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暇神日記  作者: ジェリー
序章
5/46

とりあえず殺すか


さて、恭平は恐怖心が欠落しているから

生き物を殺すことには抵抗がないはずだが

どうなのだろう?


少し楽しみだな。




まずは順当にウルフ系から行くそうだ。


あいつは要領が良いから剣の扱いとかも

やっているうちになれるだろ。




ワイドウルフの討伐を受注した我々は

今、廃れた森の前に来ている。


一応初心者ということで

ギルドマスターも付いて来ている。

めんどくさい。


いなかったら私が手取り足取り狩りの仕方を教えてやったものを。




ワイドウルフはこの森の中腹に生息し、

森に入ってくる人間を食糧とする魔物だそうだ。



そのため人間の習性も理解しているし、

10頭以上の群れで活動しているため、

一般人は手も足もでない。


立ち向かっても嬲り殺されるだけだ。

ということで難易度はBランクとなっている。





森に足を踏み入れる、最初は木漏れ日が射し込んでくるが獣道を進むにつれ、暗くなってきた気がする。



「ここから奴らの縄張りだ。気を引き締めろ。まずはボスを狙え。一番大きいやつだ。それから各個撃破と洒落込もう。」


ギルドマスターが小声で言う。



恭平と私はうなずき、屈み込みながら神経を研ぎ澄ます。



カリッ


小枝を踏む音がかすかに聞こえた。


近くにいるな。





耳の痛くなるほどの静寂の末、それは突然訪れた。



ガルゥーーー


複数の小隊に分かれ、一気に襲いかかってきた。

ちっ、囲まれた。




地面に転がり、初撃を凌ぐ。


素早く立ち、鼻に回し蹴りをお見舞いする。

ギャイン、と地面にのめり込んだ。


辺りを見回し、ボスらしき個体を探す。




その時ーー応戦している恭平の後ろから

鈍い灰色の双眸が見えた。



「恭、後ろだ!」


恭平はパッと目を見開き、振り向きざま

とっさに剣を振った。



致命傷には至らなかったが、顔に傷がつき、己の血が目に入ったようでその馬ほどある巨躯が後ろに退がる。




こんなでかいのに、どこに隠れていたんだ。



ーーとその瞬間を待っていたかのように

ギルドマスターが大剣で首をはねる。



軟骨同士が剥離する音がして、ドスンと首が落ちる。



勢いよく血が噴き出し、

その巨躯が確かな質量をもってスローモーションで倒れる。



地面がアカで侵食されていく。



あっけにとられた他のウルフに、

気を取り直して撃破していく。




そこからは簡単だった。


溢れる殺意のまま攻撃してくるモノ、

戦意を失い、されるがままのモノ。


統制のとれない組織は破滅の道しかない。


ひととおり倒し終えて、恭平を見る。



彼の辺りには血がこびりつき目の光が失われた残骸がぽつぽつと転がっていた。




むせかえるような濃い血の匂いと甘い死体の臭い、ぬるりとした生暖かい感触に私は懐かしさを覚えた。


そういえば自ら手を下すのは久しぶりだ。

4年前のあの日以来か?




一方、恭平は複雑そうな顔をしていた。


「怖くはないけど、

この臭いはいつまでたっても慣れないな…。」



「慣れるさ。

これからそんなこと、

考えられなくなるほど殺していくんだ。


能天気なことを言うんじゃない。

敗者に未来は無い。」



何がいやなんだ?

これより酷い惨状を見たことがあるだろう?



「…うん。」



ふと、

ギルドマスターがこちらを見ていることに気づいた。



まずい。ギルドマスターがいるの忘れてた。今のは人間の反応じゃなかったか?



「ずいぶん物分かりがいいんだな。最近の若者は。」


感心したように言う。



…単純なようで助かった。




このあともう何個か依頼を受け、城に戻った。



ーーーーーーーーーー



個人的には楽しかった。

なんせ、いつも一方的に蹂躙しているだけだったからな。

こういう緊迫した戦いも良いものだ。




恭平について今日わかったことは

恐怖心がなくとも、臭いや血の感触に対しては嫌悪感や不快感を感じるということだな。



私と出会ったときはもっと血生臭かったのに何が違ったんだ?



…よくわからん。





2018年7月15日




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