方によく見知った人物を発見する。


 それは綺麗な黒髪になびかせる、スレンダーな感じの後ろ姿。

 あの眼帯をつけた女だ。


 スタタタタタタタ


 レイジは早足で女のところまで駆け寄り、


「よお、アイナ。こんなとこで何してるんだ?」


 ポン、馴れ馴れしく相手の肩に手を置いた。


「気安く触らないで」


 女はすぐにその穢らわしい手を払いのける。


「なんだよ、つれないな。昨日はあんなに盛り上がってたじゃないか」


 昨夜はお楽しみだった。

 思い出すとまた……うっ。

 レイジが活発になっていく。


「朝からうざったいわね。少しは落ち着いたらどうかしら?」

「まぁそう言うなよ。それよりなんで俺を起こしてくれなかったんだ? 何も黙って出て行くことはないだろ」


 同じベッドを共有した相手を置いて、一人勝手に出て行くとは如何なモノか。

 これでは寝起き〇〇〇が出来ないではないか。

 すっかり彼氏ヅラのレイジがそう注意した。

 

「あなたを連れて街を出歩くなんて、オークと歩いた方がまだマシよ」


 レイジと歩いても楽しくないそうだ。

 女は随分と素っ気なく対応する。


「あん? なんだよ。いいのか? 俺にそんな口を聞いてもよ」


 態度がまるでなっていない。

 どうやらまだ自分の立場と言うのを良く分かってないらしい。

 そうやってすまし顔をしていられるのも日が出ているうちだけだ。


「その強気な態度とは違って、ベッドでは激弱。もう知ってるんだぜ?」


 だから自分の前で強がっても意味はない。

 素直になってもいい。

 突っぱねたところで今のレイジには逆効果。

 彼の歪んだ〇癖を助長させるだけだ。


「お? もしかして今夜も鳴かせて欲しいのか?」 


 アンアンアンと言って、失礼にも女の髪を撫でるように触り出した。


「いいぜ、今夜もたっぷり可愛がってやるよ。どうだ? 夜まで我慢できないってんなら今からでも……」


 チラッ、薄暗い路地裏の方に目を向ける。


「──図に乗らないで」


 が、シャキンッ!


「うおっ⁉」


 女が素早くナイフを振るい、しつこいヤリ○○をどかし、


 そのまま喉元にナイフを突き立てた。


「お、おい、何のつもりだ……」


 避けなければ首が飛んでいた。

 というか当たっていた。

 首部につけたチョーカーがなければ即死だった。


 何か気にさわることでも言ったか。

 だって昨晩はこんな感じで……っ

 いきなり過ぎてレイジは焦ってしまう。


「勘違いしないで。ああしないと気分が乗らないだけ。別にあなたのことなんてどうも思ってない」


 盛り上がるための演技。

 そう、ただの演技だ。

 アレを真に受けるなんて、これだから経験の浅い男は嫌になる。


「手頃な相手があなただってだけよ。あなたは黙って私の〇処理だけしていればいいの」


 たった数回したくらいで思いあがらないで欲しい。

 それに、普段全く役に立たないのだから、夜くらい役に立ってもらうべき。

 女はさらにナイフを押し付けた。


「それにあなた、さっきからどこを見てるのかしら? 卑猥な視線がバレバレよ」


 なに気安く触ろうとしているのか。


「その首輪がある限りあなたは私の奴隷だってこと、忘れてないでしょうね?」


 レイジはあれからずっとチョーカーをつけている。

 取れないのだ。

 そうだ、立ち場を理解していないのは、むしろこの男の方だ。


「お分かりかしら? ドレイジさん?」

「…………」



 無言だった。

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