15.ボスとの交渉
一方その頃、レイジといえば、
「……うぐ」
ゴクリッ
レイジは息をのんだ。
現在、彼はとあるお店の目の前に立っていた。
足が動かないのか中々入ろうとせず、何やら不穏な顔でジッと看板に目をやっている。
そのお店というのが、
『ファイナル☆ボーイズアウト』
という、見るからにアレな雰囲気の○○バーであった。
あのクソ店主いわく、ここのオーナーに例のブツを売ったらしい。
「チッ、なんで俺が、あり得ねえ……」
立ち往生しており、何かブツブツ言っている。
彼がこうなるの致し方もない。
というのが、ここのオーナーはかなりヤバい人物で有名なのだ。
噂では、闇の組織の幹部を務めているとかなんとか。
また、極度の同性愛者らしく、気に入った男を一生○奴隷にするとかしないとか。
その他色々と良くない噂があるのだが、とにかくヤバい人物なのだ。
「クソッ!」
いつまでもここにいては始まらない。
レイジは意を決して中に入る。
──店内にお邪魔したレイジ。
「うっ……」
周りから野郎共の視線が大量に突き刺さる。
それは、レイジが異性に対してする目とソックリ。
みんなして彼をニヤニヤしながら見ていた。
「オエッ……」
あとなんか変な匂いがする。
「──おい、坊主。ここはお前のようなノープが来るところじゃねえ」
むせるレイジの前に、無駄にガタイの良い男が立ち塞がってきた。
「お前は俺らなんかとは住む世界が違う。悪いことは言わねえからよ、干からびねえうちにとっとと消えな」
レイジの性質を一目で見抜いたのだろう。
男は早くここから去るように忠告した。
普通に良い○○だ。
「…………」
しかし、レイジは動かない。
全てが敵に見えている。
「おい、聞いてんのか」
男は肩を掴み、相手を揺らそうとしたが、
「俺に触るな」
ボワッ!
レイジが手のひらの炎で威嚇する。
「なっ⁉」
「用があるのはお前たちのボスだけだ」
「ボスだと? お前は一体……」
「ああ、さもないと……」
ボワアアアア!!!
「この臭え店を焼き払ってやる。お前らごとな」
「くっ、てめえ、せっかく人が親切に……」
「俺だってお前らと争うつもりはない。ただここのボスに用がある、それだけだ」
男は答えるのを出し渋っているが、
「どうした、早くしろ」
「…………」
「ここを灰燼にされたくなければ、黙ってリーダーの元へ案内するんだな」
「……チッ、わかったわかった」
どうやら観念したみたいだ。
男は両手をあげて降参の意思を示した。
「こっちだ。ついてこい、足音は立てるなよ」
奥の方へ親指をさし、レイジを案内する。
「──おっ、良い男。リーダーの後は俺にもヤらせてくれよ」
途中でヤジが飛んできた。汚すぎる。
「チッ」
レイジは店の奥へ向かう。
──そして、
「ママ、俺だ。ママに客人だ」
男がドアを3回ノックする。
「──待ってたわよ~ん! 入っていらっしゃ~い!」
ドスの効いた低い声がドアの向こうから聞こえてきた。
声を聴くだけで吐きそうになる。
「なんだお前、ママと知り合いだったのか?」
「いや、違う」
「まあいい。とっとと入れや」
「お、おい……」
ドカッ
レイジを男に背中を強く押され、部屋の中に。
ガチャリッ
そして、素早く外側からロックされた。
「…………」
レイジはドアを唖然と見ていたが、
「──フッフッフッフッフ」
背後から生暖かい息、突き刺さるような鋭い視線。
レイジはソッと振り返る。
豚とオークを混ぜ合わせたような醜い姿。
正直、人間かどうかも怪しい。
口部には髭のソリ残しがえらく目立つ。
性別はどう見ても男♂なのだが、なぜかゴスロリで女装している。
おまけに首と思わしき部位には、明らかに似合ってない巨大なリボンがある。
人間の汚いところを、全て結集させたようなおぞましい存在だ。
鼻がひん曲がりそうなほどの激臭が、遅れてやってきた。
あまりにも酷すぎる。
自分の想像できる範囲をはるかに超えている。
レイジはたまらず臭いを遮断した。
「あら、可愛い坊やね~、待ってたわよ」
ママと言われる存在がねっとりと口を開く。
「なんでそれを、俺は何も……うっ」
臭いが口に入ってくる、レイジは上手く喋れない。
「フッフッフ、そんなの簡単、乙女の勘よ。ワタシに用があるんでしょう?」
色男のことなら何でも分かるそう。
レイジがここに来ることも、これから起こることも、全てお見通しだ。
「そうか、なら話は早い。ペンダントを返してくれ」
早くこの部屋から出たい。
レイジはさっそく本題を切り出す。
「ペンダント? ああ、これのことかしら?」
と言って、ママはわざとらしく下から取り出した。
「本当に綺麗よねぇ。この滑らかな色合い、まるで奥に吸い込まれてしまいそうだわ。これをあの宿屋で見かけた時はビビっと来ちゃった」
運命を感じずにはいられない。
ママは、ペンダントを舐め回すよう見ながらウットリしている。
「だって、これのおかげであなたと巡り会えたんだもの、まさに運命だわ。あなたもそうは思わないかしら?」
バチッ、なんともお下劣なウィンクを投げた。
「……いくらだ」
レイジは無視してさっさと交渉に入る。
こういうのは相手のペースに流されてはダメだ。
「うんまあ、決して安くはないわねえ。あの店主にもそれなりに渡しちゃったし」
「金ならいくらでもある、早く額を提示しろ」
その問いに、ママは少し間を置いて、
「う〜ん、何でもお金で解決しようとするのは良くないわねえ。男の子の悪い癖だわ」
お金でハイ終わりは面白くないと言う。
ふざけるな、ならばどうしろと言うのか。
「…………」
レイジはピキッてきた。




