甘党とアルージェ《兵器》
「君たちには学園に通ってもらう。
今は夏休みだが、その間に施設を見たり、
この世界について学んでもらおう。」
王に言われ、国立ローニョレ高等学院にやって来た。
小さな都市一つ入りそうなほど広大な敷地を有する大陸屈指の学園らしい。
さすが勇者様が通う学校だ。
豪奢で大きな門をくぐり、幅にゆとりがある廊下を進む。
そして、縁取りがある漆塗りのドアの前に立った。
恭平
「校長室ここであってるかな?」
「ああ。」
適当に答えた。
恭平がドアをノックしたら、
中からバリトンボイスで返事が返ってきた。
部屋に入ると、
白髪混じりでオールバックのダンディなおっさんがいた。
おそらくこの人物が校長だろう。
「君らが異世界から来た盟友だね?
ようこそローニョレ学院へ。歓迎しよう。
紅茶飲むかい?菓子もあるぞ。」
「いただきます。」
恭平が即答した。
おいそこの甘党!まずは挨拶だろう
私は甘みを感じられないのに
自分だけ食べるとかずるいだろ!
恭平の襟首を掴み、挨拶させようとするが抵抗する。
そんなに菓子が食いたいか。
しかしこいつ力強いな。
数年前までは私よりチビだったのに。
まったく、人間の成長の速さには驚かせられる。
我々の様子を校長は微笑ましそうに見ている。
貴様が阿呆なことをするから、
私まで子供扱いされているじゃないか。
恭平の方を向きギロッと睨む。
流石に反省したようで本題に入った。
恭平
「申し遅れました、永瀬 恭平と言います。こちらは友人の川名 忍です。
今日からお世話になります。」
ーーと諸々の自己紹介をしたあとアルージェ〈兵器〉という謂わば使い魔のようなものを作ることになった。
使い魔と違うのは人工生命体だということ。
作り方は簡単。
1.魔陽石を用意する。
2.魔力を込める。
3.媒介に石を埋める。
4.なにかができる。だ。
何になるかはその人次第で、
獣型、妖精型、ドラゴン型があり
人型が一番良いらしい。
ものは試しだ。やるぞ。
まずは実験台とsーーじゃない、念のために
恭平からする。
太陽の光加減で違う色に輝く
そのアメジストのような石を握りしめ、
魔力を込める。
真っ白な光が視界を奪う。
視界が戻ると魔陽石は別の色へと変わっていた。