表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/9

写真

 夏だから、ほんの少しだけ怖い話を。


 私がまだ中学三年生のときの話。


 社会科見学でとある城下町跡へと行ったときのこと。


 社会科見学では学校が雇ったのであろうカメラマンさんが要所要所で写真を撮ってくれて、あとでそれが廊下に張り出され、自分たちで選んで購入するシステムだった。


 歴史の博物館や古い施設、駄菓子屋さんが並ぶ個性的な路地を歩き、楽しい一日だったのを覚えている。


 だけど写真が貼り出されると、すぐに噂が駆け巡った。


『Aちゃんの写真だけ心霊写真になってるらしいよ!』


 Aは一年のときにクラスが一緒で仲が良く、いまも顔を合わせば話をする子。


 優しいけれど言いたいことをはっきり言うような女の子だった。


 私はまだ自分が購入する写真を決めていなかったので『そういえば写真見てないや』と思って見にいった。


 正直、心霊写真だなんて信じていなかった。


 ……でも。私は心の底から衝撃を受けることになる。


 Aの映る写真に、小さな手、手、手、手……手がある。


 赤子の手、だと思う。


 彼女の腕に、彼女が映る写真に、はっきりと白い手。


 一番目に焼き付いたのは井戸。


 井戸にAともうひとりが顔を寄せて、上から見下ろす形で取られた写真。


 蓋が閉まっている井戸から……手が。手が。手が。


 ――でも私はなんだか切ない気持ちになったのを覚えている。


 そのあとAにたまたま会ったのでこう言ったのも覚えている。


『A、大丈夫だよ。周りになに言われても気にしなくていいし、私は怖いと思わなかった』


 Aは本当は怖かったと思う。


 だけど気丈にもこう言った。


『ありがとう。尊敬する先生がね、預かってくれるって! 心配しなくていいよって言ってもらったから私は平気』


 Aはいまも元気だし、私もこのことはどうしてかずーっと忘れていた。


 心霊番組なんてのを見ても思い出せなかったくらいに記憶の奥深くにあったんだ。


 でもなぜか突然思い出した。


 とにかくいま感じるのは、神社に行こうってこと。


 ちょうど近くにあるんだ、そういうのを鎮めるための場所が。


 誰かに祈ってほしいのかなって……なんだかまた切なくなった、そんな話。



ふとした瞬間に忘れていた記憶が呼び起こされる。

なにか思うところがある。

そんな忌憚幻想譚。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ