表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/9

ありがとう

「ねえリコちゃん、ありがとう」


 幼なじみのカコちゃんは、いつも私にお礼を言う。


 小さい頃から、もうずーっと。


 最初がいつだったかなんて思い出せないくらい、小さな頃から。


 だから聞いたことがある。


「どうしてお礼を言うの? 私、カコちゃんになにもしてないのに」


 そうしたら、カコちゃんは少し困った顔で微笑んだ。


「だって、リコちゃんは私を助けてくれるから」


 正直、助けた覚えなんてないんだけどな。


 相談を受けたり、転んじゃったカコちゃんに手を貸したり、そんなことはあったけど。


 そんなの友達だもん。当たり前じゃない。


 ――そんなカコちゃんからお礼を言われる回数がさらに増え始めたのは、中学生の終わり。


 会う度にカコちゃんは「リコちゃん、ありがとう」と言う。


 まるでそれが挨拶みたいで、少し変な気持ちだった。


 でも、それがなんでだったのか、やっとわかったんだ。




 ききぃーっ、だぁーんっ!




 全身に衝撃が走って、かーっと半身が熱くなる。


 耳がじーんとして、世界中の音が聞こえなくなった。


 ぐるんぐるんと景色が回り、アスファルトの上でようやく止まったとき、私が突き飛ばして助けたカコちゃんが、向こうからゆっくり歩いてくるのが見えて。


 彼女は……微笑んでいた。


「ほら、ね? リコちゃん、ありがとう。……ばいばい」


 ああ、そうか。

 これが、助けるってことなんだ。


 カコちゃんは、こうなることを……知っていて…………。


 私の世界は、真っ暗闇になった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ