追放された者たち
「なあ、あいつ…。」
「言わないで!頭痛くなるから。」
ルイの言葉をエリザが遮る。
「勇者さん一人で大丈夫でしょうか?」
シャルは心配そうに聖杖を握る。
「大丈夫よ。…多分。」
エリザは目をそらしながら言う。
「やっぱり、俺は戻ろうかな…。」
ルイは言う。
「あんな馬鹿は一度痛い目を見ればいいのよ。仮にも勇者の称号を持っているんだし、死にはしないわよ。」
エリザも今回の件は思う所あるのだ。
変な勇者だとは思っていたが、まさか仲間をこうやすやすと捨てるような行いは許せない。
「…新しいお仲間の人でもいるんでしょうか?」
シャルは涙目になる。
「シャル。不安にさせて悪かった。とりあえず、勇者の奴は頭が冷えるまで放っておこう。」
ルイは勇者の件は、一度保留にすることにした。
こうして切り替えた時のルイの思考は速い。
残金の確認、宿屋の確保を即座に行った。
唯一時間がかかったのは、宿屋の部屋決めの時だけだ。
「…女二人に男一人って言うのはちょっと良くないな。今日はみんな一人部屋でいいか?」
ルイは宿屋おずおずと聞く。
「馬鹿言わないで。今日も大部屋よ。あんたは私たちのボディガードも兼ねてるようなもんでしょ。」
エリザの意見にシャルも賛同する。
「一人は怖いです。」
「ったく、変な所で気弱な男よね。」
エリザは笑う。
シャルもつられて笑った。
ルイはバツが悪そうに店主にお金を払った。
部屋で、身仕度を整えるととりあえず話し合いが始まった。
「とりあえず、勇者の暴走が終わるまで待機しようと思う。」
「それでいいんじゃない?」
「私は賛成です!」
「また、パーティを組んでくれと言われたら俺は組んでもいいと思っているんだが、二人はどう思う?」
「態度次第だけど…。前向きには考えられるわね。」
「私は皆さんとまた旅がしたいです!」
不思議と三人とも意見は一致していた。
「なんだかこのパーティの居心地が良くて、どうにも他の奴らとは組みたくないんだよなあ。」
「…否定はしないわ。普通、私やシャルくらいの美女ならいつ襲いかかられるかわからないものだけど、そんな心配も必要なかったし…。」
「私は、色々楽しかったです。皆さんお優しいですし。」
「なんで、あんなこといいだしたのかしら?」
エリザはつぶやいた。
ルイもシャルも黙ってしまう。
お互いに何を言っていいのかわからないのだ。
その日は、それぞれ胸に何かつっかえたような気分のまま寝たのだった。