同胞
今回媒介とするものはエンシェントオウルの翼だ。
この生き物はむかし、まだ森が豊かだったときに森の王者として君臨していた。
両幅あわせ10メートル以上の翼を持ち、
捕食者特有の大きな鉤爪を有する生き物だ。
颯爽と他の動物を狩る姿に人間は、畏怖と憧れの感情を抱いた。
しかし、森が縮小するにつれその数は目減りしていった。
この個体は火山性ガスにやられたらしい。
その片翼に色が変わった魔陽石を埋め込む。
すると再び光が瞬き、横たわっていた翼が人型へと変化した。
現れたのは人型で、地面に引きずるほど大きな翼があり、長く黒い鉤爪を持つ
白っぽい髪をした全裸の青年だった。
よく見ると精悍な顔立ちをして、不思議そうな顔で恭平を見ている。まるで親を初めて見た雛鳥のようだ。
全裸だけど。
恭平は一瞬硬直してから、気を取り直したように羽織っていたカーディガンをその生命体の腰に巻いた。
たまたま部活で来ていた生徒はぎょっとしながらも優しい転校生だなぁと流していた。
当のアルージェは首を傾げながらも
恭平に軽く頭を下げていた。義理堅いやつだ。
「さっさと名前でもつけてやれ」
恭平
「うーん、綺麗な鳶色をしてるから…カイトにしよう。」
…うん、まぁいいんじゃないか
何がどう飛んでその名前になったかはさておいて
恭平とカイトが友好を深めているうちに私もするか。
魔力を魔陽石に込め、残った片翼に埋め込む。
すると烏の濡れ羽色の翼を持った青年が現れた。
一つ違うのはところどころに鱗のようなものがあること。
私の魔力を使ったから私自身の本来の姿に似たのか?
まあいい、同胞の誕生を歓迎しよう。
名前は…レイヴンでいいか。
レイヴンに私の自己紹介をする。
「ますたー、ーーーーーさま?」
「元、だ。いまは魔神をしている。だが内緒だぞ。」
「うん。」
それにしてもよく分かったな。
私の魔力から生まれたからか?
「おっ、無事にできたみたいだね。
へぇ、同じ媒介から生まれたのに結構違うんだ。とりあえず何か巻いてあげなよ。」
そうだ、こいつも全裸だった。
上着をレイブンの腰に巻く。
「??」
「装甲の代わりだ。今はそれを巻いておけ。」
コクリコクリと頷く。素直なやつだ。
それから体育館や教室、闘技場などを見て回った。