DEATHメモ帳
俺の名前は 太陽 光 高校生だ。
ある日、道を歩いていたら、きったないメモ帳が落ちているのを発見。
「これは、手に泥が付くタイプのやつだ」
俺は自分にそう、言い聞かせた。何故なら、他に話し相手が傍に居ないからだ。
「それに、このメモ帳に付着した泥。いやはや、粘着質だ。これは、もしかするともしかするぞ……」
僕は、呑むほどではなかった唾を少し無理やり喉に通した。
正体を確かめる方法は簡単である。近づいて匂いを嗅げばいいのだ。
「んん、こいつは思った通りだ」
警戒。視界をスケルトンの赤色が覆う。”DANGER! DANGER! 退避してください”とメッセージが流れた。
正体見たり。枯れ尾花。
こいつは、紛うことなく”犬の糞”だ。
「そいつは違うね」
突然、後方から聞こえた声に、俺は慌てて振り向いた。
そこには、みすぼらしい猫が一匹、背筋を伸ばして座っていた。
「お兄さん、そいつは私の糞だよ。さあさあ、そのメモ帳を拾いなさいな」
猫はそう言うと、前足を舐め始めた。
「やだよ、汚いじゃん」
俺が、率直な感想を猫に伝えたところ、猫は可笑しそうに笑いだした。
「くくく、そいつは勿体ないよ。そのメモ帳はただのメモ帳じゃない。そこに誰かの名前を書けば、そいつを呪い殺すことができるのさ」
俺は、猫の妄言だと思った。
「そんなわけあるかよ。ほんとにそうなら証明してみろ」
俺がそう言うと、猫はぐーんと背伸びをして、さも仕方ないなぁと言いたげな態度をとった。
「しかたないなぁ」
その上で、言葉までついてきた。
猫は、メモ帳の傍まで寄ると、それに鼻を近づける。
そして、少し身を離した。
また、鼻を近づける。
そして、また身を離す。
「どうしたの」
俺は、猫の様子がおかしいと思い、尋ねる。すると猫はこう答えた。
「いや、ちょっと汚いし、臭いし。さすがに触れないっすね」
俺は、なんだかドっと疲れてしまって、喋るのが億劫になった。
猫は何度も何度も、メモ帳に顔を近づけては、反射のように身を離す。
蝉の声が煩い。
もうすぐ、夏が、終わる。
おしまい