謁見
それから馬に乗せられ、鬱蒼とした木々の間を抜けてどこかの国の城壁があるところまで全力で駆けられた。
馬酔いがすごい。ぐるぐるする。
あと、仰向けに倒れた時に打った頭が痛い。
いくら演技とはいえ、無防備にやりすぎた。
恭平と話す間もなく打ったところを治療し、シャワーを浴びさせられた。
風呂だけは人間が作ったものの中で、
素晴らしいものだと思っている。
心地よい温度の蒸気に包まれながら入る風呂は最高だ。
そしてこの城の豪華な風呂も最高だ。
30分しか入れなかったけど。
風呂から上がり、執事らしきものに案内された。
謁見の間というのだろうか?
広く荘厳な雰囲気の広間に恭平と一緒にやってきた。
そこに王と思われる人物と大勢の騎士がいた。
ざわめく騎士たちが静かになったのを切り口に国王と思われる男が話し始めた。
「まずは混乱させてしまったことをお詫びしよう。
ここはテージオンという星のセルビアン国だ。
そして余はこの国の国王ディディエである。
さて本題に入ろう。
君たちをここへ呼んだ理由は、
勇者として魔族をこの大陸から追い出して欲しいからだ。
そしてなぜ魔族が人を襲うのか解明してほしい。
ここまでで質問はあるかね?」
「ご丁寧にありがとうございます
俺の名前は永瀬 恭平、こちらは友人の川名 忍。
では二つほど質問をさせていただきます
俺たちが召喚された時何があったのですか?
あとこの世界での魔族の認識を
教えていただきたいです。」
恭平の疑問はもっともだ。
ふつう魔王を倒してくれ、とか
この世界の危機を救ってほしい、とかじゃないのか?
「それらについては、私の方から説明させていただきます。」
と高位の騎士と思われる男が答えた。
その男によると、この世界は東西で大陸が分かれており、
西が人間やエルフが住む大陸で、東は魔族や獣人がすんでいるそうだ。
そして東の大陸は二つの国があり、どちらもこの大陸と貿易をしたり、少数ながら交流もしている。
しかし、何年かに一度どちらかの国が何の前触れもなく豹変し、見境なく侵略、殺戮の限りを尽くすのだとか。
見た目は人となんら変わりはないし、
魔族と人間のハーフも少なくはない。
そして何より決定的なのは、
西の大陸では作物や資源が乏しく、航海技術がないのだ。
それゆえ、東の大陸の人々との貿易に頼るほかない。
続けて国王が言う。
「君たちが召喚された要塞なのだが、どこで聞きつけたのか魔族たちが阻止しにきたのだ。
今はもう、撤収していったが死者も出た。
その上君たちが来る前の最初の奇襲で
国土の3分の1が失われた。
ただでさえ人口が増え作物が足りていないのに、このままでは、多くの民が飢えてしまう。
どうか力を貸してほしい…。」
恭平はこちらを見てどうする?と言う顔をした。
知らん。貴様が決めろ、と目で言うと
「わかりました。お役に立てるかは分かりませんが協力させていただきます。
まずは何をすればいいですか?」
と言った。
国王はホッとしたように息を吐き、
「ありがたいことだ、わからないことも多いだろうサポートは全力でさせてもらう。
ひとまず今日は休んでからギルドへ行ってこの世界に慣れてもらおう。
ところで一つ聞いてもいいかね?
どちらが勇者様かな?
文献によると一人らしいのだが。」
「恭平です。僕は巻き込まれただけなので」
間髪いれずに私は答えた。
恭平がものすごい速さでこちらを見た。
どうした恭平?何か言いたそうだな
いっておくがこれは事実だぞ
残念だったな、あきらめろ。
「そ、そうか。
では君も彼の友人として協力してくれないか?
彼も一人では心細いだろう。」
是と答えた。
飽きたら帰るがな