表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

DEATHメモ帳


俺の名前は 太陽(たいよう) (ひかる) 高校生だ。

ある日、道を歩いていたら、きったないメモ帳が落ちているのを発見。



「これは、手に泥が付くタイプのやつだ」



俺は自分にそう、言い聞かせた。何故なら、他に話し相手が傍に居ないからだ。



「それに、このメモ帳に付着した泥。いやはや、粘着質だ。これは、もしかするともしかするぞ……」



僕は、呑むほどではなかった唾を少し無理やり喉に通した。

正体を確かめる方法は簡単である。近づいて匂いを嗅げばいいのだ。



「んん、こいつは思った通りだ」



警戒。視界をスケルトンの赤色が覆う。”DANGER! DANGER! 退避してください”とメッセージが流れた。

正体見たり。枯れ尾花。

こいつは、紛うことなく”犬の糞”だ。



「そいつは違うね」



突然、後方から聞こえた声に、俺は慌てて振り向いた。

そこには、みすぼらしい猫が一匹、背筋を伸ばして座っていた。



「お兄さん、そいつは私の糞だよ。さあさあ、そのメモ帳を拾いなさいな」



猫はそう言うと、前足を舐め始めた。



「やだよ、汚いじゃん」



俺が、率直な感想を猫に伝えたところ、猫は可笑しそうに笑いだした。



「くくく、そいつは勿体ないよ。そのメモ帳はただのメモ帳じゃない。そこに誰かの名前を書けば、そいつを呪い殺すことができるのさ」



俺は、猫の妄言だと思った。



「そんなわけあるかよ。ほんとにそうなら証明してみろ」



俺がそう言うと、猫はぐーんと背伸びをして、さも仕方ないなぁと言いたげな態度をとった。



「しかたないなぁ」



その上で、言葉までついてきた。

猫は、メモ帳の傍まで寄ると、それに鼻を近づける。

そして、少し身を離した。

また、鼻を近づける。

そして、また身を離す。



「どうしたの」



俺は、猫の様子がおかしいと思い、尋ねる。すると猫はこう答えた。



「いや、ちょっと汚いし、臭いし。さすがに触れないっすね」



俺は、なんだかドっと疲れてしまって、喋るのが億劫になった。

猫は何度も何度も、メモ帳に顔を近づけては、反射のように身を離す。

蝉の声が煩い。


もうすぐ、夏が、終わる。




おしまい



















評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ