表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/54

13.隠された能力・解放!

 しばくして、


 バンッ! ヒュウウウウー……壁にドーンッ!


「うがっ⁉」


 モノすごい勢いで叩きつけられたレイジ。


「くっ……」


 そのままグッタリして動かなくなる。


「──もう~、これじゃウォーミングアップにもならないよ。本気でやってよ~」


 あまりにも歯ごたえがない。

 エマコは、無様にうなだれる男を見下ろしながらそう言った。


「あっ! まさか手加減してくれてたりする? 別に気を使わなくてもいいのに。レイジ君ってば、やっさしいんだ~」


 エマコうれしい!

 なんて、両手を組んで、一人勝手にときめいている


「ち、ちくしょうめ……」


 一方、全てを出し切ったレイジは、悔しみの声を漏らす。


「エマコ……お前……」

 

 敗北者が何か言っている。

 

「ん? どうしたの? レイジ君」

「お前たしか、ヒーラー、だったろ」

「うん、それがどうかした?」


 エマコはわざとらしく首をかしげた。

 さっそく可愛い子ちゃんアピアピタイムである。


「…………」


 レイジは尋ねるのをやめた。


 ──レイジは本気で戦った。

 新しいスキルとかも色々使ったし、とにかく全力を出していた。

 にもかかわず、目の前の少女にはまるで手も足も出なかった。


 丸太に水押し、エマコに水押し。


 何をやってもダメだった。

 スキルも、術も、全て通用しなかった。

 結果、このような失態を晒している。


「…………」


 そもそも、エマコはこんな武闘派ではなく、スキル【回復士】で皆をサポートしたり、たまに後ろから援護するような、典型的なヒーラーであった。

 それがなぜ、あのような、過激な戦闘スタイルに変わっているのか。

 今まであんなエマコは見たことがない。

 性格もそうだが、まさしく別キャラ、裏エマコだ。


「なんで、だよ……」


 それと、もう一つ不可解なことがある。

 あれだけの攻撃を受けたというのに、エマコの手は綺麗でスベスベで、傷一つ付いていない。

 

「なんだよ、そのスキル……」 


 EXスキル:【奇死怪生リトルグール

 

 レイジの目にはその四文字が、エマコの頭上に禍々しく浮かびあがっていた。

 先述言った通り、エマコのスキルは【回復士】だったはず。

 それが自分と同じく覚醒して、EXへと進化を遂げていた。

 まさか彼女も同様に、何か神的な存在に選ばれたのか。


「んー? スキル? なんのこと?」


 一方、エマコはまた首をかしげる。 

 コレは可愛い子ぶってるのではなくて、本当に分かってない顔である。

 自分が上位の存在だということに気づいてない。


「ひ、ひぃっ……」

 

 どうやら覚醒者の中では弱い方らしい。

 外れスキルのレイジは怯えた声を漏らす。


 さっきは大事なハーレム要員が殺されてしまい、ついカッとなってしまった。

 だが、今ではすっかり冷えあがり、もはや恐怖しかない。

 やはり勝負を挑むべきはなかった。

 一目散にケツを振って、誰よりも早く逃げるべきだった。

 レイジは激しく後悔した。


 ピタ、自分の背後は壁、逃げられない。


「た、助けてくれ……」


 勝手に出た言葉がそれだった。


「んー?」

「お、俺が悪かった……だから……」


 見逃してほしい、首だけは跳ねないで欲しい。

 レイジは必死に命乞いを始めた。


 と、思ったが、


「──今だ! 食らえ! 【天性解除スキルダウト】!」


 なんちゃって☆

 手のひらをエマコの前に広げ、ダークな光を放つ。


 ならばこちらも新スキルをお披露目するまで。

 思い出したように相手のスキルをパクろうとした。

 良く分からないがEXさえ封じ手しまえばこっちのモノ。


「はっ! 俺の勝ちだ!」


 そうしたら、またバーネットの時みたく脅して、好き放題やってやる。

 ロリ趣味は特にないので、奴隷商に高値で売るのが良いかもしれない。

 女の尊厳とやらをこれでもかとぶっ壊してやる。


「ざまあみろエマコ! せいぜい汚いおじさんに可愛がってもらえよ! ハハハッ! ハーッハッハッハッ!」


 この男、下衆すぎる。

 とにかく勝負はもらった! 悪人は高笑いするが、


 ガキンッ!


「っ⁉」


 ロック音と共に弾かれた。

 【奇死怪生リトルグール】に×マークが浮かび、侵入をあっさりと拒絶された。


「なっ……」


 ”同レベル帯のスキル、EXスキルはパクれない”

 それが、レイジのEXスキル【天性解除スキルダウト】の隠された能力。


「があ……ああ……うそ……だろ……」


 衝撃の事実。

 レイジの表情はコンマ0.1秒で絶望に変わった。

 奈落の果てに突き落とされた気分になる。

 そう言うのはもっと早く言って欲しいとしみじみ思う。


「レイジ君、さっきから何してるの?」


 バカなの? というエマコの声が全く耳に入らない。

 ただ真後ろは壁だというのに、なぜか必死に下がろうとしている。


 万策尽きた。

 ちなみに、仮にパクれたとしても、エマコには勝てないのだが、コレが。


「うわあああ! く、来るなああああ!!!」


 レイジは絶叫しながらすぐに立ち上がった。


「ウガッ⁉」


 しかし、落ちていた生首に躓いてすっ転んでしまう


「うわああああ! 誰かあああああ!!!」


 大声をあげて誰かに助けを求める。

 先ほどと違って演技などではない、マジなヤツだ。

 レイジのガチ声が路地裏に響き渡る。


「ちょっと、物を投げないでよ」


 エマコは困ってしまう。 

 これでは彼の方が異常者に見えてくる。


「そもそも、私がレイジ君を殺すわけないじゃん」


 殺してしまったら、一緒にラブラブ──いや、冒険が出来なくなるではないか。

 エマコがゆっくりと近づいてくる。


「また一緒にパーティ組も? もちろん2人だけでね」

「うわああああ!!!」

「私がいれば安心だよ。さっきので良く分かったでしょ? 私はレイジ君と、ず~っと一緒だよ! ウフフッ!」

「うわああああ!!!」


 レイジは号泣しながら、鼻水を垂らしながら、死に物狂いで逃げようとする。

 腰が引けて立てないので、ケツで地面を這って進んでいる。

 

「えぇ……そんなに怖がらなくてもいいのに……」


 終いには、あのエマコが引いてしまっている。

 それほどまでに見っともない姿を晒していた。

 なんでこの男に執着していたのか、一瞬疑ってしまうレベルである。


 やがて、そんな彼を流石に哀れに思ったのか、エマコが、


「はあ、わかったよ。今日はここまでにするから」


 と、ため息交じりに言った。


「……へっ?」


 レイジのクシャクシャになった顔が止まる。


「そんな酷い顔されたら、組めるパーティも組めないよ」


 この様子だと一度落ち着いて貰ってから、またお話した方が良さそう。


「それに今日は結構働いたし、一日の成果としては十分かな!」


 エマコ今日頑張ったし、もう疲れたし、今回だけ見逃してあげるそうだ。


「…………」


 レイジは色々な水分を流しつつ呆気を食らっている


「う~ん、明日はショッピングに行く予定だから、ちょっと会うのは難しいな~」


 クソ女たちのビチ臭い血で服が汚れたので、新しいお洋服が新調しなくては。

 エマコは頬に指を当てて、今後のスケジュールを振り返る。


「そうだね。じゃあ、続きはまた明後日しよっか? それでいい?」


 レイジは高速でうなづいた。

 逃がしてくれるなら何でも良い。

 とにかくここから離れたい思いで、何度もウンウンした。


「デートの約束だね! あはっ!……で、逃げたらどうなるか、わかるよね?」


 エマコ、ギュリンッ!


「ひぃっ……」


 レイジ、ゾゾゾッ!


「楽しみにしてる! じゃあね、レイジ君!」


 シュンッ


 そう言い残し、エマコは闇に消えた。


「…………」


 静寂の中、レイジはスッと立ち上がり、


「うわああああああ!!!」

 


 逃亡した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ